1. 片耳難聴と音楽の聴こえ方
片耳難聴の場合、片方の耳は正常に聞こえているため、音楽そのものを聴くことができなくなるということではありません。
片耳難聴を持つ人の中にも、音楽が好き・よく聴く・演奏をする人は大勢います。
著名人で片耳難聴を公表されている方の一部をご紹介します。
シンガーソングライターのしほりさん
『生まれつき左耳の難聴を持ちながら、右耳は天性の絶対音感を持ち、7歳のとき歌手になるため作詞作曲を開始』
(しほり – SHIHORI Singer Song Writer from Japan to NYC )
AAAの日高光啓さん
『先天性の障害が元々耳にあって。左耳が聞こえないというか変な感じなの、フィルターがかかってるような』
(「DAILY MUSIC presents SKY-HI公開取材」)
サカナクションの山口一郎さん
『僕、突発性難聴で片耳が聞こえないから、メンバーに頼ってきた部分があって…』
(SHOOL OF LOCK! UNIVERCTY『サカナクションの2017年、山口一郎の2017年を振り返る』)
堂本剛さん
『ライブをやるとか爆音にさらされるのが耐えられるかとなると、今の僕は残念ながら耐えられない』
(Kinki Kidsの堂本剛さんが突発性難聴の症状を激白「爆音耐えられない…」)
音楽の聴こえ
しかし、片耳が聞こえないことで、音楽の聴こえ方が異なる点があります。
- イヤホンやヘッドホンでステレオの聴こえを得られない
- 音の方向感を測れないため、立体的な感覚が損なわれる
- カクテルパーティー効果などの両耳聴効果が得らないため、細かな音の聞き分けが難しい
「モノラル」「ステレオ」とは
モノラル | 収録した音源を、単一チャンネルで(振り分けずに)再生する方法。 左右のイヤホンで聞くと、両方から同じ音源が再生される。 聞こえ方は、平面的と例えられる。 |
ステレオ | 収録した音源を、二つのチャンネルに振り分けて再生する方法。 左右のイヤホンで聞くと、それぞれで異なる音が再生される。 聞こえ方は、立体的と例えられる。 |
例)
右耳難聴の場合、右イヤホンのみに流れている音を認識できないため、
「音が流れなくなったと思ったら、聞こえない方の右イヤホンからは流れていた」
「イヤホンで聞いていたときと、スピーカーで聞いたときの音が違う(聞こえない方の耳の音がスピーカーでは聞こえる)」
といったことが起こります。
現在、音楽は一般的にステレオで収録されています。
その他には、「耳鳴り」や「補充現象(リクルートメント現象)」といった、難聴に伴う症状が強くある人もおり、思うように音楽を楽しめない..という声もあります。また、特に中途で聴力を失った場合には、聞こえていた時との差を大きく感じる方が多いようです。
「片耳難聴と音楽」に関する研究
ここでは片耳難聴者の音楽の感じ方・音楽活動への影響について報告した研究を紹介します。
(世界的に見ても、「片耳難聴と音楽」についての研究は多くありません)。
- イタリアの研究 (Collettiら,1988)
中等度以上の片耳難聴者について、音楽鑑賞に費やす時間が、健聴者と比較して少なかったという報告。 - 中国の研究 (Caiら,2016)
軽度~中等度の片耳難聴者は、音楽の「快さ」・「自然さ」のスコアを健聴者群と比べて低くつけるという報告。
この実験は、ステレオ音源を通常のステレオヘッドホンで再生して行われた。つまり、片耳難聴者が通常のステレオヘッドホンで音楽を聴く際の問題が示唆されている。 - イギリスの研究 (Meehanら,2017)
高度~重度の後天性片耳難聴者について、音楽の感じ方・音楽に関する習慣が影響を及ぼされるという報告。
難聴の発症前と比べて、発症後は音楽が「不快」・「不明瞭」・「不自然」なものになり、音楽を聴く頻度、音楽の楽しみや役割…といったことが損なわれ、レストラン等でのBGMが煩わしいものになる等があげられた。
2. 片耳難聴と音楽の楽しみ方