大きな音に気を付けて

Written by 辻 慎也

騒音性難聴を予防する

大きすぎる音にさらされ続けることで、蝸牛の中にある有毛細胞が傷つき、
5~15年以上かけてゆっくり進行していくものを「騒音性難聴*」といいます。

ただし、片耳難聴だからといってリスクが高くなるということはありません。

大きい音とは、具体的にはどれくらいの大きさ / 長さが危険なのでしょうか。

「1日当たりの許容時間の目安」を基に表にまとめました1)

音圧レベル**(dBSPL)具体例1日あたりの許容時間
130ジェット機のエンジン音
(30m離れた所で計測)
1秒未満
1253秒
120救急車
消防車のサイレン
9秒
110コンサート会場1分30秒
105工事用の重機4分
100ドライヤー
地下鉄車内の騒音
15分
95オートバイ47分
90芝刈り機2時間30分
85街頭騒音8時間
75掃除機以下 リスクなし
70洗濯機、乾燥機
65エアコン
60イヤホンでの
適度の音量設定
具体例は日本耳鼻咽喉科学会ホームページ2)より引用(括弧内は筆者追記)



音が大きくなるほど、
さらされるのが短い時間であっても、
騒音性難聴のリスクになり得るということが分かります。

なお、130dBSPL以上の音では、
一瞬にして聴力低下が起こることになり、
このことを別名「音響外傷」ともいいます。

普段生活している分には、
85dBSPL以上の大きな音に長時間さらされることは少なく、
騒音性難聴のリスクは極めて低いと考えられます3)


  • * 騒音性難聴:
    詳細な罹患率は不明4)
    基本的には両側性だが、片耳のみが大きな音に晒され続けた場合は、一側性となる5)
  • ** 音圧レベル:
    音圧レベルは1つの目安で、常にこの値ではない。
    例えば、音源との距離が遠くなれば音圧レベルは低くなる。


残念ながら、一度傷ついた有毛細胞は現在の医療では再生することができません。

不測の事故によって起こる音響外傷は防ぎようがありませんが、
上記の表にあるような大きな音がする場所では、長時間さらされないように予防しましょう。

例えば日本では、工場現場など騒音がひどくうるさい(85dBSPL以上)場合に
聴覚保護具の装用など、騒音性難聴防止のための対策をとることが推奨されています6)

片耳難聴の労働者に対して特別な規定はありませんが
耳鳴や耳閉感など、何かしら違和感があれば、放置せずに耳鼻咽喉科専門医(騒音性難聴担当医)に相談しましょう7)



また近年、注目を集めているのが、
長時間大音量で音楽を聞くことにより難聴のリスクを高めるいわゆる「ヘッドホン難聴 / イヤホン難聴」があります。

次の記事で、聞こえる耳を大切に音楽と付き合うヒントを紹介します。

「音楽を楽しむときのヒント」

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