これまで「先生に伝える?」「友達に伝える?」「授業」「部活・サークル」と、4回にわたり各テーマで、皆さんのエピソードをご紹介してきました。
今回は、「ポジティブな側面」にフォーカスしてまとめています。
現役の学生~50代の方までの52名が回答したアンケートで、
「片耳難聴で感じる学校生活でポジティブな側面があれば教えてください」という質問を設定したところ、
学校でのできごと以外にも、人生など様々なところに関して回答した方が多くいました。
回答結果からは、初めからポジティブさだけがあった訳ではなく、
片耳難聴と付き合う中で、ポジティブな側面を見出そうとしたり、
周りの人との関係を通してプラスになっていたプロセスがあるようにも感じられました。
これらの回答が片耳難聴の方や周りの方の背中を押す一助になればと思い、参考までに紹介します。

目次
・価値観や気持ち
・スキルやコミュニケーション
・聞こえない便利さ
・生き方への影響
・特になし
価値観や気持ち
まず、さまざまな立場の人を想像できる、人の優しさに触れたなど
価値観や、人への気持ちへの理解などに良い意味で変化があった回答が多く見受けられたのが印象的でした。
- 知らなかった世界を知れたり(手話とか)、聞こえる世界と聞こえない世界どちらも経験したことで、双方の気持ちがちょっとだけわかること。
(大学・専門学生. 11~22歳で突発性難聴による片耳難聴) - 他人にはわからない辛さが誰しもある。その一つを教えられたとは思う。
(40~50代. 8歳時に原因不明の片耳難聴) - 普通なんてなくて、いろいろな人がいることが素晴らしいと思えたこと。
(20~30代. 14歳頃、高安動脈炎による片耳難聴) - 配慮してもらう場面で、人の温かさに触れる場面は多いかなと思う。
(大学・専門学生. 原因不明の片耳難聴)
「人の痛みがより理解出来ること」などの回答も複数ありました。
生き方に影響した
少し近いものとして、人生への影響といった旨をあげた方もいました。
- 生まれつきだったので、生存戦略として活かせそうな活動に全力で取り組めたし、不利があるからこそ学を手に入れようと勉強も頑張れた。
(大学・専門学生. 先天性の片耳難聴) - 片耳難聴だからこそ出会えた人がたくさんいること。今は、聴覚障害のある子どもの力になりたいと思い、教育学部特別支援課程で勉強している。
(大学・専門学生. 先天性の片耳難聴) - 自分の生き方を考えさせられた。
(20~30代. 16歳頃突発性難聴)
子どもの頃から片耳難聴の方の中には、人生の学びの一つとして「片耳難聴から学ぶ」といった経験をしている人もいるように感じます。
スキルやコミュニケーションの力

自身の難聴を生かした取り組みをしたり、コミュニケーション能力の向上につながったという回答も複数ありました。
- 芸術系の学校にいるので、表現のひとつとして難聴や目に見えない障害を取り入れることがある。
(大学・専門学生. 7歳時に発覚) - 聞き逃さないように集中しているからか、水泳や陸上のスタートの反応が人よりも良かったと思う。英語のリスニング力も付いた。
(大学・専門学生. 5歳頃おそらくおたふく風邪) - 片耳が聞こえない分、視覚で代償しているため周囲の状況をすばやく察知することが得意だと思う。
(20~30代. 先天性の片耳難聴) - 聞こえなかった場合でも、前後の言葉で予測して何を言っていたか予想できるようになっていったこと。
(大学・専門学生. 先天性の片耳難聴) - 大学に入ってから、片耳難聴があることで、よりどうすれば周りとスムーズにコミュニケーションをとれるか自分で考えるようになった。
(大学・専門学生. 13歳時に右耳、突発性難聴と診断)
他にも、「話のネタになって友達が増えた」「片耳難聴をきっかけに、他の病気などがある人と打ち明けることができた」という人もいました。
聞こえない便利さ
この回答も多くありました。
- 授業中に周りがうるさくても、片耳を塞げば良かった。悪口も聞き流しやすかった。
(40~50代. 先天性の片耳難聴) - 避難訓練などで鳴るサイレンがうるさい時、片手で耳を塞げる。
(大学・専門学生. 3歳頃おたふく風邪により片耳難聴)
過去に行われた、135名への生活全般における調査でも「寝る時に聞こえる側の耳を下にすると静か」と多くの人が感じたことがあると回答していました。
困る場面もある片耳難聴ですが、これはちょっとした便利と言えるかもしれません。(詳細はこちら)

特になし
一方で、「片耳難聴でポジティブな事なんてない」という回答もありました。
片耳難聴によって生じる、消えない本音かもしれません。
また「特別にポジティブな側面・ネガティブな側面、どちらも感じることがなかった」という意見もいくつか見受けられました。
- 特別良いこともないが、物心ついたときから片耳難聴で両耳聞こえる状態を知らず、不自由さもそんなに感じない。慣れかも知れない。
(40~50代. 先天性の片耳難聴) - ネガティブなことも感じなかったが、ポジティブなことも特に感じなかった。
(20~30代. 先天性の片耳難聴)

今回のアンケート結果、皆さんはいかがでしたか?
まとめ
- 学校生活上でも便利なことがある
- 能力の向上や自身の価値観など、よい影響を与えたという人もいる
- ポジティブな側面がないという人もいる
ポジティブに回答してくれた人も、初めからポジティブな受けとめ方をしていたとは限らず、
自分の中で片耳難聴であることを受け入れたり、工夫をする陰ながらの努力があったのかもしれません。
以前、実施した「働く」をテーマにしたエピソードコラムでも、
片耳難聴で困ることがあると同時に、職業生活上ポジティブな側面を見出している方がいました(詳細はこちら)が、
片耳難聴の度合いも、置かれた環境による困り度も人それぞれ・そのときどきです。
ネガティブな側面しかないという人もいるかもしれません。
困りごとを減らすために、当事者同士で相談したい方などは、
交流会「片耳難聴Cafe」も活用してみてください(詳細はこちら)
周りの方に理解を求めたいという方は、学校/企業/団体様の研修依頼などもお受けしています。お気軽にお声がけくださいね(詳細はこちら)。

アンケートにご協力くださった皆さん、ありがとうございました!
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