気をつけておきたい病気(子どもの頃)

Written by 森田 訓子

聞こえる耳を大切にするため、特に子どもの頃に気をつけるとよいことを小児難聴がご専門の耳鼻咽喉科専門医の森田Dr.に記事を執筆いただきました。(岡野)

目や耳はなぜ2つあるのでしょうか。

それは私たちが3次元空間で生活していることと関係しています。

  • 目が2つあるから物が立体的に見え、遠近がわかる(両眼視効果)
  • 耳が2つあるから音の方向がわかり、周りがうるさくても話が聞き取れる(両耳聴効果)

片耳難聴の場合は両耳聴効果が得られないため、名前を呼ばれてもどこから呼ばれているのかわからずキョロキョロする、難聴耳側から話しかけられると気づきにくい、騒がしいところでは話がよくわからないなど、日常生活に不便や困り感を感じることがあります。

女の子が男の子に呼ばれるが、どこから声がしたか分からない
呼ばれた方向が分からずキョロキョロする

突然片耳が聞こえなくなったら戸惑い慌てるであろうことは容易に想像できますが、両耳とも聞こえが良いという状態を経験したことがないお子さんにとっては“片耳難聴の「今」の状態が普通、あたりまえ”なので、特に疑問を持つこともなくごく普通に生活しています。

ですから、ご家族にとっては何に気をつければ良いのかピンとこないのも無理はありません。

子どものときに気をつけることは、おおよそ次の2つに分けられます。

子どものときに気をつけること

  • 良聴耳の聞こえが悪くならないようにする
  • 両耳聴効果が得られない影響を最小限にする工夫をする

聴力低下をすべて防ぐことは出来ませんが、良聴耳の聞こえが悪くならないように気をつけるポイントがあります。
ここでは、中耳炎、ムンプス難聴などの病気について紹介します。

1. 中耳炎

中耳炎の種類

  • 急性中耳炎
  • 滲出(しんしゅつ)性中耳炎
  • 慢性化膿性中耳炎
  • 真珠腫(しんじゅしゅ)性中耳炎
  • 好酸球(こうさんきゅう)性中耳炎

お子さんに身近な中耳炎は、急性中耳炎と滲出性中耳炎です。

特に0歳、1歳から保育園に入っている場合は免疫力が未熟なため、中耳炎を繰り返しやすい状態です。

急性中耳炎の場合は、発熱や機嫌が悪い、耳を痛がるなど症状がわかりやすいので小児科や耳鼻咽喉科を早めに受診されると思いますが、

滲出性中耳炎の場合は、耳の違和感(耳閉感)や聞こえにくさがあっても小さいお子さんは表現できないためご家族は気づきにくく、食欲もあり元気であれば特に病院に行くこともなく保育園や幼稚園あるいは学校に通い続けることになります。

片耳難聴のお子さんの場合は、特に良聴耳に中耳炎があって聞こえにくくなると、集団保育や学校で先生や友達の話を聞き取るのが難しくなります。

鼻が出ている、鼻すすりをしている場合には、耳鼻咽喉科を受診して鼻だけでなく耳も診てもらうように普段から習慣づけておくと、早めに滲出性中耳炎に気づくことができます。

鼻をかむ女の子

2. ムンプス(おたふく風邪)の予防接種

わが国では現在ムンプスの予防接種は任意接種のため接種率が低く、そのためムンプスが周期的に流行し、ムンプス難聴も発生しているわけです。

片耳難聴の方の場合、もし良聴耳がムンプス難聴になったら、両耳とも難聴になってしまいます。
場合によっては、良聴耳の聞こえのほうがもともとの難聴耳より悪くなってしまうかもしれません。

現在(2020年1月31日現在)日本小児科学会では、ムンプスの予防接種は、1歳での1回目の接種と就学前の2回目の追加接種を推奨しています。かかりつけの小児科を受診された際や定期接種の時に、相談してみてください。

注射のイメージ

3. 聞こえやことばが心配なら精密聴力検査機関の受診を

片耳難聴の方の中には、日常生活で特に困ることがないから、健康診査(健診)の時以外に聴力検査は受けたことがないという方もいらっしゃると思いますが、
実際は良聴耳に軽度難聴や特殊な難聴(高音障害型難聴、低音障害型難聴など)があっても気づいていない場合や、
たまたま何かのきっかけでCTやMRIを撮ってみたら良聴耳にも内耳や中耳の形成不全が見つかったということも頻度は少ないですが、あり得ます。

小さいお子さんは、集団生活の中でコミュニケーションの取り方やことばを学んでいく人生の大切な時期にあたります。

耳鼻咽喉科を受診して中耳炎はないといわれたけれど聞こえやことばが心配、音声への反応が最近悪い気がするなど心配なことがあれば、
かかりつけの耳鼻咽喉科や最寄りの保健所などに相談して、小さいお子さんの聴力検査ができる精密聴力検査機関を紹介してもらってください。

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