「片耳難聴を武器に」言語聴覚士として働く。朝ドラ、レクチャーエピソード。きこいろ代表スペシャルインタビュー

2020年6月29日 − Written by きこいろ編集部

それで、言語聴覚士になられて。そもそも、どんなお仕事なんでしょうか。

言語聴覚士の仕事は、すごく幅広くて。生まれたての赤ちゃんからお年寄りまで、食べる・聞く・話すことをサポートする仕事です。

私はその中で特に、聴覚障害と、子どもの言語障害を専門にする言語聴覚士の仕事をしています。

目指すようになったきっかけは、何だったんですか。

自分が難聴になったのは大きかったと思います。進路を考えるときに、自分が片耳の難聴になったってことを、なんて言ったらいいのかな、自分の売りにしたいと思ったというか。自分にとっての武器にしたいなと思って。

最初はちょっとね、医学部を目指して耳鼻咽喉科医になりたいって思った時期もあったんですが、学力が追いつきませんでして(笑)

結局、大学で聴覚障害を学べる研究室に入ったんですけれども、たまたま私の指導教官だった先生が言語聴覚士で。先生の本棚に言語聴覚士のテキストがあって、「言語聴覚士??聴覚って入ってるよな…」と思って。

じゃあ、もともと言語聴覚士になりたくて大学を選んだっていうことではなくて…?

ではなく、言語聴覚士を知ったきっかけは、たまたまだったんです。そこで、自分の進みたい、やりたいことはここなのかなって直感的に思って。資格を取るために、大学卒業後に専門学校に行き、国家資格を取りました。

言語聴覚士としての最初のお仕事や働き方は、どんな感じだったんですか。

それがですね…。言語聴覚士といえども、聴覚を専門にしている言語聴覚士って本当に少なくってでも私は自分の難聴を武器にして言語聴覚士をしたかったので。どうしても聴覚を専門にしたくって。

そうすると、就職先がそんなにあるわけではないので、最初は非常勤を掛け持ちしながら少しでも聴覚に関われる職場で経験を積んで。

初めは、更生相談所で大人の聴覚障害の方の相談に応じたり、療育センターで難聴の子どもや言語障害のある子どもたちの言語訓練をしたり。今は、耳鼻科の病院で補聴器外来を担当したり、大学の障害学生支援室で聴覚障害の学生の支援もしています。

片耳難聴は「聞こえるけど、聞こえない」障がいだと思います。言語聴覚士として、あるいは岡野さんご自身で、片耳難聴に関して伝えづらい、と思ったことはありますか。健聴の方や、レクチャーのときにこうふうに伝えている、とか。

必ず私がレクチャーのときに最後に締めくくる言葉で使うのが、「いつも困っているわけではない、だけど片耳聞こえるから大丈夫でしょ、とも思われたくない」っていう言葉で。

片耳聞こえないって、静かなところや一対一の会話だったら問題なく聞こえるし、生活している分にはいつも困っているわけじゃないんだけれども、特定の場面…うるさいところや、聞こえない方から話しかけられたり、遠くから話しかけられたり、特定の場面になると急に聞こえなくなるのが片耳難聴の特徴なのかな。

それって傍から見てるとすごく分かりにくいことなのかなって。「さっきまで普通に聞いてたじゃん、なんで急に無視するの」みたいな。そういうのが本人にも分かりにくいし、周りにとっても分かりにくい部分だと思うんです。

だけれども、常に困ってるわけじゃないから、常に助けて、常に支援して、って思ってるわけでもないし。なんかこう、「片方聞こえないんだよね」って言ったときに、すごい大変だね、かわいそうだね、とも思われたくないから。その塩梅って言うんですかね(笑)。いつもじゃないんだけど、困るときもあるから、困ったときに聞こえる側に行ってくれるとそれだけでも有り難いなっていう、そういう“ちょうどよい塩梅”を伝えるのを気をつけてます。

片耳難聴レクチャーの様子
写真右:片耳難聴レクチャーで講師を務める岡野

片耳難聴の当事者や聞こえる人に伝えたいこと

最後に、当事者の方へのメッセージや、健聴の方へ伝えたいことをお聞かせいただけますか。

うーん、いろいろありますけれど…(笑)まず、両耳聞こえている人たちに対しては、ぜひ片方だけ聞こえないっていう人もいるんだよっていうことを知ってもらいたいな。

ちょっと配慮するだけでも、例えば、席を聞こえる側にしてくれるとか、ガヤガヤしているところでは近づいて話してくれるとか、ちょっとしていただくだけでも片耳難聴の人たちは生活しやすくなると思うので。

どういうところで困って、どういう聞こえ方で、どんな配慮をしてもらうとちょっと楽になるのかって、広く社会に知ってもらいたいなって思ってます。

当事者の人たちには、自分自身の難聴について正しい情報を知ってもらいたいかな。知らないものって不安に感じるじゃないですか。だから、自分の難聴ってどういうものなのかなって、正しい情報を知ってもらいたいな。

でもだからといって、片耳難聴の人たちは皆こうしなきゃいけないとか、こうしたほうがいいっていう筋道があるわけではないと思うんだけれども。ベースとして正しい情報を知った上で、自分はどう思うか、自分はどうしたいかっていうのを考えてもらえればな、とは思うので。まずは自分の難聴について、フラットな、中立的な情報を、知ってもらいたいです。

きこいろの活動を始めてから半年の間に、新聞やテレビの取材、世間的にも見られるようになって。反響もある分、あ、求められてることだったんだな、って。そういう実感とやりがいというようなものを感じます。これからもきこいろの活動として、健聴の人、片耳難聴の人に情報を発信していきたいなって思っています。

(聞き手:前川あずさ、文字起こし:高木健)

きこいろプロジェクトメンバー集合写真
きこいろプロジェクトメンバー打合せにて

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・コミカライズ本
北川 悦吏子 / 著、村田順子 / コミカライズ「半分、青い。」1・2・3(KADOKAWA)
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「連続テレビ小説 半分、青い。 完全版 DVD-BOX」(NHKエンタープライズ)

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