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片耳難聴だと困る場面

耳が2つあることで得られる効果(両耳聴効果)が得られないために、理論上、片耳難聴だと主に3つの場面で困ると言われています。

  1. 聞こえにくい方から話しかけられると分からない
  2. 騒がしい場面では聞こえにくい
  3. どこから声がするのか分からない

中でも一番困るのは、「騒がしい場面で聞こえにくい方から話しかけられるとき」と言われています1)

片耳難聴のある人にどのように困っているのか、片耳難聴者6名に自由に書いてもらいアンケートを作成しました。
そのアンケートにどれくらいあてはまるか、135名の片耳難聴者に回答してもらいました2)

頭がバリアとなって反対側の聞こえる耳に音が届きにくくなります(頭部陰影効果)。
聞こえにくい側の音が入りにくいことで、どんなふうで困っているのでしょうか?

難聴側からは聞き取れず、聞き直すのはほとんどの人が経験しています。

また、多くの人が、難聴側から話しかけられ聞こえず、聞こえたふりで対処していることも分かりました。

難聴側に相手がいても、そちらは聞こえませんが、反対の聞こえる耳側で会話などがあると気を取られる経験もよくあるようです。

会話だけでなく、日常的な場面では「寝ているときに聞こえる耳が下になっていて、目覚ましの音が聞こえない」という経験がある人もいました。

会反対に、聞こえないことが生きる場面もあり、「寝る時に聞こえる側の耳を下にすると静か」と、ポジティブに使っている人もいます。

2. 騒がしい場面では聞こえにくい

両耳聞こえることで雑音の中でも聞きたい音にフォーカスを当てることができます(カクテルパーティー効果)。しかし、片耳難聴ではその効果が得られないため、騒がしい場面での聞き取りが難しくなります。

騒がしい場面での聞き取りにくさは、片耳難聴の困りごとの中でも最も困る場面という意見が多くあります。

聞こえに問題がない人と片耳難聴の人で場面による聞こえ方を比較した研究があり3)、6%という少しの違に見えますが、体感としては大きな違いがあるようです。

「聞こえにくい方から話しかけられると分からないけれど、聞こえやすい場所をキープできれば何とかなる」、「どこから声がするのか分からないけれど、キョロキョロして自分の方を向いている人を探せば何とかなる」、しかし、「騒がしい場面はカバーのしようがないので一番困る」という意見もありました。

また、発症からの期間が長い方が騒がしい場面での聞き取りが改善する4)、片耳難聴のある人では騒がしい場面で聞き取っているときの脳が活動する場所が違う5)という研究報告もあり、騒がしい場面での聞き取りに脳がだんだん慣れてくるということが分かっています。

具体的には、騒がしい場面では、どんなふうに困っているのでしょうか?

雑音下の会話への苦手意識を持つ人が多く、「できれば話しかけないで欲しい」「話したいけれど、申し訳ない」と思う人もいました。

聞こえやすい場所取りは、ほとんどの人が意識しています。

自動車の運転では、左耳難聴の人が助手席側の声が聞き取りにくくなり、右耳難聴の人は助手席に座ると運転席の人の声が聞き取りにくくなります。

にぎやかな場所で聞き取れなかったために、相手を無視するような形になり、注意されてしまう経験をしたことがある人もいました。

多くの人が、聞き取りに集中するために疲れると感じています。

3. どこから声がするのか分からない

左右の耳から入ってくる微妙な音の違で、どこから音がするのが分かります(音源定位)。片耳難聴の場合は、この差が分からないため、音の方向が分かりません。

どこから音がするのか分からないことで、どんなふうに困っているのでしょうか?

多くの人が、遠くから名前を呼ばれて方向を探している間に、対応が遅れてしまう経験をしていました。

方向がわからないと、音の特定が出来ないこともあるようです。 

スポーツの経験がある人の中には、声や音の方向が分からずに困る経験をする人もいます。

遠くから声をかけるときには、手を振ってもらうなどすると分かりやすくなりますが、回答ではどちらでも良いという人も多くいました。

4. その他にもこんな場面で困る

電話や会話、音楽など、他にもどんな場面で困るのかを聞きました。

聞こえる耳と聞き手が同じ(左耳難聴で右利き、右耳難聴で左利き)だと、電話中のメモが取りにくい人もます。 

聞こえないことで、「相手に不快感を与えてしまうのでは」と不安になる人はとても多くいました。

聞き取りにくいために、会話に入ることを諦めてしまう経験も多くの人がしています。

意見が割れましたが、職業やアルバイト、趣味などの選択に片耳難聴が与える影響もあります。
片耳難聴だから「諦めた」と思うのか、片耳難聴でも出来ることを「自分で選んだ」と思うのか、捉え方の違いもあるようです。

片耳難聴を周りの人に伝えても忘れられてしまうのは、よくあることのようです。

複数のエレベーターがある場所で「ポーン」という音がなることで、どのエレベーターが到着したのかが分かるというのを知らなかった・・・などという声もありました。

片耳難聴では、ステレオで聞くことができません。ステレオを聞いてみたい、と思う人は沢山いました。

もう片方の耳が聞こえなくなる可能性を心配に思っている人も多くいました。

意見が割れましたが、片耳難聴を補うために他の感覚が敏感と感じている人は、多くはないようです。


今回のアンケートでは、多くの回答者が「5:非常にあてはまる」と答えた設問が多い結果となりました。片耳難聴のある人では同じような場面で同じように困っている、同じような気持ちを抱えているということが言えます。

皆さんも「あるある!」「わかる!」という設問はありましたか?
同じような気持ちを持っている仲間が沢山いる、ということが伝わればいいなと思います。

片耳難聴の困りごとに、どう対応したら良いか、片耳難聴者はどんな工夫をしているのかは、「片耳難聴者が生活の中で工夫していること」をご覧ください。

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出典・参考文献

  1. Giolas, TG., Wark, DJ.: Communication problems associated with unilateral hearing loss. J Speech Hear Disord. 32, 336-343 (1967)
  2. Reeder, RM.,Cadieux, J.,Firszt, JB.: Quantification of speech-in-noise and sound localisation abilities in children with unilateral hearing loss and comparison to normal hearing peers.Audiol Neurootol. 20,31-37 (2015)
  3. Gray, L.,Kesser, B.,Cole, E.: Understanding speech in noise after correction of congenital unilateral aural atresia: effects of age in the emergence of binaural squelch but not in use of head-shadow.Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 73,1281-1287 (2009)
  4. Propst, EJ.,Greinwald, JH.,Schmithorst, V.: Neuroanatomic differences in children with unilateral sensorineural hearing loss detected using functional magnetic resonance imaging.Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 136,22-26 (2010)
  5. https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology/52/4/52_4_195/_pdf/-char/ja

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