2019年9月14日in大阪!
片耳難聴のしゃべり場、片耳難聴Cafeを行いました。
「片耳難聴Cafe」とは?(詳細はこちら)

今回は、参加者のZUZUさん(大阪在中・40代女性)にレポートを書いて頂きました。
参加者の目線で片耳難聴Cafeの様子が伝われば幸いです。
全体の様子
20代~50代の男女6名が集まった。なんと、はるばる石川県からお越しの方も!
私は、以前のオンラインビデオ通話での片耳難聴Cafeに参加したことがあった。それ以外の方は皆さん初対面。
また当日は、片耳難聴について広く知って貰うために新聞社の取材も入っていた。
皆さんドキドキ、少し緊張しながらのスタート。
初めに、それぞれネームプレートを書いて席決めをする。
ネームプレートは、難聴の左右の耳によって色分けされていて一目でわかりやすい。

「私は、右耳が聞こえないからこの席かこの席..」
「私、ここに座っても大丈夫ですか」
「〇〇さんは、左が聞こえないってことは、こっちの方がよいかな?」
片耳難聴者にとって席の位置は非常に重要だからだ。
右耳難聴の方は、左隣が落ち着き、左耳難聴の方は、右隣が落ち着く。
自己紹介は、A4サイズの紙に皆に見える様にマジックで大きく書く。話すのが苦手な人にも話しやすいように。話していることが聞こえづらい人にもわかるように、と。

主に話されたこと
6人集まれば6人様々な症状、経験がある。
先天性は、生まれつきもしくは物心ついた時から聴こえない。後天性は、中学生の時に突発性難聴で…など。
先天性と後天性では、感じ方や経験も違う。原因によっては、天候や体調で耳鳴りやめまいの不調に悩まされる方もいる。
年代や性別・タイプによっても感じ方や日常的な対応の方法もそれぞれだが、共通するところも多い。皆の発言に大きくうなずきながら聞く。
- 片耳難聴だと身内と親しい友人にしか伝えていない
- 言えるようになるまで40年かかった
- 難聴自体は変わらなくても、学生の時と社会人になってからでは、困ることが変わった
- 片耳が聞こえないと物理的に不便な職場に就職してしまい(聞こえるポジションを移動できない空間的な問題)工夫のしようがなく、潔く諦めて転職した
- 聞こえる振りをするので会話が噛み合わないことがある。不思議ちゃんと思われることがある(性格的にも、そうなのかも知れないが…笑)
- 飲み会は、会話が聞こえにくいので苦手になってしまう。幹事役は端の席に座れるので積極的に幹事をする
特に、たくさんの人が集まる場所では「片耳難聴のことを伝えにくい」というのが全員感じているところ。
予め伝えていても、相手にもちろん悪気はないけれど忘れられてしまったり。
聞こえなかったときに聞き返すのもワイワイした雑談では盛り上がりを中断させてしまって、そう何度も出来なかったり。
どうやって伝えるか、そもそも聞こえないとここで言うべきか、やきもきしながらいるうちに伝えることそのものが面倒に感じられたり。
伝えないと相手に分かっては貰えないし、一見、耳が聞こえないとは分からないのだし、他人から覚えて貰いにくいのも仕方ないと頭で理解している…。でも悩ましい…、と皆が大なり小なり経験してきたようだ。
印象に残ったエピソード
参加メンバーが、これから就職する20代と人生の後半戦を迎える40~50代の年代が集まったということで「働き方」について話してみようということになった。
ある大学生には、消防士になる夢がある。
小さい頃からの夢。そのために努力してきた。
でも、職業上では片耳難聴がハンデになり、応募に躊躇している
エントリーする所轄の消防署に確認をしたり、少しでも採用する側・周りの人に大丈夫だと思ってもらえるように補聴器の使用も考え、試用しているという。
- 各身体上の要件があり、聴覚においても「正常であること」「業務に支障がないこと」といった条件が自治体ごとに定めされている。
40代の私が就職する頃は、諦めていた。「やりたい仕事ではなくできる仕事」を探した。
「片耳難聴だから、この職種は無理なんだ」と初めから諦めていた部分があった。
同年代の女性は、「やりたい業界の中でも、もし聞こえないことがあっても大きなミスに繋がらない職種を選んだ」と言う。
そういう選択肢もある、それも工夫だ。現実と折り合いをつけるということ。どういう環境でなら自分を十分に生かすことができるのか考えること。
でも、いま、時代は変わってきている。
少しずつではあるが社会の理解も昔ほど悪くはないと思うし、困ったときに、こうして集まったりインターネットを通じて情報を得ることができる。
今の若い人たち、これからは、もっと自由に、もっと選択肢があり、もっと希望がある。
さて、片耳難聴と共に消防士になるためには、どうしたら良いだろうか。

彼の問い合わせたところでは、エントリー自体は可能。
だが、片耳難聴をどう判断されるかは分からないとのこと(自治体によるため確認が必要)。
前例はないようで、就職してから突発性難聴になった例ならばあるようだ。
合格するには、ハンデをはねのけるような強い意志とアピールポイントを身につける。他に何ができるだろうか。皆でそれぞれの体験を共有しながら考えた。明確な答えはでなかったけれど、その場にいる皆が心から応援したいと思った。
補聴機器の体験
片耳難聴Cafeの時間の中で、希望者はロジャーという「ワイヤレス補聴援助システム」を試すことができた。
(詳細「片耳難聴に使える補聴機器」)

初めて試す人がほとんど。
私は、ずっと昔に耳鼻科で補聴器の相談をしたとき「補聴器つけても変わりません」と言われて以来、補聴器は無縁のものと諦めていた。だから、片耳難聴でも使えるものがあることに感激した。
使い方は、聞こえる耳に受信機(見かけは、一般の補聴器そのまま)を付け、丸い集音マイクをテーブルに置く。
実際につけてみると、ずいぶん楽に話が聞ける。
飲み会のとき、ザワザワしてるところや立ち位置が変われない時にとても役立ちそう。ずっとつけているには音がダイレクトに伝わるからか疲れる感じがあるという人もいた。慣れたら変わるのだろうか。
メリットは、機械をテーブルに置くことで周知にもなるということかもしれない。「片耳難聴者です!」のアピールは普段は口で伝えるしかないが、このロジャーを置くと視覚でも周囲に伝える効果がありそうだ。ロジャーを置くという初めの勇気を乗り越えられたら、その後はずいぶんと楽になれるだろう。
みなさんの感想
- 初めて、自分以外の片耳難聴者と話をした
- 気持ちを共有できて嬉しい。また参加したい
- 皆さんの話を聞いて、片耳難聴のせいにしてきたことは自分自身の問題でもあったかも知れないと思い直した。もう少し積極的になってみてもいいかもしれないと思った
参加された皆さんが笑顔で帰っていく姿が印象的だった。共感できる場があること、それだけで励まされる。

私自身は皆さんのお話を聞いて、自分が普段の生活の中で片耳難聴と開示することは、周りの人のためにもなるのだなと思った。自分が伝えれば、片耳難聴という存在を知って貰うことができる。周りにも実はいる片耳難聴の人が「ひとりじゃない」と思えるかも知れない。さまざまな苦労を抱えている人と繋がるきっかけにもなるかも知れない。
言わない・言えなくなる原因は様々で、「片耳が聞こえるからいいじゃないか」などと周りの人に言われた経験がそうさせるのかも知れない。少なからず心が傷ついた経験をしている。私も悩んできた。
でも、もう今なら言える。40代、そういう人生の段階にいる。ここで皆と話したように、相手にも分かりやすいように丁度よく片耳難聴のこと、そして自分のことを話していけたらいいと思う。
そんな明日からの目標のような、勇気を抱いた時間だった。
皆さん、ありがとうございました!
(執筆:ZUZUさん)(編集:きこいろ事務局 あさの)
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