親として。片耳難聴を持つ子どもとの関わり

2020年7月10日 − Written by きこいろ編集部

お子さんが片耳難聴を持つご両親の体験をご紹介します。

お子さんの片耳難聴が分かったときの思いや、その後の変化など、10名の回答を一例としてまとめました。

特に、2000年以降は「新生児聴覚スクリーニング検査」により、生まれてすぐに難聴であることが分かるようになりました。妊娠・出産という大きな体験の渦中にいるご両親にさらに戸惑いがあったという相談も寄せられています。

ご本人もそれぞれであるように、ご家族の思いや状況も人それぞれ。
お子さんとの関わりのヒントになれば幸いです。

「親との関わり。片耳難聴を持つご本人の声」はこちら。


  • ※片耳難聴とは:
  • 片方の聴力は正常。もう片方の耳が、軽度~重度の難聴(聞こえにくい・聞こえない)がある状態。原因は、先天性や後発性など様々。
お父さんお母さんと子ども

1. 片耳難聴が分かったとき

お子さんの片耳難聴が分かった当時のお気持ち、家族が困ったことや助かったことがあるかを尋ねました。

今回のアンケートでは、当初は突然のことで驚き、情報を求めたり人に相談した、そして徐々に知識を得たり、お子さんの成長の様子を見て安心するようになった…という人が多いようでした。

特になにもしなかった

  • (50代の父親. 子ども大学生 子どもの頃からの片耳難聴)
    中学校の検診で再検査となった。
    気づいていなかったし、まさかと思った。
    本人は「そう言えばそうだ」とあまり気にしていない様子だったし、中学生だったこともあり、こちらも深刻になり過ぎずいつも通りに振る舞ったと思う。「片耳が聞こえるから大丈夫」と言われ、そうだなと気を取り直した。
    分かってすぐ本人と話し、学校の先生に伝えたくらいで特別なことはしなかった。
    無事に過ごす様子を見て安心したが、息子なりに苦労もあっただろうと、振り返ればもっと気遣うべきだったのか。でも、重々しく説明されるのも気が滅入ると思う。

親御さんのお気持ちや対応も、お子さんご本人の年齢・状況にもよって変わるかもしれません。

友達に相談した

  • (30代の母親. 子ども0歳 生まれつきの片耳難聴)
    自分は結構ポジティブで楽観的な方で、
    切り替えて前向きに考えた方が子どものためとも考えたが、当初は気持ちの切り替えをするのに時間が必要だった。
    これからどうしよう。聞き取りにくいってしんどいだろうなぁ。なぜだろう、理由が知りたい。お腹に子どもがいた10ヶ月の間にどう成長してきたのか見てみたい…など色んなことを考えた。
    「その感情を押し殺さないでもいいよ」と自分に言い聞かせていた。
    友達に相談した時に、片耳難聴についてのエピソードを話し、前向きに励ましてくれたのが心の支えだった。「知り合いで片耳難聴の人いるよ!」と何人にも言われました。あぁ、意外と多いんだなぁ!と感じた。
  • (30代の母親. 子ども5歳 生まれつきの片耳難聴)
    早産で小さく生まれた息子はNICUに入っていた。
    主治医に新生児聴覚検査の結果を伝えられたが、何も考えられず、どうしたら良いのか分からず「はい」としか答えられなかった。周りに片耳難聴の知り合いもおらず、とにかく不安だった。
    高校の先生をしている友人に相談したところ、教え子に片耳難聴の子がいて吹奏楽部で頑張っていると教えてもらって勇気が出た。
    友達から嫌な事を言われたりしないか心配しているが、息子を見ているといつもこちらが元気付けられる。息子が笑顔でいてくれたら、それだけで良いと今は感じている。

相談できる相手がいるのは、とても大事ですよね。

情報を調べた・相談した

  • (40代の母親. 生まれつきの片耳難聴)
    治療ができないと聞き、この先の成長が心配だった。
    片耳難聴について文献や書籍、ネットの情報など片耳難聴の知識を身につけないといけないと思い、調べた。情報を得たことで、心構えができたようで特に大きな困りごとはなかった。
    ろう学校でおこなっている聞こえの相談にも行った。実際は両耳難聴の方向けのサポートがメインだったが親身に対応してくれ良かった。
    成長の様子や大きな困りごとがまだ起こっていないため、当初より親自身の気持ちや心も安定している。
  • (母親.子ども3歳 生まれつきの片耳難聴)
    新生児聴覚検査で分かった。
    初めは羊水が残っているからかもと言われて気にしていなかったが、ABR検査の結果で難聴の疑いと診断された。子どものこれからを考えると涙が止まらなかった。わからない事だらけで先生からの説明も耳に入らなかった。
    ろう学校の先生とお話しする機会があり、実際に難聴の子どもと関わる先生からの言葉は有難いし参考になる。ただ、片耳の場合となるとどこまでフォローしたらいいのか、保育園の先生方も手探り。
    実際に子どもがどの様に聞こえているのか分からず、気持ちをわかってあげられないのが不安。
  • (母親. 子ども小学1年生 生まれつきの片耳難聴)
    医師から「片耳が聞こえるから大丈夫」と言われたが、
    何をしてあげたらいいのか分からなかったし先が見えず不安だった。
    健診時、保健師さんに精密検査の結果を伝えると、聞こえの教室を紹介してくれた。難聴のことを理解し始め、徐々に前を向けるようになった。
    ただ、聞こえの教室では片耳難聴の子どもがおらず、先生方もまぁ片方聞こえているから大丈夫…という態度で、理解が出来ているのか不安だった。
    情報が欲しかったが、ネットで情報を得るのは怖くて出来なかった。

  • ・聞こえの教室(難聴・言語通級指導教室の通称):
  • 通常学級で授業を受けながら、個別の指導が必要な子どもたちが通う教室。普段は通常授業を受け、週に数時間だけクラスを抜けて通う。
  • 地域によって対応は様々で、難聴に限らず通級指導教室に通いたい子どもたちは増加しており、片耳難聴児を受け入れているところは多くはない。
  • クラスを抜けて通わなければならないので、子どもと相談した上で何を支援してもらうために通うのか目的を明確にして通えると良い。

木をかたどった積み木

こんな声もありました。

  • (40代の母親 子ども5歳 生まれつきの片耳難聴)
    新生児聴覚検査で分かった。
    特に落ち込まなかった。自分の医療職という仕事柄か、いろんな人がいて片耳難聴の方も珍しいと思わなかったため。
    ただ、小児耳鼻科の医師に「全然困らないから!大丈夫」と言われた。励ますつもりなのだろうけれど、困る困らないは本人の問題。患者やその家族に寄り添うように接するべきでは?と思った。

2. 片耳難聴のことを話すか

お子さんに、どんなタイミングでどんな風に片耳難聴のことを伝えたか、普段から片耳難聴のことを話すかについて尋ねました。

伝える時期は、生まれつきの場合は、理解ができる年齢になってから伝えようと考えている方が多くいるようでした。

学齢期になってからの場合は、病院を受診した際に一緒に結果を聞いているという回答がありました。

今は話していない/あまり話さない

  • (30代の母親 子ども0歳 生まれつきの片耳難聴)
    今は0歳児なので、伝えていない。
    今後どう伝えるかは考え中。きちんと話し、子どもの気持ちを受けとめたい。
  • (母親.子ども3歳 生まれつきの片耳難聴)
    聞こえていないという事を理解するには少し早いかなと思い、
    本人には話していない。
    現在は日常生活で特に目立って困っていないようだが、なるべく聞こえる方から話しかけてる。あとは振り向くまで呼んだり。でも、本当に聞こえていないのか、怒ったりしていて聞こえないふりをしているのかが分からず見極めが難しいなとは思う。
  • (母親. 子ども5歳 生まれつきの片耳難聴)
    私は息子の個性として話をしたいと思っているが、
    5歳になる息子は最近あまり話したがらない。
    赤ちゃんの時から定期的に聴力検査をしているため本人も知っていて、ただ片耳を自分で塞いでみないと、どちらの耳が聞こえないのか分からないらしい。
  • (父親. 子ども大学生 子どもの頃からの片耳難聴)
    受診した際に、子どもも同席して医者から聞いた。
    もう中学生で隠す必要もないし、自分のことだから伝えるので良かったと思っている。その後、「こっちから話すからな」とか「いつからだったのか」とか「部活は大丈夫か」とかいう話を帰り道に話しながら帰った。
    しばらく様子は気にしていたが、子どもに大丈夫と言われた。学校でも、自分で対応していたよう。こちらからは結果を先生に伝えたが、トラブルなどは聞かなかったため、今は特段話していない。

生まれつきのお子さんからは「聞こえないのが当たり前と思っていた」「それが自然なこと」という話もよく聞きますね。

話している

  • (40代の母親. 生まれつきの片耳難聴)
    「片耳が聞こえない」という意味が分かる頃から自然に話した。
    その時々、年齢に合わせて内容も詳しいものにし、今では自然体で受け入れている。
    普段も話していて、困ったことがあればいつでも対応できるような空気にしたいから。
    体育などでの団体競技があるときには、友達の声を聞いて自分の行動を瞬時に考えないといけないため「もしかしたら聞き漏らしたときに、友達に怒られることもあるかも知れないよ」とデメリットも話した。それでもやってみたいと本人が言えば、希望通りさせている。
    傷つくこともあるかも知れないが、自分が苦手なところも少しずつ理解していければいいのではないかと思う。
  • (母親. 子ども小学1年生 生まれつきの片耳難聴)
    物心ついたときには、片方の耳は聞こえにくいと伝えていた。
    幼児の頃に聞こえの教室に週1~2回ほど通っており、周りはみんな補聴器をしていたから。小学校に進学してからは、集団の中で聞こえにくさが出てきたため、席の配置や聞こえにくいときは自分から伝えるよう言ってきた。帰宅後も聞こえにくいことがあったかどうか確認している。

親という立場で、日頃から関係を築かれている様子が伝わってきます。

学校

3. 片耳難聴のための工夫

お子さんの片耳難聴が分かった当初から現在まで、お子さんの片耳難聴について心配なことや、そのためにご家族が工夫・配慮していることを尋ねました。

こちらも、お子さんの年齢によっても対応が異なる様子が見られました。

今は特にない

  • (30代の母親. 子ども0歳 生まれつきの片耳難聴)
    今は0歳で本人がどうしてほしいかがわからないので、
    特に配慮していることは無い。
    これから心配なことはあるが、本人の性格次第だなと思っている。親としてできるだけ気持ちを受け止めていきたいと思う。
  • (母親. 子ども5歳 生まれつきの片耳難聴)
    今のところ困っていない様子で
    難聴側から話しても聞き返してこないし、普通に会話しているため今のところこのまま。
    就学時には、担任にアナウンスする必要はあると思う。本人ももう知っているから、周りの友達に知らせるかは本人に任せようと思う。


病院では、「聞こえる耳を大事にしてくださいね」と言われることも多いと思います。
心配な点は、かかりつけの病院でご相談ください。

具体的には、こちらの記事を参照ください:「子どもの頃に気をつけておきたい病気

気を付けていること

  • (40代の母親. 生まれつきの片耳難聴)
    聞こえる側の耳の病気に注意している。
    小さい頃は中耳炎をよく起こしていたが、自覚や親への訴えが少ない時期だったため気づきにくかった。風邪や鼻づまりがひどい時などは、耳鼻科へ受診していた。
  • (母親. 子ども小学1年生 生まれつきの片耳難聴)
    「片方聞こえるから大丈夫」と散々言われていたが、
    集団の場面では聞こえにくくなるフォローは大事だと思い、授業中はロジャーフォーカスを使用している。
    初めは小学1年生にはどうかと思ったが、試してみると本人もよく聞こえる、先生からも授業中の反応が違うと好評で導入。女の子だからか、アクセサリー感覚で気にいって使っている。
  • (母親. 子ども5歳 生まれつきの片耳難聴)
    いつか聞こえる耳の聴力を失う可能性もあるのでは…と不安で
    たくさん音や言葉に触れさせたい。絵本の読み聞かせや、コンサートにに行くなど。

  • ・中耳炎:
  • 風邪などで、細菌が鼻と耳を繋ぐ耳管(じかん)を通り中耳に侵入し、炎症が起こる。
  • 症状は、耳の痛み、耳だれ、発熱、聞こえにくさ。治療は、症状に応じて服薬などを行う。
  • <予防>
  • ・なるべく鼻水をすすらず、こまめに鼻をかむ
  • ・鼻は、両方同時ではなく、片方ずつ優しくかむ
  • ・鼻をかめない乳幼児は、「鼻水吸引器」がある
誕生日ケーキ

「片耳難聴児・者と家族」をテーマに、体験談のご紹介しました。
いかがでしたか?

紹介したものはアンケートに回答くださった方の体験という、あくまで一例です。

聞こえ方いろいろ、家族もいろいろ。

親も子どもも周りの人も、一緒に考えていければいいなと思います。

今後もエピソードがありましたらお寄せください。皆のシェアが、誰かのヒントになるかも知れません。

「確かに!」「自分の場合はこうだな」など、感想も@kikoiroまでどうぞ。

アンケートにご協力くださった皆さん、貴重な体験を共有いただきありがとうございました!

今後も多様でリアルな声を皆さんとシェアしていきます。


  • ※募集方法:
  • Twitterきこいろアカウントへの掲載・きこいろ会員メルマガへの記載。Googleフォームを利用して募集(2020/04/03~04/14)回答は、文体や表記の統一・内容に差し支えない範囲で説明文の追加等を行った。

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家族のための片耳難聴Cafe(交流会)

参考文献

  1. 日耳鼻福祉医療・乳幼児委員会:平成29年度難聴が疑われて乳幼児精密聴力検査機関を受診した0歳児および1歳児、2歳児の社会的調査.日耳鼻121:1033-1040,2018

著者紹介