【連載】片耳難聴と仕事 第3回(選び方)

2020年3月10日 − Written by 麻野 美和

新しい出会いを前に、新しい仕事へのドキドキ、初対面の人へのドキドキ、
そして「初めてましての人に、片耳難聴を伝えること」
「新しい環境で、片耳難聴と上手くやっていくこと」
を意識する人もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、春からのお仕事のスタートがちょっと良いものになったらいいなと思い、
「片耳難聴と仕事」をテーマに体験談を募集してみました!

一例として約30名のエピソードを複数回に分けて紹介しています。

この記事では、
片耳難聴によって仕事選びのときに考えたことや諦めた仕事はあるか、をまとめました。


  • ※片耳難聴とは
  • 片方の聴力は正常。もう片方の耳が、軽度~重度の難聴(聞こえにくい・聞こえない)がある状態。
    難聴だけでなく、めまい・耳鳴りの有無、その他の個人・環境の状況によって困りごとや必要な対応はそれぞれ。
研究職

1. 考えなかった・影響がなかった

2017年のある調査では、
「片方の耳が聞こえない/聞こえにくいために、職業やアルバイトを諦めたことがあるか」という質問で、意見が別れたという結果もありました(詳しくは「片耳難聴で困る場面」

今回も、諦めた仕事がある・ない、片耳難聴の影響を考えて仕事を選ぶ・選ばないという方も両方がいました。

特に関係がなかった

  • (40代 外耳道閉鎖症による片耳難聴.DTP、WEBデザイナー、フロントエンジニア)
    特になかった。
  •  (60代 生まれつきの片耳難聴.過去:府庁勤務、現在:自然保護等のバイト)
    特になし。
  • (40代 子どもの頃からの片耳難聴.研究職)
    もともと希望する仕事が聞こえによって左右されるものではなかったため、気にならなかった。
  • (40代 突発性難聴による片耳難聴.栄養士、児童指導員)
    栄養士は調理の仕事が多かったが、特に片耳難聴を意識していなかった。片耳難聴を伝えており、ざわつく中での会話は大変だが、目で見る仕事は大丈夫だと思う。

2. 考えた・影響があった

片耳難聴の影響を考えた経験のある人は、
自分の働きやすさや仕事上の責任を果たせるかという点を考えていると言えそうです。

同じ職業の中でも、聞こえに不便の少ないところへ配置換えをしてもらうなど
会社側と相談している人もいます。

考えたこと

  • (50代 5年前突発性難聴による片耳難聴.薬剤師)
    静かな環境が多いか、聞こえやすい環境であることを考えた。
  • (20代大学生 先天性の片耳難聴.接客業)
    聞こえる耳が塞がってしまういコミュニケーションが取りにくくなるため、インカム、イヤホンをつけて無線で連絡を取り合う仕事を避けた
  • (20代 おたふく風邪で片耳難聴.博物館の学芸員・解説員・催事担当)
    周りの助けを求めやすそうな職場を選んだ。 実際、「すみません、うるさくて聞こえなかったのでもう一度言ってください」と言うと、ほとんどのお客様が納得してもう一度言ってくれるので特に聞こえずに困ったことは無い。
  • (20代 子どもの頃からの片耳難聴.販売員)
    本社が障害者雇用制度なども導入しており、(その対象ではないが)片耳難聴も受け入れてもらえ気持ちよく働けるのではないかと考えた。
  • (50代 生まれつきの片耳難聴.建築会社勤務、宅地建物取引士)
    飲食店や洋服屋で働いたこともあるが、何処から呼ばれているのかわからずキョロキョロしてしまい苦労したため、フロアでの仕事や大勢の人と同時に接する仕事は選ばないようにした。現在は、お客様1組ごとの打ち合わせの為、不都合はない。片耳難聴の事は黙って仕事をしている。
  • (40代 突発性難聴による片耳難聴.自動車関連会社、人事・研修担当)
    製造現場で働いてる時に難聴になり、現場作業で音が聞こえづらいのは自身も共同作業者も危険に晒してしまうかもと思い、上司と相談し、事務系の業務に変えてもらった。
  •  (20代   おたふく風邪による片耳難聴.過去:高校勤務、現在:特別支援学校教員)
    40人学級で授業を行うこと・集会で数百人が集まる環境にとても苦労した。1対1での会話はできるけれど、生徒同士の会話は聞き取れないため、子どもたちの普段の様子を知ることが難しく、コミュニケーションに悩んだ。
    異動の際に規模の大きな学校に行かないように配慮をお願いし、今は特別支援学校に勤めている。学生時代は人と関わる仕事はできないと思っていたが、いざその世界に入ったら意外となんとかなっている。    
  • (40代 おたふく風邪による片耳難聴.事務職)
    「資格があれば片耳難聴でも確実に職を得られる」と考えて資格取得を目指した。周りの人にとって必要とされる人材であろうと努力する。自らの収入で一生食べていけることも目指した。
    ただ、通訳の仕事は、立ち位置を気にしたり、片耳にささやかれるのは無理だと思った。スポーツ選手も声の位置が分からないし(目を動かすとフェイントができないと思ってた)、音楽関係は、立ち位置によって聞こえにくく音がつかみにくかった経験や大音量やイヤホンも耳を悪くすると思って避けたかった。

3. 聴覚の条件がある仕事

片耳難聴のために取得制限のある資格などは多くなく、
様々な業界で活躍している人がいます。


ただ、聴覚の条件がある仕事や、
片耳難聴でできるのかと質問の声があった仕事には下記のようなものがあります。

聴覚の条件や心配があった

  • (30代 おたふく風邪による片耳難聴.販売員)
    10歳で片耳難聴になったとき、医師に「看護師は難しいね」と言われた。
  • (40代 子どもの頃からの片耳難聴.ドラッグストア 医薬品登録販売者)
    医療系技師について、難聴があることで対応が遅れたり業務に影響するかもしれないと言われた。
  • (20代 おたふく風邪による片耳難聴.鉄道業界・駅員・サービス介助士)
    新幹線の運転士になりたかったが、難聴のため適性がないと判断された。
  • (40代 突発性難聴による片耳難聴.栄養士、児童指導員)
    警官を諦めたことはある。

新幹線・電車の運転士、警察官のように安全に業務遂行を行うために聴覚や様々な身体上の規定を定めている仕事もあります。

その中でも、新幹線・電車運転士またパイロットのように厳格に定められているものもあれば、
警官のように「業務に支障がないこと」と明確にしていないものもあります。
同じ警官という業界の中でも、職種・職務によっては条件がないものもあります。

看護師や医療職も命に直結する仕事で、聞こえが心配になりますね。
ただ、資格取得上の聴覚の条件は「業務に支障がないこと」で、片耳難聴やろう・両耳難聴の方も働いています。

近年では、病気や障害であるのみを理由に雇用を制限することは法律上でも禁止されています。

片耳難聴のみではなく、
めまいや他の病気を持っている方からは、こんな声が寄せられました。

  • (30代   子どもの頃からの片耳難聴、遅発性内リンパ水腫あり.自動車製造、プール監視員、事務、音楽関係、店員)
    めまい・耳鳴り・頭痛が起こりやすく、症状が出ればかかりつけの遅発性内リンパ水腫の検査も出来る耳鼻科へ行っている。家族にも症状を話し、理解を得るようにしている。
    指定難病でもあるため、福祉制度上の障害者等の就労支援の働いている友人に相談したところ(その人の職場は、知的障害の方などを対象としてる所などで度合いや角度がまた少し違うと理解しつつも)
    私のレベルだと「一般枠でいいよ~、(障害者雇用枠/就労支援)必要ないよ!」と言われた時の虚無感と少し絶望感を感じた。
    フォローをしてくれたのだとわかりつつも、一般枠を転々として悶々と苦しんでるのはやはり当人にしか理解されないのかな、と思った。
    聞こえる環境下での仕事は、体力精神的にも余裕を持てるので仕事もしやすい。そういう職場を探しやすい世の中になればいいなぁとも思う。
付箋

聞こえ方いろいろ、人も、仕事もいろいろ。
(日本には、17,000もの職種があるそう「独立行政法人労働政策研究・研修機構調査」)

誰もがいきいきと働くことができますように。

今後もエピソードがありましたらお寄せください。
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ご協力くださった、皆さん、貴重な体験を共有いただきありがとうございました!
沢山のコメントを頂き、紙面の都合上すべてを掲載出来ませんでしたが、
今後も多様でリアルな声を皆でシェアしていきたいと思っています。

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