町田也真人選手 ポートレート1

華麗なテクニックと視野の広いプレーでファンを魅了しているJリーガー、町田也真人(まちだ やまと)選手。10月初旬、自身が片耳難聴者であることをTwitterで告白し、大きな反響を呼びました。きこいろ編集部は今回、町田選手に貴重なお時間を頂き、その思いについてお話を伺いました。

今年は移籍をされて初めてのシーズンですが、ケガが重なり、とても大変なシーズンになっていらっしゃるのかなと思います。ここまで一年間を通していかがですか?

僕自身、覚悟を持って移籍を決断し、初めてのJ1シーズンなんですが、トータルでいうと本当に5ヶ月くらいはケガでプレーできていない。なので、まだちょっと環境慣れが出来ていないのかなと。

もっと自分自身、やらないといけないことがあったんじゃないかなっていう後悔もあります。ただ、試合に出させてもらい始めて、すごく充実したシーズンだなと思えたときもあったので。あとは早く戻って、最後の一試合、二試合出場して、残留を勝ち取れる活躍ができれば、僕にとっては良いシーズンだったなと言えるようになるかなと思っています(編集部注: 取材日である11/17時点でのお話です)。

そう期待しています。これまでJ2でプレーされてきて、J1に今年入られたわけですが、その違いを感じている部分はありますか?

すべてが違うというか。思ったより違っていて。環境から、人の注目度、選手のポテンシャルだったり実力だったり。全部が違うっていうのは感じましたし、ここでやりたいな、やって自分の存在価値をJ2でなくJ1で示せるようになりたいと余計に思った一年間でした。

ツイートに込められた思い

10月の初旬に片耳難聴のことをツイートされて、そのおかげで私たちもこうしてインタビューをお願いできています。あのツイートをされて、仲間の選手たちも反応されたかと思いますが、反響などはどう感じていますか?

実は、親しい仲間にはけっこう早い段階で伝えるんです、でも、チームメイトにもべつに言わなくてもいいかな、と思うときは言わない場合もあります。今回は色々なニュースにも取り上げられたので、「そうだったんだ」っていう周りの反応はありました。僕自身、あまり重く受け止めていることじゃないので、こう、うまく茶化されたりっていうか…

茶化して欲しいみたいな感じですか?

はい、そんな感じでうまく接してくれているのがチームメイトですね。

片耳難聴のことを公にしたのは10月のツイートが初めてですか?

はい。

ツイートをしようと思ったきっかけは何かあったのでしょうか?

社会に対して何かできないかな、ということを考えたりするときがあって。それでまず、自分の経験、自分の持っているものとして、いつか耳のことを言おうかなってどこかで思っていたんです。

でも、先ほども言ったように自分は耳のことを重くは考えていないんです。なので、たとえば片耳難聴の人や、そういう人たちの団体の希望みたいなものになれればいいなと。そういう団体を自分で立ち上げられたらいいなと。実際にすでに活動している団体があって良かったなと思います。

あと、「私も片耳難聴です」という反応が思ったよりも多くて。こんなに多くの人がいるということは全然知らなかったですね。

以前から耳のことを言いたいという気持ちはずっと持ちながら、長年プレーをされていたという感じなのでしょうか?

発表したくて仕方ないという感じではまったくないんですけど、自分が有名になってきたときに言いたいなと思っていたんです。公表したのはJ1で初スタメンになった週のときだったんですけど、(J1に出ている選手でも)こういう人がいるよと。僕は「障害」とは思っていないのであれなんですけど…

ハンディキャップというか。

はい。自分はハンディキャップとは思っていないんですけど、「そういう人(片耳難聴者)もいるよ」と。反響はあると思ったので、いろいろよく考えてツイートをしました。

片耳難聴になられた経緯も書かれていましたが、改めてご説明を頂けますか?

幼い頃なので記憶があるわけじゃなくて、親から聞いた話です。僕が二、三歳くらいのときに(いま片耳難聴のある)右耳に、自分で耳掻き棒を刺してしまったそうです。それであわてて病院に行ったというのが始まりです。

そのときには分からなかったんですが、小学生になって聴力検査を受けたら「あれ? 聞こえない!」となって、病院にまた行ったんですね。そこで「骨が鼓膜を圧迫している」と言われたのを覚えています。あとは全然覚えていないんですが、「手術をしても治る確率は半々」と説明を受けて様子を見ようと決め、そのままというかたちですね。

検査で分かるまではご自身も聞こえていないことにあまり意識がなかった?

なかったですね。小学一年生までは。

そのときにご自身で感じたことなどは記憶されていますか?

嫌だったのは、小学校の聴力検査のとき、問題があった人は再検査で居残りになるじゃないですか。それで待っている間に「あれ? 也真人どうしたの?」みたいな感じで女の子たちに見られるのがすごく嫌だったのは記憶してます(笑)。 それ以外は、そんなに嫌だと思ったことはないですね。

「サッカーのこと、コミュニケーションのこと」

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