片耳難聴を持つご本人が色んな経験をし、片耳難聴に対しての想いが様々であるように、その保護者の方もそれぞれのご経験・お気持ちを抱いています。 

今回は、片耳難聴を持つ娘さんの父親である瀬川さんにお話しを伺いました。

お話を伺った方のプロフィール

  • 名前:瀬川さん
  • 年齢/性別:40歳/男性
  • 仕事:基礎医学/生命科学研究者
  • 家族:妻(38)、長女(7)、長男(4)

娘さんのこと

  • 片耳難聴が分かった時期:保育園の頃
  • 聞こえの程度:右耳がほぼ聞こえない
  • 原因:わからない
  • 本人へ伝えているか:伝えている
  • 本人の受けとめ:あまり気にしていない様子
  • 周りの人への開示:伝えている
  • 補聴器などの使用:なし
  • 他の症状:なし

1. お子さんの片耳難聴が分かって

まず初めに、娘さんの片耳難聴が分かった経緯を教えて頂けますか。

長女が保育園の先生に伝えたことをきっかけに、ようやく親が知ることになりました。保育園の伝言ゲームで、「右の耳が聞こえづらいから、左で聞きたい」と保育士の先生に訴えたことで発覚したんです。

それまでも本人から、何回か聞こえにくいと親にコメントがあったように思うのですが、全く気付いてやれませんでした。保育園の先生も気がついておらず、まさに晴天の霹靂でした。

それはビックリされましたね。確かに、片耳難聴は日常会話が成り立つので、近くにいる親御さんでも気づかれない場合も多いようです。原因も不明とのことですが…

原因の探索は主治医の先生と相談しながら進めて頂き、一通りの検査をしましたが、分かりませんでした。

生まれてすぐに行った、脳が音に反応するかどうかの検査*1ちょう せい のう かん 反応はんのう」(ABR: Auditory brainstem response)はパスしていましたし、1歳で難聴の原因にもなりうる麻疹・おたふく・風疹のワクチンも接種していました。

難聴を引き起こす可能性のあるサイトメガロウイルスの検査もしましたが、結果は陰性ですし、MRIやCTで器質・形態学的な異変もありませんでした。そのため、4~5歳のどこかで発症したと推測されました。個人的には、ワクチンの効果が十分出なくて、不顕性ふけんせい感染かんせん*2(病気にかかったのに症状が現れないこと)した可能性を考えています。

幼いお子さんにとっては、検査や病気の理解も難しいかと思うのですが、どんな風に説明していましたか?

事実を淡々と、でも検査の必要性をできるだけわかりやすい言葉で伝えるようにしています。検査は面倒くさがりますが、特に負担にはなっていないように見えます。

片耳難聴のこと自体は、娘さんの感じはどんな風ですか。

娘は、分かったときはケロッとしていた感じがします。今も本心まではわかりませんが、ちょっとした不便はあれど、あまり気にしてなさそうです。


2. 家族の心境

娘さんの片耳難聴が分かったとき、瀬川さんご自身やご家族はどんな心境でしょうか。

私は愕然、妻は「なんとかなる」といった感じでした。私自身が普段、病気について勉強しているにも関わらず、難聴は全く理解していなかったことに気がつきましたし、この先どうなるのかと落ち込みました

親御さんも突然のことで、驚かれるのも無理はないと思います。そんな中で、誰かに相談することもありましたか?

自分の周りにも医師が多いので、医師への治療・診断の相談をしましたが、自分で関連する情報、最新の治療法や基礎の論文を読んで勉強していました。友人には、少し話をした程度で、特別に相談はしなかったです。あとは、妻が明るく、それには救われました。

具体的にどういうことなのか、どうするのが良いのかと情報を探されたんですね。

はい。そして結局、原因も不明で治療法もないということが分かりましたので、 片耳難聴と長く付き合っていくにあたり、Web上で実際の当事者の方々の情報を集めました。

その中で、「片耳なんちょーキクチさん」(片耳難聴の当事者で片耳難聴をテーマに漫画を描いている)や「デフサポのユカコさん」(両耳難聴の当事者で難聴児支援をしている)の存在を知り、片耳難聴の方・高度両側性難聴の方の人も、素晴らしい方が沢山いると分かりました。とても勇気付けられ、なんとでもやっていけると強く励まされました。

先輩当事者の存在に安心される保護者の方は多い気がします。その後、時間と共に気持ちの変化や今はどんなお気持ちでいますか。

私も妻も、すっかり落ち着きました。 何が起こっても、最善をつくして、子供をサポートしようと話しています。

耳が聞こえても聞こえなくても、もっと重い病気になってもならなくても、親ができることは、「子どもを大切にすること」だけだと思います。それ以上でも以下でも無い。前を向いて応援するだけ。そんな当たり前のことに、気がつけたことが落ち着いた一番の理由だと思います。

3. お子さんとの関わり

普段から片耳難聴のお話しはされますか?

職業柄、いろんな病気があること・生命のこと・親もいつ死ぬかわからないことなども含めて、普通に話をしています例えば、「毎日明るく元気にいこう。心が前向きであれば、体の器質的なハンディキャップにも負けることはないと思うよ」とか「ハンディキャップを糧やバネにして、活躍する方々がたくさんいるよ」、「こんな人もいるよ、あんな人もいるよ、すごいなー」、「心の持ち方なんだねー」などと伝えています。

補聴器のことなども話しますか?娘さんは、片耳はほぼ聞こえないとのことなので、一般的な音を大きくして聞くタイプの補聴器は効果がありませんが、「クロス補聴器」や「補聴援助システム」が選択肢としてはあります。

実際の使用感などを今後、皆さんから教えていただきたいところです。

クロス補聴器や補聴援助システムは、聞こえる耳に装用して音を入れるのですが、雑音も入ってしまい逆に聞き取りにくいと感じる場合もあるため、使用場面を選ぶ必要があります。

私自身が調べたところでは、難聴側からの聞き取り・音がする方向の特定や賑やかな環境での聞き取りの改善という点で人工内耳に魅力を感じています。娘にも、“聞こえ”をサポートするさまざまな選択肢があることは伝えています。娘も興味を示しているようです。なんにせよ、メリット・デメリットを総合的に、娘と話し合いながら考えていきたいと思っています。

また、弟さんがいらっしゃるとのこと。お姉さんの難聴については伝えているのですか?

伝えています。「お姉ちゃんは、右が聞こえづらいよー」といった程度に。まだ4歳なので、なんとなくしか分かっていないのだと思います。たまに、「お姉ちゃんは片方の耳が聞こえない」と悪気なく言います。その時は、「お姉ちゃんはお耳の病気に負けず、明るく元気でいてるからすごいなー」と伝えています。「ほんまに立派やわー」と。今後も、事実を伝えていくつもりです。

4. 周りの人に伝えるにあたって

片耳難聴について、周りのお友達などには伝えているんでしょうか?

様子を見て、必要に応じて娘が自分から伝えているようです。親からは、 保育園でも小学校でも、担任の先生や関連する先生方にお伝えしています。そのときに、サポートの指標の1つとして、岡野さんらが監修したプリントなども渡しています。

学校側も知らないことがあると思うので、具体的な対応イメージができると良いですね。

ただ、先生には「あくまで、娘と先生で話し合って決めてください」と伝えています

娘にも、「先生には座席の配慮や、音のする方向が分かりにくいこと・賑やかな場所での聞き取りが難しいことについて伝えている。最終的には、自分で先生と相談するように」と伝えています。「自分で、聞こえにくいとか席を代わりたいとか、思ったことを伝えていけばいいよ」と。自分で考えること、伝えること、失敗を恐れずチャレンジし続けること、を育てられればと思っているからです。

5. 配慮するのは、その方が楽しいと思えるから

その他、日頃の関わりで家族で工夫されていることなどはありますか?

例えば、座席の位置を聞こえやすいようにしています。本人は「別に良いから…」と言いますが、「配慮」というより私の個人的な欲求で。彼女が聞こえやすい方が、会話も弾むし、私が楽しいからです。

座席の配慮以外にも、長女は、難聴側からの会話を聞き返すことがあるのですが、「聞こえにくいのは当然なのだから、何度でも聞きなさい」と伝えています。聞き返すことは、まったく悪いことじゃない何度でもチャレンジしよう」と伝えてます。なので、聞き返されたら何度でも、できるだけ顔をみて答えるようにしています。 (思春期には難しいでしょうし、TPOにもよりますが…)

「ちょっとしつこく感じたらごめん、けど、わかるまで何度でも聞きます。何か?」みたいになってほしいなと個人的には思っていて笑 私自身もそんな感じで、相手の発言も理解するまで何度でも聞きますし、難聴だけでなくどんな物事でも、時には空気を読まないことも辞さずに、思ったことを言える力も人生には必要だと思って、そう伝えています。

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