周りの人が学校生活で工夫できること

Written by 岡野 由実

1. 学校で困ること

学校や幼稚園などの集団の場は、子どもたちの声や机や椅子の音、窓の外や廊下から入ってくる騒音、さまざまな音で溢れています。
「雑音の中で聞き取りにくい」片耳難聴の子どもたちにとって、集団の場では聞き取りにくい場面がいくつもあります。

片耳難聴のある大人の方に、小学校生活を振り返ってもらい、どんな場面で困ったことがあったのかインタビューをしました1)

  • 休み時間に友達との会話が聞き取れなかった
  • 友達から「無視した」「聞いてない」と勘違いされたのが嫌だった
  • 給食やグループディスカッションが聞き取りにくかった
  • 先生の話し方によっては聞き取れない授業があった
  • 授業中は静かなのであまり聞き取りにくいという記憶はなかった
  • 聞こえない耳を使うルール設定されて困った
    例: 聞こえない方の耳で聞き取らなければならない伝言ゲーム、手を叩く音を頼りに場所を探さなければならないスイカ割り
  • 聞き取りやすい席を配慮してもらえなかった
  • 席順が決められていたのは嫌だった(特別扱いされたくなかった)

片耳難聴のある当事者の経験談では、授業中よりも休み時間の会話で苦労したという方が多くいました。聞こえないために、周りの友達から誤解を受けてしまったという経験をする人もいます。
本人に「頑張って聞きなさい」「無視してはいけない」等と求めるのではなく、周囲の理解を得ていくことも大切です。

また、聞こえる耳が教卓側になるような席順にする、といった配慮をしている学校もありますが、当事者からは、「席を配慮してもらいたかった」という声もあれば、「席順が決められていたのが嫌だった」「みんなと一緒に席替えをしたかった」という声もありました。

受け止めは人それぞれです。まず、子どもたちの声・様子に、耳を傾けてください。

2. 先生が生徒にできること

(1)席順の配慮

日本耳鼻咽喉科学会学校保健委員会(2019)による耳鼻咽喉科健康診断マニュアルには、片耳難聴のある児童に対して「学習が受けやすい位置への座席配置」「聞こえる耳が教壇の側となる座席を配慮する」と明記されており、片耳難聴の子どもへの席順の配慮が推奨されています。

例えば、下の図のように、左耳に難聴のあるお子さんがいるとします。黄色で示すように聞こえる右耳が教卓側になるように配慮することが推奨されています。

左耳難聴者向けの座席配慮
左耳難聴を持つ生徒に座席配慮をしたイメージ

ただ、片耳難聴の子どもでは、授業中の聞こえよりもグループディスカッションが聞き取りにくかったり、休み時間の会話が聞き取りにくいといった困難さが伺えます。
そのため、隣の席の友達とディスカッションや会話がしやすいように、ピンクで示すような座席にするような配慮も良いかと思います。

あるいは、普段は特に位置を決めていないが、英語のリスニングやオーラルコミュニケーション、入試のときなど、特に聞き取りが重要な時間には、聞きやすい席に配慮をする場合もあります。

先生の声が遠くなりすぎないように前の方の席で、かつ聞きもらしてしまった際に周りのお子さんの様子を見て行動しやすいよう、1番前の席よりも2列目あたりが良いかもしれません。

もし聞こえにくい場合には、席順を配慮してもらえることを提案しつつ、お子さん本人の希望を聞いてください。

(2)騒音を減らすための配慮

学校の中で、聞こえやすい環境をつくることは、全ての子どもたちにとってより良い環境を提供することになります。

聞き取りやすい環境を作るためヒント

  • 授業中は、窓やドアを閉める。
  • 先生の話を聞くときは、全体に静かにするよう促す。
  • 発言する生徒は手を挙げて一人ずつ、同時に発言しないようなルールを導入する。
  • 椅子や机の脚に、テニスボールやタオルをつけ、椅子の雑音を減らす。
重度難聴の友、支えるために…机の脚にボール・要約筆記
机の脚にテニスボール等をつけるとよい。
出典: 「重度難聴の友、支えるために…机の脚にボール・要約筆記

しかし、騒音を減らすと言っても限界があります。

片耳難聴のある子どもたちの聞き取りの様子は非常に個人差があり、多少の騒音があっても聞き取れるお子さんや、学校内での聞き取りにとても苦労しているお子さんもいます。

そんなお子さんの中には、騒音の中での聞き取りを改善するためのワイヤレス補聴援助システムを使用することが有効なお子さんもいるかもしれません。

また、難聴の方への支援として、情報の視覚化もあります。ただ、人による目で見る能力も様々なため、必ずしも全員に適しているとも言えません。

(3)気持ちへの配慮

個々のパーソナリティや年齢によっても異なりますが、片耳難聴をきっかけに悩むお子さんもいます。

片耳難聴の場合は、状況限定的な聞こえの困難という特性のため、手厚い支援をいつも必要としている訳ではありませんが、「何かあったときには、声をかけてね」と一度伝えておくと、良いでしょう。

また、聞こえないことは、いけないこと・隠すことではありませんが、個人的な事柄です。
例えば、席の配置や補聴機器を使う際に、クラスメート全体にも話をする場面があるかもしれませんが、本人と相談なく皆の前で先生から話すようなことは避けましょう。

障害や困りごとのある生徒の存在は、「問題」ではなく、多様な人がいることの証です。障害や困りごとのある生徒に理解を示すことは、「一人一人を大切にする」という教育理念そのものではないでしょうか。その様子を目にする他の生徒にとっても、「自分も大切にされるだろう」と安心感を感じることができます。

深刻になる必要はありません。ただ、少し頭の片隅に入れて関わりを持ってみてください。

参考文献

  1. 岡野由実,廣田栄子(2016)一側性難聴児の学校生活における聞こえの障害に関する事例的検討.音声言語医学,57(1), 64.

著者紹介