合理的配慮

Written by 麻野 美和

1. 概要

心身の機能障害などのある方の、教育・就労など日常生活場面での困りごとの解決・軽減のために必要な調整を、
学校や職場などが行うよう努める合理的配慮(ごうりてきはいりょ:Reasonable accommodation)」の考え方があります。

個人の心身機能障害に問題があるのではなく、社会の制度や環境との間で障壁が生まれ、
その人の生活に障害をもたらしているとする、障害の「社会モデル」という考え方を反映しています。

近年、さまざまな障害の有無にかかわらず、誰もが過ごしやすくなるように法制度も整備されてきました。


  • *2016年 行政機関などは義務、2024年 民間事業者も「合理的配慮の提供」が義務化。

2. 条件

  • 障害者手帳の有無に関わらない
  • 障害および社会的障壁(周りの環境、人々の価値観など社会の環境がバリアとなるもの)によって、
    継続的に日常生活・社会生活に相当な制限を受ける状態にある人

3. 具体例

①学校生活で、聞こえやすい環境を整える

・座席の変更
・騒音の軽減
・集団指導時など聞こえにくい環境では、マイクを使用してもらう

②リスニング試験

・座席の位置を変更
・面接試験で大きな声で話す
・イヤホンを使用する場合、小耳症などで耳に入らない場合にヘッドホンを使用する


  • 例)主な英語リスニング試験について
  • TOIEC プライマリサポート
  • スピーカーによる実施。座席を近くに変更、イヤホン/ヘッドホンの持参申請可能。
  • 日本英語検定 
  • スピーカーによる実施。座席を近くに変更申請が可能。
  • 高校入試
  • 国際科などで英語面談がある場合、話し方の配慮が可能。
  • 大学入試センター試験 
  • 個別音源機器(イヤホン)による実施。音源はモノラル。イヤホン/ヘッドホンの持参申請可能。

③職場

・通院のため休みを調整する
・適性に応じた業務割り振りを行う
・名札に、難聴であることを記載させてもらう


  • ・詳細:「周りの人が職場でできること」
  • ・合理的配慮の提供に要する費用の助成金
  • 2024年に事業者へも義務化されたことから、自治体によっては申請により企業や個人負担費用のサポートや、理解促進のための研修や相談を無料で実施している。

4. 手続き方法

それぞれの場所・状況によって異なります。
基本的には下記のような流れで、実施を依頼する各団体機関に直接相談します。

特に公的な資格試験や入学試験では、「事前申請や診断書」が原則です。

学校の入試では、「普段の学校生活での配慮実績」が求められることもあります。
なお、申請時期は試験より早い時期に行うため、余裕をもって準備することが大切です。

  1. 希望を個別に相手(学校・職場・事業所など)に申し出る
  2. 具体的な方法や相手側に過度な負担がないかなどを相談する
  3. 必要な配慮・調整が行われる
    (調整・配慮が現実的でないなど相手側に過度の負担がある場合は、やむを得ず実施できない場合もある)

本記事内のリンクは参考情報です。申請を検討される方は、必ず最新情報にあたってください。

片耳難聴の場合、たとえば学校入試の際に合理的配慮の申請(席位置の配慮など)を全員がしている訳ではありません。
保護者は、お子さんの様子や意向を汲み、学校にも確認をして検討しましょう。

また普段の生活であれば、「合理的配慮」という言葉を使わなくても、
その都度必要なちょっとした配慮を自然とお願いしている方が多いかと思います。

それが、結果的には「合理的配慮」と呼ばれるものだったということになります。

ただ、もし不当に差別や依頼を受け入れてもらえないなどがあった場合や
どのように協力を依頼するか悩んだ場合には、以下のような機関で相談してみるのもよいかもしれません。

合理的配慮の依頼で困ったときの相談先の例

  • 保育園・幼稚園などで
    ろう学校が地域支援の一環として行う「乳幼児相談」
    片耳難聴に専門の相談窓口を設けているところは多くありませんが、
    聞こえに関する知見を活かして、ろう学校の教員などが対応してくれます。
  • 小学校・中学校・高校などで
    各学校で「特別支援教育コーディネーター」という役割をもつ
    教員や養護教諭、特別支援学級担当者などがいます。
    専門的な知識を有するとは限りませんが、校内での連絡調整などを担います。
  • 職場で
    直属の上司に相談する方が多いです。
    また、必要に応じて人事担当者や、企業内の「産業医」や「産業保健スタッフ」などに相談ができます。

ほか、さまざまな相談先リストはこちら。

詳細・参考資料

内閣府 障害者差別解消法リーフレット『「合理的配慮」を知っていますか?』
愛媛県資料「バリアフリーマニュアル 障害の社会モデル


  • *根拠法: 「障害者差別解消法」

著者紹介