Eテレ「ろうを生きる難聴を生きる」をご覧頂いた方へ(きこいろのご紹介)

2020年4月9日 − Written by 麻野 美和

設立の経緯

発足初期メンバーの一部、20代~40代の男女6名
発足初期プロジェクトメンバーの一部

「きこいろ 片耳難聴のコミュニティ」は、2019年の1月より構想を始め、昨年夏に片耳難聴の当事者や家族など9名の有志で立ち上げた小さな当事者団体です。
それまではお会いしたことのなかった全国各地のメンバーと「ご本人やその周りの方が少しでも過ごしやすい世の中のためになれば」という思いで集い、設立しました。

片耳難聴は、片方の耳が聞こえているがゆえに、本人の困り感は周囲からは分かりにくいところがあります。普段の静かな環境で1対1の会話は聞こえるのに、特定の場面で聞き取りにくさが生じる。初対面の人、職場の人、友人、恋人、家族、そして本人でさえも、片耳難聴による聞こえにくさを理解するのは難しいかもしれません。

日本の片耳難聴を持つ人は、30万人以上いると推定されます。みんな同じ「片耳難聴」を持っていても、聞こえ方や自身の難聴の受け止め方は本当に人それぞれで、自分も片耳難聴があるにも関わらず、「そんなふうに聞こえてるんだ」「そんなふうに感じているんだ」と驚かされることも多々あります。
「聞こえ方は、いろいろ」「感じ方も、いろいろ」。片耳難聴だからと言って答えは1つではなく、“聞こえの多様性”を大切に、中立的な立場で活動をしたいと思っています。

また、「自分以外の片耳難聴のある人に会ったことがない」という人も沢山います。片耳難聴があることは本人からのカミングアウトがなければ分かりません。片耳難聴を持つ人のためのコミュニティもありませんでした。自分一人で悩みを抱えている人も多くいます。

私たちのできることはほんの小さなことかもしれません。社会を変えるような運動ができるわけではありません。でも、「自分一人じゃない」ということが心の拠り所になったり、知らなかった情報を知ることで少し気持ちが楽になるかもしれません。
この活動を通し、片耳難聴のある方へのほんの小さなお手伝いが出来れば嬉しいです。

代表 岡野由実

メンバー紹介:岡野由実
言語聴覚士。目白大学客員研究員。筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。耳鼻咽喉科での実践と、片耳難聴者の障害実態について研究・講演を多数行う。13歳のときに突発性難聴で片耳失聴。NHK朝ドラマ「半分、青い。」監修。

主な活動

片耳難聴者のQOL(quality of life:生活・人生の質)の向上のための活動を行う。

①片耳難聴レクチャー(勉強会・相談会)の実施
②片耳難聴Cafe(交流会)の実施
③片耳難聴に関する情報発信
④片耳難聴についての一般/専門職への研修

活動紹介・2019年度の実績

①片耳難聴レクチャー・相談会

本人・家族・周りの方が対象の勉強会。
片耳難聴Cafeと合わせて不定期開催。全国各地にて。

片耳難聴レクチャーで講師をする岡野の様子
横浜でのレクチャーを行う岡野

レクチャーでは、ウェブサイトに掲載した情報を中心に「ここが知りたかった」という疑問に応えながら分かりやすく解説。

個別相談では、「片耳難聴Cafeなど皆の前では話しにくい」という方、ご家族や周りの方の質問やご相談をお伺いします。(ボランティアでの運営上、メール・電話での込み入ったカウンセリング相談には対応しておりません。必要の際にはこちらのご活用を検討頂けますと幸いです。)

担当は、当事者でもあり片耳難聴に詳しい聞こえの専門職(代表 岡野・副代表 高井)です。普段は、病院や学校などの現場で働く豊富な経験をもとにお話しします。

メンバー紹介:高井小織
言語聴覚士。京都光華女子大学医療福祉学科聴覚専攻准教授。京都大学教育学部卒、立命館大学院応用人間科学修了。難聴学級の担任経験を持つ。原因不明だが、就学時健診で左耳が聞こえないことが分かった。

2019年は、神奈川・広島にて開催し、累計参加者40名。皆さんの帰り際のすっきりした表情が印象的でした。
今後は、レクチャーや相談を担当できる専門職の養成にも力を入れていきたいと考えています。

(詳しくはこちら

②片耳難聴Cafe

片耳難聴を持つ人のしゃべり場。
毎月1回、全国各地・オンライン通話にて開催。

片耳難聴Cafeで話す麻野と参加者の男女2名
片耳難聴Cafe岩手。中央:担当の麻野

「こんなとき、他の人はどうしているんだろう」「この気持ち、分かってくれる人はいるかな」そんな声から片耳難聴Cafeは生まれました。

正しい情報が分かっても、医療・福祉が進んでも、それぞれの苦労や葛藤がなかったこと・ゼロになることはないのかも知れません。自分の思いを語り合える場を参加者の皆さんとつくっています。

担当は、当事者でもあり対人援助職の専門職(事務局 麻野)です。普段は、主に障害・児童福祉分野で働く経験をベースに安心感あるファシリテートを行います。

2019年度は、北は岩手~南は福岡まで計12回。累計参加者60名。笑いあり、時に涙ありの時間を過ごしました。
今後は、ファシリテーターを増やし、より身近な地域で手軽に多くの方が参加できるように、また片耳難聴をご家族を中心とした会も開催を検討しています。

(詳しくはこちら

③片耳難聴に関する情報発信

(1)ポータルサイト

専門家によるガイダンスから、当事者のインタビューやコラム、活動報告など。
月1記事を目標に、不定期更新。

ウェブサイトトップページ
表イラスト作成:プロジェクトメンバー みずな

病院に行っても「片耳が聞こえているから問題ない」「特に何もすることはない」と言われたり、インターネット上を探しても情報が散逸し「知りたい情報・信頼できる情報が分からなかった」という課題を解決するために作成しました。

2019年12月に公開、現在記事数は26。
知りたい情報のキーワードをページ上部の「検索欄」に入れると見つけやすいかも知れません。

今後も、片耳難聴のある人が「片耳難聴について知りたければこのサイトを見よう」と正確な情報にアクセスできるように、片耳難聴ではない人にも「ちょっと興味をひいた記事を見てみたら片耳難聴のことだった」と自然に知って貰えるような幅広いコンテンツを届けていきたいと考えています。

(サイトの利用について「利用規約」

(2)Twitter

片耳難聴を中心に聞こえにまつわる情報や、サイト更新・イベント案内・活動全般のお知らせ。
おおよそ1日1Tweet。

WEB記事にまとめる前のちょっとした情報や、きこいろの活動の案内もしています。動向を知りたい方はフォローいただくと便利です。

2019年度は、フォロワー数1450と沢山の方と繋がることができました。リプライもとても嬉しく思っています。
今後も、可能な範囲でご返答し、SNSにおいても持続的に責任を持った情報の更新を第一としていきます。

(3)普及啓発のための活動

企業・行政・団体さまとの協力、講演依頼の受付、新聞・雑誌・テレビ等の取材対応。
随時受付中。

NHKのTV取材を受ける前川さんの様子
取材を受けるプロジェクトメンバーの前川

片耳難聴を持つ人の過ごしやすい社会のため、多くの方に正しい情報・多様な聞こえの姿を届けるには、小さなこの団体でできることに限りもあります。
ご理解ある関係機関・関係企業さまの力添えもいただきながら、効果的な普及啓発となるよう進めていきます。

今年度は、3社の新聞社さまに記事掲載と、NHK Eテレ「ろうを生きる、難聴を生きる」にて取材頂きました。

放送  3月28日(土)午後8時45分~午後9時
再放送 4月3日(金)午後0時45分~午後1時

街中でのNHK取材を受ける高木君の様子
プロジェクトメンバー高木さんの「メガネ型補聴デバイス」の取材

会員とは

このようなきこいろの各種活動は、共感を寄せてくださる皆さまの会費・ご寄付によって運営されています。
「自分も困った。だから誰かの役に立ちたい」「子どものために、活動を応援します」など、皆様のお気持ちと行動に支えられています。

片耳難聴Cafeで電話を持つときの様子を実演する人
片耳難聴Cafeの様子。ボランティアのご協力で開催

今後も皆さんと共に、多様な声を聞きながら活動を継続して参ります。多くの方と集うことで、片耳難聴の存在を社会に知って頂く力にもなればと考えています。活動の趣旨に賛同いただける方は、入会をご検討くださいませ。

  • 会員区分
    正会員:片耳難聴のご本人で、活動を応援して下さる方
    賛助会員:片耳難聴の家族や一般・団体で、活動に賛同して下さる方
  • 会費
    各 1,000円/年 より
  • 会員特典
    イベントへの優先案内・割引価格での参加(※イベントへのご参加は任意です)
    会員限定のメールマガジンの季刊配信(※返信等を強制するものではありません)

(会員について詳細・お申し込みはこちらから

なお、ウェブサイトの閲覧・イベントの参加などは非会員の方でも参加が可能です。きこいろは、広く誰にでも情報や交流の機会等を届けることを使命としています。

2019年9月より募集を始め、現在会員メンバー約150名(ご本人130名、ご家族・周りの方など20名)。

活動・組織運営は、会員の中から有志でご協力を頂いています。それぞれのスキルを生かしながら、お仕事・ご家庭の傍らで柔軟に活動しています。

  • プロジェクトメンバー:活動・運営の全般を恒常・中心的に担う
  • ボランティアメンバー:スポットや部分的な活動のお手伝い(WEB担当・カメラ担当を急募中

おかげさまで活動を続けていくことができます。改めて感謝申し上げます。まだまだこれからのコミュニティです。今後とも何卒よろしくお願いいたします。

プロジェクトメンバー5名の20代~50代の男女
プロジェクトメンバーが集まった二回目のミーティングにて

(全般のお問い合わせはこちらから

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