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片耳難聴の本棚【特別企画】読書会イベントレポ―ト

本を読む人

「聞こえ」について描かれた作品(小説・漫画・映画)をご存知ですか?

片耳難聴(一側性難聴・一側聾/片側聾)が出てくる4作品と、
その他の聴覚障害(両側性難聴・ろう)が出てくる6作品を一例として紹介します。

フィクションの世界で描かれた多様なストーリー。

関心のある方は、手に取ってみてくださいね。

また、9月のしゃべり場 片耳難聴Cafe
特別企画として、片耳難聴にまつわる読書会を行いました。
当日の様子をお届けします。


  • ※作品はいずれもフィクションです。
  • 難聴についての正確な情報は、各自でご確認ください。

片耳難聴が出てくる作品

片耳のみの難聴が登場する作品も、数は多くはありませんがあるようです。

以下、2000年以降に公開された作品を紹介します(50音順)

「蝶の羽ばたきその先へ」森埜こみち 2019

突発性難聴1)により左耳が聞こえにくくなった中学生、結の姿を描いた児童文学。

きこいろでも作者インタビューをさせて頂きました。

繊細な心理描写で、大人も引き込まれる作品です。
詳細は、後半のイベントレポートもご覧ください!

「どこかでベートーヴェン」中山七里 2016

音楽×推理小説。
主人公は、ピアニスト志望の男子高校生。

ある日、突然に左耳が聞こえにくくなり
ピアノに全てを捧げる彼にとって、大きな苦難と葛藤を与えたーー

清塚信也が演じる岬恭介

その後、難聴とともに活躍するピアニストとして描かれたのが「岬洋介シリーズ」。

・「おやすみラフマニノフ 」2010
・「いつまでもショパン」2013
・「どこかでベートーヴェン」2016
・「もういちどベートーヴェン」2019
・「合唱 岬洋介の帰還」2020

中でも「さよならドビュッシー」は、映画・テレビ・漫画化もされています。

「夏雪ランデブー」河内遥 2009

「幼い頃に出した高熱がきっかけで僕の右耳は少し遠かった。
だから彼女は基本、僕の左側を歩いた。それは暗黙の特等席で」

アニメ公式サイト

主人公の夫が片耳難聴を持っており、隣を並んで歩く回想シーンが登場します。

コミック誌FEEL YOUNG掲載が原作のラブ・ファンタジー。
2012年フジテレビよりアニメ化されました。

半分、青い。北川悦吏子 2018

NHK2018年朝ドラ。
ヒロインが片耳難聴を持つということで、注目されていた方もいるのではないでしょうか。


永野芽郁さん演じる主人公は、おたふく(ムンプス難聴)2)によって子どもの頃に片耳が聞こえなくなります。

脚本家の北川悦吏子さんご自身が
2012年、聴神経腫瘍で左耳を失聴したことに着想を得たそうです。

なお、ご自身が片耳失聴する前のドラマでも聴覚障害を取り上げていました。

「愛していると言ってくれ」1995
幼いころに両耳の聴覚を失った青年画家とのラブストーリー

「オレンジデイズ」2004
柴咲コウ演じる中途の両耳失聴の主人公をとりまく青春ドラマ

(「半分、青い。」ドラマ化にあたり片耳難聴の演出についてきこいろ代表が行ったレクチャーの様子はこちら)


  • 1)突発性難聴
    突然起こる片耳(まれに両耳)の感音難聴のうち、原因が不明なものの総称。
  • 難聴の程度は人それぞれだが、聴力が悪化したり繰り返すことはない。
    発症率は、10万人あたり30人~約60人という報告がある。
    早期(一週間以内)の治療が望ましく、治療することで回復する場合もあれば全く聞こえなくなる場合もある。

  • 2)ムンプス難聴
    ムンプスウィルスによるおたふく風邪の合併症の一つ。
    全数は把握されておらず、おたふく風邪患者の0.01~0.5%と様々な報告がある。
    難聴は片側であることがほとんどで、95.5%が片耳難聴、4.5%が両耳難聴という報告もある。
    日本でのムンプス予防接種は任意。小児学会では、1歳で1回目の接種・就学前2回目の追加接種を推奨。

両側性難聴が登場する作品

両側性難聴が登場する作品

聴覚障害というと
両耳が全く聞こえず、手話を使う人をイメージする人も多いのではないでしょうか。

フィクション作品の視覚表現としても、描きやすいのかもしれません。

しかし、コミュニケーションの方法は
聞こえ方や育った環境等でも異なります。

作中でも、筆談を使う人、口話や読話を使う人、補聴機器を使う人など様々に登場します。

以下、2000年以降公開のメディアミックス作を中心にピックアップしました(50音順)

「コウノドリ」鈴ノ木ユウ 2017

原作は講談社モーニングより出版、TBSより放映

産婦人科を舞台にした医療漫画。

聴覚障害を持つ人の出産についても描かれ、
医療現場での情報保障や意思疎通支援についても考えさせられる一作です。

原作では、18巻でろうの妊婦、
TV化ではシーズン2第一話で、ろうあの夫婦を志田未来・泉澤祐希が演じています。

「聲の形」(こえのかたち)大今良時 2011

原作は講談社マガジン、2016年アニメ映画化

耳の聞こえる少年と、耳の聞こえない転校生のストーリー。

作者の不登校や、母親が手話通訳であった経験が作品にも反映されたそうです。

ノベライズや、10カ国以上の海外版も出版、
インクルーシブ教育やいじめ防止をテーマに、文部科学省とのタイアップや、
一般財団法人全日本ろうあ連盟の監修による道徳教材として、2015年に30分のショートドラマ化もされています。

「ひだまりが聴こえる」文乃ゆきの 2014

原作コミックはプランタン出版2017年映画化

ボーイズラブのコミックシリーズ。

「ひだまりが聴こえる」2014
「ひだまりが聴こえる -幸福論-」2016
「ひだまりが聴こえる -リミット-」2017

作者は、難聴やろうの友人がおり
「聴こえないのは、お前のせいじゃないだろ」と言うシーンが浮かび、話を作り始めたそうです。

映画では、日本語字幕のあるバリアフリー上映も一部映画館で実施されていました。

「ふつうな僕らの」湯木のじん 2019

集英社マーガレット掲載


高校生の椿が好きになった先輩は、子どもの頃に両耳が聞こえなくなっていた。

先輩と仲良くなろうとする椿だが、先輩がノートに書いた言葉は…。
「君は生きるか死ぬかみたいな経験をして、それに比べたら(略)僕が耳が聞こえないっていうこともささいなことで。(略)でも君は、元気で明るい正しいことを言える一番遠い世界にいる人だった」

その恋の行方は…。現在連載中。

「ゆびさきと恋々」森下suu 2019

講談社デザート掲載

生まれつき両耳が聞こえない大学生の雪。
国際交流のサークルで出会った先輩は、コミュニケーションの壁も超えてーー

作者は、以前から手話を用いた作品に関心があり
「道徳の教科書のようではなく…とにかく読まれることが大事」と話されています。

作中では、大学講義のパソコンテイク(音声の文字提示をパソコンで行う)の一コマや、
読話(口や表情などを読む)の難しさを視覚的にした表現も描かれています。

現在連載中。

「レインツリーの国」有川浩 2006

原作は角川文庫より、2015映画化

恋愛小説。
作者の夫が突発性難聴で病院にかかった経験があったのをきっかけに制作した、と書籍のあとがきで記しています。

2007年ラジオドラマ化、
映画化にあたり、文部科学省とタイアップされ啓発活動ページが作成されていました。

同作者シリーズ作「図書館内乱」にも、中途難聴を持つ人が登場しています。
この作品もドラマ化されており、
中途難聴を持つ中澤役を演じた土屋太鳳さんは、ご自身の家族が突発性難聴であるとのことでした。



この他にも、両側性難聴が登場する作品やノンフィクションは沢山あります。
お勧めや感想もお寄せください。

片耳難聴が出てくる作品やメディアをご存知の方は、
ぜひこちらのフォームよりお知らせください!随時、情報を追記します。

片耳難聴Cafe 読書会レポ―ト

片耳難聴Cafe 読書会レポ―ト

しゃべり場 片耳難聴Cafe。通算19回目。

9月は、いつものテーマフリーや、家族のための会に加えて
片耳難聴に関する本をテーマに「読書会」も行いました。

写真は、各回の参加者を編集したもの

昨年出版された、突発性難聴により片耳が聞こえにくくなった中学生が主人公の「蝶の羽ばたき、その先へ」を中心に話しました。

一部紹介します。

特に印象に残ったシーン

  • 結の聞こえなくなった直後のシーン
    きょう言われて、きょう認めなくちゃいけないの…(略)治るって信じて、病院に通ったんだよ。それなのにもう言わなくちゃいけないの。わたしの(片)耳は聞こえなくなりましたって、みんなに言わなくちゃいけないの。なんで?わけわかんない!」
    すごく胸にささった。
  • クラスの雑談が聞こえにくかったシーン
    みんなが笑っている姿を見ながら、わたしの気持ちはすっと落ちた…止めようがなかった」「何度も自分にいいきかせた。なぜこんなことで落ち込むんだ。けど、どうにもならない。浮上できない」
    自分にもあったなぁと共感した。
  • 両耳を中途失聴した今日子さんのセリフ
    「手話で話ができるときはいいけれど、ふだんの生活はそうはいかないでしょ。そうするとね、いままでいちばん楽しかった時間が、いちばん辛くなってしまう…(略)聞こえないことは周りに伝えてあるから、みんな気をつかってくれるの、いつもは。でも、楽しければ楽しいほど、わたしのこと忘れちゃう」。
    自分も片耳難聴で輪に入れない孤独感を経験しているはずなのに、
    それでも両耳が聞こえない知人に同じことをしてしまった時があったのを思い出した。

読書をきっかけに、
「あるある」「わかるわかる」「私の場合は、こうだった」など
それぞれの片耳難聴の体験が思い出され、大いに盛り上がりました。

本を読んでの感想

  • 難聴側から話しかけられたときなどの
    「音は聞こえているけど、言葉として聞こえにくい」感じの表現
    「●●」でも「××」でもなく、ぼやかした感じがピッタリだと思った。
  • 病気や障害を描くのは難しいとも思う。
    この物語は、ハンデを乗り越える美談やお涙頂戴的な消費コンテンツではない感じだったため、抵抗なく読みやすかった。
  • 自分も、主人公のように手話サークルや読話の教室に行ったことがあるが
    両耳が聞こえない人が多い中では、片耳難聴は聞こえる側。
    「片耳聞こえるからいいじゃない」と言われたこともあり、上手く輪に馴染めなかった。
    両耳が聞こえない人からみれば、それはその通りで。
    でも、この本のように良い仲間になれたらよかったなぁと思う。

「読書会」という初めての試みでしたが
一つの物語から、それぞれの人生の物語を語る時間になったように思います。

同じ一冊を読んでも、感想は様々。
皆さんからも、ぜひ「こんな風に読みました」など
@kikoiro宛にメッセージをお寄せください。

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