1. メニエール病

Written by 角田 玲子

症状

10分以上続くめまい発作を繰り返す
めまいの前後に、耳鳴り・耳づまり・難聴(片側に起こることが多い)を伴う。

めまい

  • 吐き気や嘔吐を伴う。
  • 特別の誘因なく起こる。
  • 横になり休んでいても20分〜半日くらい続く。
  • 繰り返し起こる。
  • 発作中は「眼振(がんしん)」という異常な眼の動きがあり、裸眼でも確認できる事が多い。

片耳の耳鳴り

「ゴー」という低い音や、モーター音のような耳鳴りがする。

耳閉感・難聴

低音部(500Hz ヘルツ 以下)の難聴では「聞こえない」というよりも、トンネルや高所で経験するような耳の詰まった感じがする。

音の響く感じ

聞こえない方の耳に、金属や食器などの触れあう音がビンビンと響く感じがある(内耳性の難聴に特徴的な「補充現象」という症状)。

患者数

40,000〜60,000人(人口10万人あたり35〜50人)と推定され増加傾向。女性に多く、また発症年齢が高齢化している

経過・予後

めまいを繰り返す時期が一定期間あり、その後いったん落ち着く。初期のうちは、症状が治まっている間に聴力が改善するが、めまい発作を繰り返すうちに難聴が進行することもある。
難聴の程度は中等度(60dB未満)で、それよりも悪くなることは10%以下。

メニエール病の初期の聴力
メニエール病の初期の聴力
※間欠期:症状が治まっている時期
出典:メジカルビュー社『前庭障害に対するリハビリテーション』所蔵の図

発症後2〜3年程度で症状が治まる場合と、発作が長期間続く場合がある。
発作が長期間続くと両側のメニエール病になるケースもあるが、多くはない。

原因・病態

原因は不明。内耳の膜迷路(まくめいろ)が水ぶくれる「内リンパ水腫」になるため、めまいと難聴を繰り返す。

内リンパ水腫によるめまい発生のイメージ
内リンパ水腫によるめまい発生のイメージ

診断

  • めまい発作や難聴を繰り返すかどうかなどの問診、めまい時の眼振の様子、変動する感音難聴(内耳以降の障害による難聴)などから診断。
    めまい発作が起きたときに、スマホなどで眼の動き(眼振の様子)の動画を撮っておき、受診した際に医師に見せることで診断の役立ちます。
  • 通常の脳MRIでは異常は見られない。特殊なMRIの撮影では、内リンパ水腫を映し出すことができる(大学病院の専門外来などで可能)。
  • 内リンパ水腫を検出するための検査が行われることもある。
    グリセロールやフロセミドなどの利尿効果のある薬剤(点滴や注射、内服)の使用前後の聴力や前庭(バランス)機能の変化をみるもので、検査には2〜3時間かかる(めまいの専門病院で行っている)

気を付けること・治療

めまい発作時

やや暗めの部屋で横になって眠るのが一番です。
発作時に内服する薬(トラベルミンなど)が処方されていれば内服してひと眠りしましょう。吐き気止め(ナウゼリン・プリンペランなど)も一緒に飲むことがあります。だいたい2時間くらい眠ると楽になります。

めまい発作の前に耳つまりや耳鳴りが大きくなる方もいます。このようなときは無理せず、早めに休むようにしましょう。

発作のない時期

予防の治療を行います。規則正しい生活(充分な睡眠、適度な運動)や内リンパ水腫を改善する利尿剤(イソバイドや五苓散など)内服を行います。
60〜70%の症例はこのような保存的治療が有効です。

服薬してもコントロールが難しい場合

中耳加圧器治療(ちゅうじかあつきちりょう)や、内リンパ嚢解放術(のうかいほうじゅつ)が行われる事があります。

  • 中耳加圧器治療
    専用の耳栓をメニエール病の耳に挿入するため、鼓膜に孔があいている方は使用できません。
    病院から中耳加圧器をレンタルして 1回3分間、1日2回毎日自宅で治療を行います。治療期間中はめまいの記録を付け、4週に1回耳鼻科医の診察を受ける必要があります。
  • 内リンパ嚢解放術
    内リンパ嚢(耳の後ろの骨の中にある「嚢」ふくろ。内リンパ液の吸収を行っている)に孔を開け、過剰な内リンパ液を排出できるようにする手術。
    ふつう全身麻酔で行います。内耳を損傷することはありません。

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