片耳難聴の人は約30万人以上いると考えられ、働く職種・業界も様々です。
片耳難聴は、普段の会話はさほど問題ないため
外見からは分らず、本人から「片耳が聞こえないんです」と言われなければ
気づかないことがほとんどだと思います。
また、「片耳に難聴がある」という事実だけを告げられても、
それがどういう聞こえの状況なのか、どう接して良いのか…
周りの人は、分からないかもしれません。
この記事は、
同じ職場に片耳難聴のある人がいるけれど、
どうやって接したらよいのか、どんなふうに配慮したらいいのか分からない…
という同僚の皆さんへのヒントを紹介します。
- ・片耳難聴とは:
- 片耳は正常聴力で、もう片方の耳に軽度~高度の難聴があり、聞こえにくい/聞こえない状態のこと。
医学的診断名では、「一側性難聴」、 - 難聴側の聴力が重度や聾(全く聞こえない)場合には「一側聾/片側聾」と使うこともある。

片耳難聴が聞き取りにくい場面
片耳のみ難聴がある場合には、普段の会話はさほど問題なく聞き取れます。
ただ、特定の場面では聞き取りにくさが生じ、
主に以下の3つの場面で困ることが多いと言われています。
(参考:「片耳難聴だと困る場面」)
- 聞こえにくい方から話しかけられると分かりにくい
- 騒がしい場面では聞こえにくい
- どこから音がするのか分からない
普段は、問題なく聞き取れるのに、特定の場面で聞こえにくくなるのは、
周りの人にとっても、本人にとっても理解しづらいことかもしれません。
仕事上では、具体的にどのような状況が考えられるでしょうか。
聞こえの場面別にご紹介します。
1. 聞こえにくい方から話しかけられると分かりにくい

具体例
①座席の位置によって聞こえにくい
・普段のオフィスの座席では、
聞こえにくい側の席に座っている人の指示が聞こえにくいときもあるかもしれません。
・食事場面や、移動時の車や電車の中なども、
座席の場所によっては聞き取りにくくなります。
・上座や下座があるのは分かっているけれど、聞き取りやすい席があります。
・全く聞こえないこともないけれど、
聞こえにくい側に意識を向けるのは、実は疲れたりもします。
②電話中の指示が聞き取れない
・聞こえる耳で電話の対応をしている最中に、
聞こえない耳の方で指示を出されても聞こえないことがあります。
対応の例
- オフィス等の座席を
聞こえる側に人が来るように、端の席にする - 電車や車の中の席は、できれば聞こえる側に座る
- 電話中の指示は、メモに書いて渡す
- 無礼講の席では、可能な限り聞こえやすい場所を選んでもらう
2. 騒がしい場面で聞こえにくい

両耳聞こえる人でも、騒がしい場面では聞こえにくくなると思います。
それ以上に、片耳に難聴があると騒がしい場所が苦手になります。
これには「両耳聴効果」が得られないからという理由があるのです。
(詳細:「片耳難聴が聞こえにくい理由」)
具体例
①電車や車の中の会話
②工場や作業場など機械音がする中での会話
③飲み会や宴会、立食パーティなどでの会話
④窓口での接客など、複数の人の声が混ざる場所での声
⑤音が反響する部屋での会議や講演の声
対応の例
- 聞こえる耳の方から話しかける
- 可能な限り近づいてから話す
- 騒音が大きすぎて聞こえなければ、
紙に書いて教える、
もしくは、後で静かな場所に移動したときに教える
周りの騒音の大きさにもよりますが、
「うるさいところが苦手」という片耳難聴のある人は少なからずいます。
そのことを周りの人に知っておいてもらえるだけでも、安心感が違うかなと思います。
また、騒がしいところで頑張って神経を集中して聞き取ろうとすると、とても疲れてしまいます。
適宜、静かなところで耳を休めることも必要な場合もあります。
3. どこから音がするのか分からない

これにも両耳聴効果が得られないからという理由があります。
(詳細:「片耳難聴が聞こえにくい理由」)
具体例
①遠くから呼ばれても気づかない
②電話がどこで鳴っているのかわからない
③機械音が鳴ったとき、何の機械が鳴っているのかわからない
④音の場所を探すのに時間がかかるため、対応が遅れることがある
対応の例
- 呼んだ後にキョロキョロしていたら、
手を振ってサインを送ったり、「右後ろだよ」など場所を伝える - 音の場所を探していたら、どこからの音か教える
- ある程度は対応が遅れることを許容する
その他にも…
他のことに集中していると聞きもらすことがあります。
これは片耳で聞くため、聞くことに注意を要し、注意していないと気付かないことがあります。
特に何か作業に集中していると、自分に話しかけられている気配にも気づきにくいことがあります。
そんなときの対応として、
- 名前を呼んでから話しかける
- 肩をポンと叩いて注意を向ける
- 返事や顔が向いてから話しかける
中には、難聴があるなら補聴器を付ければ良いのでは?
とアドバイスを受ける人もいますが、
補聴機器によって片耳難聴の聞こえの問題を全て解決することは難しいのです。
(詳細:「片耳難聴に使える補聴機器」)

ここでご紹介したことは、片耳難聴の聞こえにくさの全てではありません。
個人個人によって、聞こえにくさの程度、置かれている状況、感じ方は様々です。
聞こえにくさが本人の性格や態度の問題ではなく、
片耳難聴のためと理解していただくことで、
片耳難聴のある人も、その周りの人も過ごしやすい環境になればと思います。
- 片耳難聴と就労上の制度:
・「障害者雇用」 - 就労機会や経済的自立が難しい状況に置かれた障害を持つ人の雇用を確保するための制度。
障害者手帳を持つ人を対象にしているため、片耳難聴には適用されない。 - ・「障害者手帳」
- 身体機能に障害を持つ人が生活に必要な援助を受けるために、任意で取得する証明書。
- 聴覚機能の障害で対象となるのは、両耳難聴で「片方の聴力レベルが90dB以上で、もう片方の耳も50dB以上」の場合。
- ・「合理的配慮」
- 2016年施行された「障害者差別解消法」の「合理的配慮」は、
- 障害者手帳の有無にかかわらず、職業上に相当の困難がある人が対象。
(詳細:「片耳難聴が利用できる福祉制度」) - (詳細:「片耳難聴が利用できない福祉制度」)
