1. 概要
心身の機能障害などのある方の、教育・就労など日常生活場面での困りごとの解決・軽減のために必要な調整を、
学校や職場などが行うよう努める「合理的配慮(ごうりてきはいりょ:Reasonable accommodation)」の考え方があります。
個人の心身機能障害に問題があるのではなく、社会の制度や環境との間で障壁が生まれ、
その人の生活に障害をもたらしているとする、障害の「社会モデル」という考え方を反映しています。
近年、さまざまな障害の有無にかかわらず、誰もが過ごしやすくなるように法制度も整備されてきました。
2. 条件
- 障害者手帳の有無に関わらない
- 障害および社会的障壁(周りの環境、人々の価値観など社会の環境がバリアとなるもの)によって、
継続的に日常生活・社会生活に相当な制限を受ける状態にある人
3. 具体例
①学校生活で、聞こえやすい環境を整える
・座席の変更
・騒音の軽減
②リスニング試験
・座席の位置を変更
・面接試験で大きな声で話す
・イヤホンを使用する場合、小耳症などで耳に入らない場合にヘッドホンを使用する
- 例)主な英語リスニング試験について
- ・TOIEC プライマリサポート
- スピーカーによる実施。座席を近くに変更、イヤホン/ヘッドホンの持参申請可能。
- ・日本英語検定
- スピーカーによる実施。座席を近くに変更申請が可能。
- *大学入試センター試験
- ・個別音源機器(イヤホン)による実施。音源はモノラル。イヤホン/ヘッドホンの持参申請可能。
③職場
・通院のため休みを調整する
・適性に応じた業務割り振りを行う
4. 手続き方法
それぞれの場所・状況によって異なります。
基本的には下記のような流れで、実施を依頼する各団体機関に直接相談します。
特に、資格試験や入試試験では、事前申請や診断書が必要な場合もあります。
①希望を個別に相手(学校・職場・事業所など)に申し出る
②具体的な方法や相手側に過度な負担がないかなどを相談する
③必要な配慮・調整が行われる
(調整・配慮が現実的でないなど相手側に過度の負担がある場合は、やむを得ず実施できない場合もある)
片耳難聴の場合、「合理的配慮」という言葉を使わなくても、
その都度必要なちょっとした配慮を日常の中で自然とお願いしている方が多いかと思います。
それが、結果的には「合理的配慮」と呼ばれるものだったということになります。
ただ、もし不当に差別や依頼を受け入れてもらえないなどがあった場合や
どのように協力を依頼するか悩んだ場合には、以下のような機関で相談してみるのもよいかもしれません。
合理的配慮の依頼で困ったときの相談先の例
- 保育園・幼稚園などで
ろう学校が地域支援の一環として行う「乳幼児相談」
片耳難聴に専門の相談窓口を設けているところは多くありませんが、
聞こえに関する知見を活かして、ろう学校の教員などが対応してくれます。 - 小学校・中学校・高校などで
各学校で「特別支援教育コーディネーター」という役割をもつ
教員や養護教諭、特別支援学級担当者などがいます。
専門的な知識を有するとは限りませんが、校内での連絡調整などを担います。 - 職場で
直属の上司に相談する方が多いです。
また、必要に応じて人事担当者や、企業内の「産業医」や「産業保健スタッフ」などに相談ができます。
ほか、さまざまな相談先リストはこちら。
詳細・参考資料
内閣府 障害者差別解消法リーフレット『「合理的配慮」を知っていますか?』
愛媛県資料「バリアフリーマニュアル 障害の社会モデル」
- *根拠法: 「障害者差別解消法」