【連載】片耳難聴と仕事 第2回(伝えること)

2020年3月9日 − Written by 麻野 美和

もうすぐ4月。

新しい出会いを前に、新しい仕事へのドキドキ、初対面の人へのドキドキ。

そして「初めてましての人に、片耳難聴を伝えること」
「新しい環境で、片耳難聴と上手くやっていくこと」
を意識する人もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、春からのお仕事のスタートがちょっと良いものになったらいいなと思い、
「片耳難聴と仕事」をテーマに体験談を募集してみました!

様々な業界で活躍する30名の方から頂いたエピソードを一例としてご紹介しています。

この記事では、仕事で周りの人に片耳難聴を伝えるとき・伝えないとき・その思いをまとめました。


  • ※片耳難聴とは:
  • 片方の聴力は正常。もう片方の耳が、軽度~重度の難聴(聞こえにくい・聞こえない)がある状態。
    難聴だけでなく、めまい・耳鳴りの有無、その他の個人・環境の状況によって困りごとや必要な対応はそれぞれ。
工場で話し合っている人達

1. 伝えた/伝えている

伝え方のバリエーションも沢山ありました。

採用面接の時点で伝える、
入社後の自己紹介や異動の度に伝える、
お客様にも伝える、
聞こえなかったときにその都度伝える、
必要でなければ伝えない・必要に応じるなど。

伝える時は「席を変わってほしい」等と、
相手がどうしたら良いか分かるように具体的に伝えるのもポイントです。

伝えた

  • (30代 メニエール病による片耳難聴.福祉職)
    ハローワークでの仕事探しのとき、働くにあたっての条件で、夜勤が大丈夫かなど聞かれ、話して不利にならないか迷ったが正直に話した。簡単に病気の説明をし、きちんと病院で診てもらっていて医師から大丈夫とは言われていること、夜勤がない方が体には良いと話した。珍しくなかったようで、相手もすんなり聞いてくれていほっとした
  • (20代 右耳小耳症による先天性の片耳難聴.医療従事者の予定)
    そこまでうるさくなければ話は分かるが、面接で上司に片耳が聴こえないことを話した。一応、医師に診断書も書いてもらった。入職後は所属部署にも伝える。
  • (30代   子どもの頃からの片耳難聴、遅発性内リンパ水腫あり.自動車製造、プール監視員、事務、音楽関係、店員)
    転職後の面接では、理解して貰うというより知っておいて貰いたいという思いで伝えていた。聞こえやすい環境か等も受ける前に不安を持ちつつも、様々なシュミレーションをした。
    店員の仕事は、人が殺到してる時の話し声や雑音等で上手く聞き取れない・館内放送などが重なると聞き返すのも申し訳なく何度かお客さんに不快な思いをさせてしまった。だけど、職場の店長さんは優しくて「聞こえなかったら聞き返していいんだよ」と前もって言ってくれ心の支えだった。
  • (40代 数年前から顔面神経鞘腫による片耳難聴.事務)
    面接時・入社挨拶時に「左は聞きづらい」と公に言った。ただ、あまり配慮はないと感じる。片耳難聴を伝えていても、難聴側から話かけられ、聞こえる側で聞こうと首の位置を変えるのが失礼と言われたことがある。お客様にもある程度伝えていて、お客様の方が理解があったりする。
  • (20代 子どもの頃からの片耳難聴.経験した仕事:飲食、イベント、アパレル、事務)
    何かあった時に大切なことを聞き取れないと困るから伝えているが、採用の段階で難聴を伝えたところには内定が出なかった。他の理由もあったかも知れないが、伝えていないところからしか内定がでなかった。考えすぎかもしれないが、そうとしか思えないタイミングもあった。
    理解のある職場では、驚くことに言う前に向こうから難聴に気付いてくれた。座り位置や指示の方向に常に気を使ってくれたり、飲み会などでも座り位置に配慮してくれた。
    職場の人に理解されない経験も多くあったが、職場で理解のある人が一人でもいれば全然生きやすくなると思う。
  • (20代  生まれつきの片耳難聴.企業の研究職)
    就活の終盤で、人事との面談で片耳難聴を告げた際に障害者手帳を取得できるなら是非してほしいとの依頼があった。片耳難聴では取得できないことを伝えると若干残念そうにしているように見えた。
    障害者雇用の関係でそのような話が出たと考えているが、健常者でも障害者でもないような片耳難聴の扱いについてもどかしく感じた。

特に最後のエピソード、もやっとする気持ちですね。

「障害者手帳」への知識が担当者になかったため起きたことと思われます。
医療福祉・障害などの制度は広く細分にわたり、
また、担当者が必ずしも専門性を有さないことから、
就業の場面以外でも把握されていないケースはよくあります。


  • 障害者手帳
  • 身体・知的・精神の3つの障害別に分けられている。
    「身体障害者手帳」は、身体機能に障害がある人が、生活上の最低限必要な援助を受けるために任意で取得するもの。
  • 「聴覚障害」では、軽中度難聴や片耳難聴は、適用されない。「両耳の平均聴力レベルが70dB以上、もしくは片耳の平均聴力レベルが50dB以上、もう一方の平均聴力レベルが90dB以上」と定められている。
  • 障害者雇用
  • 企業には障害を持つ人の職業生活・経済の自立を図るために「障害者雇用率」という全体の一定数(2%程度)の雇用が義務付けられている。
  • 達成されるとサポート費用として各種助成金が支給されたり、逆に雇用率が達成されないと、納付金や企業名の公表のルールがある。
  • (詳しくは「片耳難聴者が利用できない制度」
  • なお、心身の機能障害と周辺環境などの間で起こる困りごとに、
    事業者と本人が相談して対応する「合理的配慮」というものがあります。手帳の有無を問わず適用されるのでご安心ください。
    (詳しくは「合理的配慮」

2. 伝える課題


音声でのコミュニケーションが取れる、
いつも聞こえない訳ではない、
という分かりにくさゆえに伝えても覚えてもらいにくかったり、
聞こえないために起こることをイメージしにくいのが、
片耳難聴ならではの困り感ではないでしょうか。
(詳細:片耳難聴を人に伝えること

伝えてはいるけれど..

  • (20代 聴神経腫瘍による片耳難聴.製薬業界、営業職)
    伝えているのは、同期、直属の上司、人事部の方。同期には聞こえている耳の方から話しかけて頂いている。働き始める数ヶ月前に発覚し、発覚後1年足らずのため、どれぐらいの人に伝えようか検討中。
  • (50代 5年前突発性難聴による片耳難聴.薬剤師)
    仕事場の人には伝えているが、仕事柄、マスクをしておられる患者さんの声や高齢の方の声が聞き取りにくいと感じる。高齢の方に何度も聞き返しにくく、伝えたいことを汲み取ってあげられないのが不安。また、患者さんに関することを小声で教えてくれる同僚の声が聞こえないので、話が見えないことがある。
  • (40代 子どもの頃からの片耳難聴.ドラッグストア、医薬品登録販売者)
    スタッフには、無視しているわけじゃないからと伝えている。「ホントにぼーっとしてる場合もあるので、肩をトントンしてくださいね」と笑いながら話す。
    接客業で誤解されると困るため、名札に耳マークも付けているが、認知されにくくお客さんから無視されたなどの苦情があった事がある。苦情などがあった際は、他の従業員に私のことを「耳が悪くて…」と伝えてもらいお客さんに理解して頂くようにしてもらっている。
  •  (40代   突発性難聴による片耳難聴.自動車関連会社、人事・研修担当)
    周囲には、なるべく軽い感じで伝えている。重い感じで伝えると相手が気を使いすぎてしまいそうだから。
    でも軽い感じで伝えると大したことないと思われるのか、配慮してもらいたい時にしてもらえない事もよくある。微妙な距離で雑談されると会話に混ざるのをためらう。向こうからすると、多少聞こえてると思われがちだけどほぼ聞こえず、「何の話?」って入ると話の腰を折ってしまいそうで。
  • (40代 突発性難聴による片耳難聴.現在:不動産関係の事務職)
    精神障害もあるため福祉制度の就労支援を利用しての就職をした。所属する営業所には、片耳難聴を伝えている。「後ろからの声掛けではなく、聞こえる方からの声掛けをお願い」していている。グループ全体だと1000人を超えるため、役職についている人以外は知らない。
    でも、片耳難聴を忘れられやすく、呼ばれて振り向くとそこには人がおらず、ぐるーっと回って話しかけた人と目が合うと笑われ恥ずかしかった。笑われるならまだいいのだが、ふざけてる?と怒られたこともあった。

最後のエピソード、「どうしたの?」とまずは事情を聞いてもらえると良かったのかも知れませんね。

周りの人からはイメージされにくい、
そんな問題をカバーするために伝える時に工夫をしている人もいました。

  • (40代 おたふく風邪による片耳難聴.事務職)
    管理職になり、いささかな無理は押し通せるようになって、不自然な行動とっても誰も何も言わない。でも、なるべく周りの人に伝えて理解は得られるようにしている。
    聞こえなかったり、電話の方向がわからなかったなど不自然なことがあったことをきっかけに伝える。そういったことがある前に伝えると、相手も何を配慮すればいいかがすぐにイメージ出来ず戸惑うと思うから。

 実際のシチュエーションだからこそ納得しやすく、実際に対応することで記憶に残りやすくもなりそうですね。

3. 伝えなかった/伝えない

仕事によっては、
人とコミュニケーションを取る機会が少なく伝える必要がなかったり、
自分の対応でカバーができているという人もいます。

一方で、伝えたいとは思っても、
伝える勇気がいったり、伝えても理解して貰えなかったり、
忘れられる体験が積み重なり、伝えにくさを感じたという声は、日常生活の場面でも同様にありました。

さらに、仕事という能力・競争の求められる中では
「聞こえないことがハンデと思われてしまったら困る」が特徴として挙げられています。

伝えなかった

  • (20代 子どもの頃からの片耳難聴.食品加工)
    一人でする仕事が多く、話す機会が少ないため伝えなかった。自分で聞こえるところにいれば、聞こえるし、反対側からでもある程度の静かなところや相手の声が小さくなければ聞こえる。
  • (30代 子どもの頃からの片耳難聴、遅発性内リンパ水腫あり.自動車製造、プール監視員、事務、音楽関係、店員)
    新卒時は、面接でいう勇気がなかった。辞めるまでの5年間、職場の方にも言えずに自分でカバーしながら働いていた。工場系での仕事は機械やリフトの音の騒音が大きすぎて、仕事は好きだけど人との会話等とても神経を使い、精神的にも疲労が大きかった。
    自分単体での仕事も自分でカバーしながらこなせたため、言わなかった。プールの監視員の時は、インカム付けて仕事していたが、お客さんに尋ねられた時はインカムを外して会話でカバー出来たりしていた。
  • (50代 生まれつきの片耳難聴.建築会社勤務、宅地建物取引士)
    伝えていない。伝えても理解してもらう事は難しいと感じているため。耳が聞こえにくいと言っても冗談だと思われてしまう。                       
  • (30代   子どもの頃からの片耳難聴.美容師)
    オーナーには伝えているが、他のスタッフには特に改まって伝えてはいない。特別扱いしてほしくはないけど、普段の生活で不便だなと感じる所をオーナーに伝えても片耳難聴だからだと考えてはくれない。「みんながあることだよねー」ってかんじ。
    両耳聞こえるという状態がどんなものなのかわからないので、そう言われるとこれは私だけの感覚ではないのか と、難聴による不便さなのか分からず、主張できなくなる。
  • (20代大学生 先天性の片耳難聴.接客のバイト)
    伝えても忘れられた経験が多いので、伝えず、自分でどうにかカバーしているつもり。働く上では、聞こえない側から話しかけられた時、無視してしまって相手を嫌な気持ちにさせるのは申し訳ないと思っている。
  • (50代 女性.ホームセンターやスーパーの店員)
    何かのきっかけで伝えて知ってる人もいるけど、知らない人もいる。片耳のことは相手に伝えておいた方がいいとは思うけれど、特に資格があるわけでもなく、代わりはいくらでもいるような仕事だから。その仕事をある程度できるようになってから、カミングアウトするのもひとつの手ではないかと思っている。
    店内アナウンスの声、荷物を積んだ台車を動かす音などで相手の声が掻き消されることがあり、聞き間違いでミスも多かったが、慣れて行けばその場の状況でだいたい判断できるようになった。

伝える・伝えないは一人一人の自由で、絶対の正解があるものでもありません。

でも、言いたいとき・必要なときには言えたら、
そして「じゃあこうしようか」と周りの人も一緒に考えていけたらと思います。

市場で販売をしている様子

聞こえいろいろ、人も、仕事もいろいろ。
(ちなみに日本には、17,000もの職種があるそう「独立行政法人労働政策研究・研修機構調査研究成果」)

「片耳難聴と仕事、選び方」も合わせて、どうぞ。


誰もがいきいきと働くことができますように。

今後もエピソードがありましたらお寄せください。
皆のシェアが、ちょっと誰かのヒントになるかも知れません。
「確かに!」「自分の場合はこうだな」など、感想も@kikoiroまでどうぞ。

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ご協力くださった、皆さん、貴重な体験を共有いただきありがとうございました!
沢山のコメントを頂き、紙面の都合上すべてを掲載出来ませんでしたが、
今後も多様なリアルな声を皆でシェアしていきたいと思っています。

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