片耳難聴にも役立つ音響機器(骨伝導って?ほか)

2023年2月15日 − Written by ken_takaki

この記事では、イヤホンやスピーカーなどについて、よくある疑問へのお答えや、さまざまな豆知識をお伝えします!

目次

1.骨伝導と聞こえのしくみ
2.ワイヤレスイヤホン購入時に気をつけること
3.外の音も聞こえるイヤホンの種類
4.片耳難聴とリモート会議のコツ

1.骨伝導と聞こえのしくみ

近年「骨伝導は “鼓膜” に負担をかけないため、耳に優しい」という企業の宣伝を、よく見かけるようになりました。しかし、それは事実とは異なります。

イヤホンによる難聴は、「内耳(ないじ)」という「細胞と神経が音を処理し、音信号を脳に送る器官」がダメージを受けるのが原因で、骨伝導も「内耳」を介して音を届けているからです。

Nesnad, “Anatomy_of_the_Human_Ear_ja.svg”, Wikimedia Commons, 2009を改変

そのため、「骨伝導だから大丈夫」と大音量で聞いていると、気づかないうちに内耳にダメージを与えてしまう危険性もあります。
骨伝導であっても、適切な音量・使い方をするようにしましょう(参考:「聞こえる耳を大切にするために」

そもそも骨伝導とは?

「音の聞こえ方(ルート)」には上記のイラストのように2つあり、そのうちの1つが「骨伝導」です。「骨導」と言うこともあります。

  • 気導
    外耳~中耳~内耳を通して聞いている音。
    私たちはほとんどの音を、この気導聴力で聞いている。
  • 骨伝導
    主に外耳~中耳は通らず頭蓋骨から直接、内耳に聞いている音。
    頭を叩いたり、歯をカチカチ噛み合せたりするときにきこえる音。

骨伝導は、こめかみの部分などに装置を装着し、 その装置が骨に振動を伝えることで音を聴くことができます。 

骨伝導が聞こえるかどうかは、難聴となった原因の部位によります。
(ご自身の難聴の原因が分からない場合は、耳鼻科の聴力検査である程度は調べることができます)

  • 伝音難聴
    外耳・中耳に難聴の原因があるもの

    骨伝導では、難聴側の耳で聞き取れる
  • 感音難聴
    内耳以降に原因があるもの
    骨伝導であっても、難聴側の耳では聞き取れない
    もし聞こえる場合…
    ‐ 難聴側の耳に残っている聴力で聞いている
    ‐ 頭蓋骨などを介して、音が聞こえる側の耳に伝わっている
参考記事「オージオグラムの読み方」

いま販売されている「骨伝導イヤホン」は、「耳に入れるイヤホン」に比べると、出せる音量が小さいため、耳を痛めにくい設計になっています。

それでも、“イヤホン難聴” の原因部位となる「内耳」の構造は非常に複雑です。
一度傷ついた細胞は再生することができないため、気を付けましょう。

誤解されがちな「耳の仕組み」はこちら

●鼓膜

耳介から集められた音の振動を、内耳に伝える器官です。

鼓膜に穴が開いたりすると聞こえに支障を来たしますが、イヤホンの音量が直接その原因になることはありません。
また、鼓膜に穴が空いた場合も、自然治癒あるいは治療が可能です。

●外耳道

耳の入り口〜鼓膜までの部分を、外耳道と言います。

長時間イヤホンを耳穴に入れることにより、高温多湿になり傷がつき、菌が繁殖しやすくなると「外耳炎」という炎症を起こすケースもあります。
しかし、適切な処置をすれば治療ができ、難聴になることは稀です。

詳細「耳・聞こえのしくみ」

2.片耳難聴の人がワイヤレスイヤホン購入時に気を付けること

片耳難聴の場合、難聴側にイヤホンをつけても聞こえない人も多いですよね。
あなたは、片耳につける派ですか?両耳につける派ですか?

ここからは「ワイヤレスイヤホン」使用時に気をつけることを紹介します。


  • *ワイヤレスイヤホンとは
  • ケーブルを使わず、無線で接続するイヤホンのこと。
  • Bluetooth(ブルートゥース)という近距離無線通信技術が使われている。

(1)片耳派の人が気をつけること

「聞こえる片耳のみにつける」とき、ワイヤレスイヤホンには片方だけ(単独)では使えないものもあります。

中には、右側のイヤホンは単独で使えるけれど、
左側のイヤホンは、右側のイヤホンと一緒に使わないといけないものもあります。
  
▼下図:上の方式の場合

その場合、右耳難聴でイヤホンを左にしか普段付けない人は、
左側のイヤホンを付けただけでは音楽が聞こえず、右側のイヤホンも付ける必要がある…ということです。
     
左右それぞれ単独で使えるか、左右のどちらが単独で使えるかは、同じメーカでもモデルによって違うこともあります。

説明書をよく読み確認し、また中には試してみないと分からないものもあるため、実際にお店で試しましょう。

(2)片耳派でも、両耳派でも気をつけること

「接続しました」「電池残量が少ないです」といった案内が、音声でイヤホンから流れるものがありますが、
ワイヤレスイヤホンの中には、片側にしか案内の音声が聞こえない仕様のものもあります。

自分の聞こえる耳で、そういった案内が出るか、確認しましょう。

(3)スマホからの音声をイヤホンで聞くときに気をつけること

使用するアプリによって、片側からしか音声が流れないものもあります。
その音声が、難聴の耳に再生されても聞こえませんよね。

そういう時は、もともと左右の耳に別々に流れる音を混ぜ、「片側で両側の音声を聞こえる設定」に設定できます。

  • iphoneの設定方法
    モノラルオーディオをONにする:詳細
  • androidの設定方法
    モノラル再生をONにする:詳細

片耳でも使えるワイヤレスイヤホン商品例はこちら

3.外の音も聞こえるイヤホンの種類

片耳難聴に限りませんが、音楽などを聞く時にイヤホンで完全に耳を塞いでしまうと、周りから話しかけられても気がづけないことがありますよね。

そんなときは、以下のようなイヤホンが便利かもしれません。

「難聴のある人向け」というわけではなく、
両耳が聞こえる人にとっても、ランニング時など周囲の音にも気を付けながら使用したいシーンで利用されています。

対処法(1)
骨伝導ヘッドホン、オープンイヤホンなどをつける

耳穴を塞がずに音を再生できます。
イヤホンをこめかみに当てるものや、耳のくぼみに引っかけるように装着する形があります。

耳穴に入れるものではありませんが、スピーカと違い、再生された音は自分にしか聞こえないようにデザインされています。

商品例はこちら

対処法(2)
外音取り込み機能があるイヤホン

「外音取り込み」とは、イヤホン・ヘッドホンに内蔵するマイクを使い周りの音を集音する機能です。

イヤホンを装着したままでも、周囲の環境音が聴き取れます。
(その他に「アンビエントモード」「トークスルー」「集音モード」と呼ばれることがあります)

商品例はこちら

対処法(オマケ)
両耳にヘッドホン/イヤホンをしてしまう

ちょっとした “片耳難聴テク” かもしれません(笑)

実際には聞こえていなくても、両耳に装着することで、
相手が自分が片耳難聴であることを知らなくても、「音楽を聞いているから聞こえていないんだ」と、周りの声が聞こえないことについては察してもらうことができます。

4.片耳難聴とリモート会議のコツ

リモート会議(オンライン会議)を行う人も増えたのではないでしょうか。

通信環境によっては、音が途切れ途切れになってしまうなど、
片耳難聴の人のみならず、両耳が聞こえる人もコミュニケーションしにくい…という声を聞きます。

ここでは、特にまだ不慣れだと感じている方に「音環境で改善できること」を紹介します。

聞き取りにくさの原因と対策(例)

  • 相手方によるもの
    ⁻ マイクの性能が悪い
    ⁻ 残響が長い部屋にいる
    → 良いマイクを使用してもらう
  • 自分によるもの
    ⁻ スピーカーの音質が悪い
    → 良いスピーカーに買い換える
    → イヤホンで聞き取る

「良いマイクやスピーカー」といっても、数千円程度で電化製品店などで購入できます。

注意点として、外付けのマイクやイヤホンなどを使うとき、
「Bluetooth接続」の場合、無線での接続であるために接続が不安定になったり、タイムラグが生じる可能性にも気を付けましょう。

複数人でのオンライン通話時

また、複数人で行うオンライン通話では、
1つのパソコンなどとマイクスピーカーを接続し、そこで音の入出力を行う「マイクスピーカー(スピーカーフォン)」を使用すると便利です。

パソコンに内蔵されているマイクの多くは、
集音性能が低く、マイクの指向性(音をどの方向から拾うか)が狭いため、
マイクがカバーしていない位置にいる話者の声はしっかりと拾うことができません。

パソコンに内蔵のものよりも「ノイズキャンセル機能」「エコーキャンセル機能」が優れているものが多く、よりクリアに音を聞くことができます。


  • 参考記事:「オンライン通話のコツ」
    *ノイズキャンセル機能
  • 話している人以外の音(雑音)を低減する機能
  • *エコーキャンセル機能
  • スピーカから出力された音が、壁などに反射して再びマイクで集音されてしまう現象(エコー)を防ぐ

音質がクリアに聞こえることは、誰にとっても快適なはず。
利用するお互いが協力していくことも大切ですね。

著者紹介