【連載】片耳難聴と仕事 第4回(良いこと)

2020年3月10日 − Written by 麻野 美和

今回は、春からのお仕事のスタートがちょっと良いものになったらいいなと思い、
「片耳難聴と仕事」をテーマに体験談を募集しました。

10代~60代の様々な業界で働く、
約30名のエピソードを一例として紹介してきました。

今回の記事では、
片耳難聴が良い方向に働いたと感じる部分や、その仕事だからこそ良かったと感じた経験などを取り上げます。


これまで掲載したもの


  • ※片耳難聴とは:
    片方の聴力は正常。もう片方の耳が、軽度~重度の難聴(聞こえにくい・聞こえない)がある状態。
    難聴だけでなく、めまい・耳鳴りの有無、その他の個人・環境の状況によっても困りごとや必要な対応はそれぞれ。
髪を切る美容師

1. 片耳難聴だからこそ良かったこと

片耳難聴で困ることもありますが、
ポジティブな面を見出している方もいました。

片耳難聴だからこそ

  • (30代 おたふく風邪による片耳難聴.接客業)
    片耳難聴の影響か、以前より声が大きくなり堂々と元気に話している印象が強くなったようで、接客業には向いていると思う。自分の聞き取れない経験から、相手にも聞き取りやすく短い文章でわかりやすい会話を心がけるようになったため、話すことが得意になった。
  •  (20代 おたふく風邪による片耳難聴.販売員)
    聞こえない分、周りを見渡して顔を上げている時間が長いため接客業では好印象にみられやすいと感じる。
  • (30代   子どもの頃からの片耳難聴.美容師)
    聞き返えし・聞き取れない・聞き間違いが多くなるが、会話の運び方で何とかカバーしたり、鏡越しに口の動きと雰囲気で会話をしている。無意識に集中力を使って疲れたり、仕事もお客様の顔を見て会話をすることが人より多く仕事が遅くなる。
    でも、聞き取りにくい分、昔から人の気持ちや表情などに無意識に敏感になった気がするので、仕事上、お客様のカウンセリングには活かされているとも思う。
  • (50代 先天性 耳小骨奇形による片耳難聴.自動車関係の製造業、製品設計部長)
    若いころはコンプレックスから片耳難聴を秘密にしていた。ハンディを感じることもあったが、その分、勉強して自分の知識や技術を身に着けて、耳が聞こえないハンディがあっても(若い頃は難聴の原因がわかってなかったので、良いほうの耳もいずれ悪くなるのではと心配していた)技術者として生き残れるようにと頑張った。かなり苦労したが、今は片耳難聴であったために、人より努力することができたかと思えている。

2. その仕事であった良いこと

その仕事・職場だからこそ、
片耳難聴やご自身に良い影響があったと答えた人もいました。

この仕事だからこそ

  •  (20代 おたふく風邪による片耳難聴.過去:高校勤務、現在:特別支援学校教員)
    特別支援学校に勤務するようになって、自分の難聴をネガティブに捉えることが少なくなった。先生方も障害のある方は多いし、子どもたちも互いの障害に理解があり、自然に受け入れ合って生活しているから、自分も変に意識せず困っていることを伝えられるようになった。
  • (20代 子どもの頃からの片耳難聴.販売店員)
    迷惑を掛けてしまう等の理由で接客業を敬遠しがちだった。実際に働いてみると補聴器をしている小さな子どもに「お姉ちゃん、僕とお揃いだね!」と声を掛けてもらえたり、親御さんに「補聴器を着けていてもお仕事してらっしゃるのね、子どもが補聴器を着けるようになってどうしてもこの子の将来を悲観してしまうんだけど貴女を見てると何だか嬉しいわ」と声を掛けて頂いたり…。本当にこの仕事に就いて良かったと思う。
  • (20代 おたふく風邪で片耳難聴.博物館の学芸員・解説員・催事担当)
    全国・世界から様々なお客様が来場する。お客様と世間話の機会も多く、その中で片耳難聴であったり両耳難聴の方と出会うことがある。今までは自分しか片耳難聴の人を知らなかったが、思っていたよりもいるんだと知れて安心出来た。この仕事をしていて良かったことだと思う。
    どのように難聴と向き合ってきたか教えてくれた人、なったばかりでどうすれば良いか分からない人、子どものことで落ち込んでいる人など多くの人に会ってきた。悩んでいる時に助けて貰ったり、逆に悩んでいる人の助けになったりすることが出来た。

カフェテラスで飲食する人達

以上、4回に分けて片耳難聴と仕事にまつわるエピソードを紹介してきました。
いかがでしたか?

聞こえいろいろ、人も、仕事もいろいろ。
(日本には、17,000もの職種があるそう「独立行政法人労働政策研究・研修機構調査研究成果」)

誰もがいきいきと働くことができますように。

今回の記事用の募集は終わりましたが、今後もエピソードがありましたらお寄せください。
皆のシェアが、ちょっと誰かのヒントになるかも知れません。

「確かに!」「自分の場合はこうだな」など、感想も@kikoiroまでどうぞ。

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ご協力くださった、皆さん、貴重な体験を共有いただきありがとうございました!
沢山のコメントを頂き、紙面の都合上すべてを掲載出来ませんでしたが、
今後も多様でリアルな声を皆でシェアしていきたいと思っています。

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