親との関わり。片耳難聴を持つ本人の声

2020年7月16日 − Written by きこいろ編集部

きこいろには、お子さんが片耳難聴の親御さんからの声も多く寄せられています。

「子どもが片耳難聴と分かったけど、どうするのがよいだろう?」
「心配だから片耳難聴のことを子どもと話したいけど、本人はあまり話したがらないようで…」

特に、2000年以降は「新生児聴覚スクリーニング検査」により、生まれてすぐ難聴であることが分かるようになりました。妊娠・出産という大きな体験の渦中にいるご両親にさらに戸惑いがあったという相談も寄せられています。

ご本人もそれぞれであるように、ご家族の思いや状況も人それぞれ。

今回は、そんな「片耳難聴児・者とその家族」にまつわるエピソードを一例としてまとめました。
親の声」はこちら。

この記事では、片耳難聴を持つご本人からの体験談を紹介します。

家族とどのような関わりがあり、良かったと感じているご家族の関わり方など、10代~40代の約20名の方にご回答いただきました。

男の子と手をつなぐ人

片耳難聴について話す?

家族(特にご両親)と片耳難聴について話しますか?という質問をしました。

回答は「日頃から困ったことを話す」「片耳難聴になった当初は話したが、今は話さない」「話しにくくて話さない」と三者三様でした。

家族と話す

  • (男性 40代 おたふく風邪による片耳難聴)
    5歳で片耳難聴になってから、たびたび話していた。
    音の方向が判らないとか、ステレオが聞こえないとか、聞こえる耳を下にして寝ると雑音が消えて眠りやすいとか。
    話をすると自分でも客観的にとらえられるので、タブーにするよりも話した方が良いと思う。
  • (女性 10代 突発性難聴による片耳難聴)
    配慮してほしいことは積極的に言うようにしている。
    以前は聞こえなくて「え?なに??」と言うと「聞こえないなら、もういい」と言われたが、「それ傷つく」と言うと繰り返し言ってもらえるようになった。
    片耳難聴になったときも、弟が小耳症で片耳が全く聞こえないため親は動揺はしていなかった。
  • (男性 20代 生まれつきの片耳難聴)
    子どもの頃から話している。
    「どうして聞こえないの?」と聞いて「生まれつきの病気なのよ」と。「僕は右耳が聞こえないので、左耳から話してください」と人に伝えるための練習も一緒にした。
    今は、就活の時期だったので心配して困ることはないか?と聞いてくれた。
    自分は片耳難聴をポジティブに捉えているが、親の心配を安心させてあげるのも子どもの役割かなと思っている。
  • (女性 10代 生まれつきの片耳難聴)
    学校での席・リスニングの配慮やその他支障のあることを共有している。
    そうじゃないことは話そうとは思わない。話したところで苦しみをわかってもらえるわけでもないから。
    親以外の家族にも伝えているが、関心は薄め。祖父母には、学校の成績や素行が孫世代の中でもいい方なのであまりハンデとして気にされていない気がする。あるいは忘れられている可能性も…。

話すかどうかやその内容も、片耳難聴になったときの年齢や、もともとのご家族との関係性にもよるかもしれませんね。

家族とは話さない

  • (男性 30代 成人後に突発性難聴による片耳難聴)
    現時点では、話す必要はない。
    片耳難聴について大体のことがわかり、症状も変わらないため。
  • (女性 40代 子どもの頃からの片耳難聴)
    親とは、話す機会が無いので話さない。
    話されても困ると思う。だいぶ前に聞こえない原因を聞いてみたが「よくわからない」と言われて終わった。親からの配慮も、あまり無い。
    並んで歩くような場面で自分が聞こえる側に行くと「あ、そうだったね」と気付く程度。
  • (女性 40代 生まれつきの片耳難聴)
    聞こえづらさで嫌なことがあっても相談は出来なかった。
    兄が同じく片耳難聴で、新生児スクリーングを産まれて直ぐに行って分かり「やはりそうか…。」くらいだったそうだが、父は、音楽が大好きな人だったのに兄が先天性の片耳難聴だと知り「この子は、一生モノラルの世界で生きていくのか…」と自分を責め、集めていたオーディオ機器を捨てたと聞き、いたたまれない気持ちになったから。
    自分が親元を離れ自立してからは、意を決して話してみた。基本的には良く話をする愛情深い家族ではあったが、やはり親はまだ複雑なよう。
  • (女性 20代 おたふく風邪による片耳難聴)
    片耳難聴のこともそれ以外のことも話さない。
    親と仲が悪いため。家族なんだから分かって欲しいと思うし、話せたらよかったと思うが、家族も他人。家族以外にも分かってくれる人はいるからそれでいいと思うようになった。
  • (女性40代 生まれつきの片耳難聴)
    家族でも話す必要はないと思っている。
    やはり当事者しか分からないだろうと思う。でも、本人は気にしなくても家族は動揺するから家族のフォローがある方が良いと思う。
家々を上から撮影した様子

どんな対応が良かった?

家族にして貰って良かったこと/して欲しくなかったこと、どんな対応をして欲しいかを尋ねました。

主に「説明して欲しい」「自然に接して欲しい」「聞こえにくさに協力して欲しい」といった回答がありました。

説明して欲しい

  • (女性 10代 生まれつきの片耳難聴)
    まずはきちんと説明して欲しかった。
    なぜ難聴なのか、いつ聞こえなくなったのか、手術・補聴器の選択肢はあるのかを全く説明してくれなかったから。理解して、自分の中で咀嚼できるまで寄り添って欲しかった。
    家族からの配慮については、聞こえが悪化しないようにと気を配られているが以外はないが、座席も自分で都合のいいようにするし、聞こえなかったらどこが聞こえなかったのかを言って確認している。それも家族に限ったことではないく、「他人と話す時に気をつけないといけないことに気づいて練習する」という意識がある。
  • (女性 40代 子どもの頃からの片耳難聴)
    子どもの頃に運動関係の習い事をさせるのに、
    「片耳だとどんな競技がいいか」と親は悩んだらしい。
    最近になってその話を聞いて、勝手に考えずに自分にも話してくれたら良かったのにと思った。
  • (女性 40代 突発性難聴による片耳難聴)
    成人後に発症。
    自分も途方に暮れているのに、実家の母に半泣きで「治るのか?」と聞かれた。泣きたいのは私なのに、母をなだめながら「私の方が慰めて欲しいんだけど!」と思った。
    自分で自分の病気を調べるのは辛いので代わりに調べて欲しかった。

自然に接してくれたこと

  • (女性 10代 生まれつきの片耳難聴)
    ほとんど制限がないのは良かった。
    もともと自分のやりたいようにすればいいという家庭だから。
  • (女性 20代 生まれつきの片耳難聴)
    特別扱いされなかったこと。
    同情されたり、過保護にされたら逆にコンプレックスになると思うから。
  • (男性 40代 おたふく風邪による片耳難聴)
    過干渉なことを言われなかったのが良かった。
    「片耳難聴だから進路を変えた方が良い」といったことを言われたら困ったと思う。

子どもにとって、親や周りの大人の影響は大きいものですね。

聞こえへの協力

  • (男性 40代 おたふく風邪による片耳難聴)
    特別の配慮はお願いしていないが、
    家族には「片耳が聞こえないからね」とわかってもらっているため、話しかけられた内容が分からず聞き返しても、嫌な顔せず何度も話してくれ助かっている。
    自分自身は片耳難聴を大事には考えていなかったので、メンタル面では特にサポートはそれほど必要ではなかったと思う。
  • (女性 10代 生まれつきの片耳難聴)
    配慮は特に何もしていないと思う。
    親の声が聞き取りづらいときは、口には出さず生返事をしてしまうのも結構ある。
    補聴器を付けたいと思うが、親は効果がないと思っているため知識を付けてほしいと思う。
  • (女性 10代 突発性難聴による片耳難聴)
    学校へ問い合わせてくれたこと。
    受験の時期になったためだったため、入試の席の配慮をしてもらえるよう高校に問い合わせてくれたのが良かった。
    不要な配慮は、ただ声を大きくすればいいと思っていてそれが聴覚過敏で音が痛く感じる。
  • (男性 30代 成人後に突発性難聴による片耳難聴)
    大人になってからだったからか特筆すべき反応はなかった
    片耳難聴により会話がしづらいことを理解してもらえないのは困った。
    聞き取りやすい静かな環境を作れるよう協力して欲しかった。家庭内での会話をする際は、自分でよく聞こえる位置を取っている。

必要な配慮や、どうして欲しいかは子どももそれぞれですが、まず何より「愛情」を感じられたことが大切と挙げてくれた人もいました。

愛情を感じたこと

  • (男性 30代 子どもの頃からの片耳難聴)
    いつも忙しい親が仕事を休んで病院に連れて行ってくれたり、
    関心を自分に向けて貰えたのが嬉しかった記憶がある。片耳難聴以前に、家族内に問題があり親はそれどころではなかったから。
  • (女性 40代 生まれつきの片耳難聴)
    とにかく沢山の愛情を注いでもらった。
    厳しい親だったが、大人になってから本当に感謝している。自己肯定感がどうやら人より高いのも親の無性の愛のお陰だと思う。
    親は聞こえのことで子どもに相談されたら、ただただ聞いてあげるだけでいいと思う。五体満足で産んであげられなくてごめんと謝られるのは、子どもは辛いと思う。

赤ちゃんの手

きょうだいとのエピソード

両親だけでなく、きょうだいとの関わりについてもこんな回答がありました。

  • (女性 10代 生まれつきの片耳難聴)
    10歳未満の弟に、いつ打ち明けるのが良いかと考えている。
  • (女性 10代 生まれつきの片耳難聴)
    きょうだいにも伝えてはいるが「ふーん、で?」といった反応をされた気がする。
    たまに耳について聞かれることがある程度。
  • (男性 20代 生まれつきの片耳難聴)
    きょうだいも普通に知っていて、ごく普通に一緒に過ごしてきた。
    自分でも聞こえないときは聞こえないと言うし、それで喧嘩になったこともない。親からも生活の中で聞こえなかったときに「生まれつき聞こえないから、こっちから話して」と伝えていたよう。
  • (女性 10代 生まれつきの片耳難聴)
    私が難聴だとわかってからも、下の弟妹もおり、育てるのに必死で大変だったと思う
    下の子たちは色々と問題が出始め、それにかかりっきりな部分もあったから。
  • (女性 40代 子どもの頃からの片耳難聴)
    小さい頃、姉に何度も聞き返すと嫌がられた。
    聞こえたフリをしたら「聞いてない」と怒られた。「どうせ聞こえないし」と不貞腐れたら「開き直るな」と結局怒られた。
    全く配慮されず当時は酷いなーと思ったが、姉には片耳の不便さはわからなかっただろうし、ある意味「対等な存在」として扱ってもらえたお陰で鍛えられた。自分なりの対処法を身に付けることができた。家庭の外に出た時にも生かせたので、今から思えば感謝している。

聴覚障害のある兄弟姉妹がいる「聞こえる兄弟姉妹」をSODA(ソーダ:Siblings Of Deaf Adults/Children)といいます。

今後、片耳難聴を持つ方の兄弟・姉妹にもエピソードを聞いてみたいなと思いました。

子どものシルエット

「片耳難聴児・者と家族」をテーマに、体験談のまとめでした。
いかがでしたか?

聞こえ方いろいろ、家族もいろいろ。

親も子どもも周りの人も、一緒に考えていければいいなと思います。

今後もエピソードがありましたらお寄せください。皆のシェアが、誰かのヒントになるかも知れません。

「確かに!」「自分の場合はこうだな」など、感想も@kikoiroまでどうぞ。

アンケートにご協力くださった皆さん、貴重な体験を共有いただきありがとうございました!

今後も多様でリアルな声を、皆でシェアしていきましょう。


  • ※片耳難聴とは:
  • 片方の聴力は正常。もう片方の耳が、軽度~重度の難聴(聞こえにくい・聞こえない)がある状態。難聴だけでなく、めまい・耳鳴りの有無、その他の個人・環境の状況によっても困りごとや必要な対応はそれぞれ。
  • ※募集方法:
  • Twitterきこいろアカウントへの掲載・きこいろ会員メルマガへの記載。Googleフォームを利用して募集(2020/04/03~04/14)回答は、文体や表記の統一・内容に差し支えない範囲で説明文の追加等を行った。

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