【連載】片耳難聴と仕事 第1回(工夫)

2020年3月9日 − Written by 麻野 美和

もうすぐ4月。

春。新しい出会いを前に、新しい仕事へのドキドキ、初対面の人へのドキドキ。「初めてましての人に、片耳難聴を伝えること」「新しい環境で、片耳難聴と上手くやっていくこと」を意識する人もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、春からのお仕事のスタートがちょっと良いものになったらいいなと思い、「片耳難聴と仕事」をテーマに体験談を募集してみました!

これから4回に分けて、約30名の方からお寄せ頂いたエピソードを一例としてご紹介していきます。
飲食や販売スタッフ、駅員、教師、薬剤師、美容師、学芸員、研究職、研究職など様々な業界で活躍する幅広い方の声が集まりました。ぜひご覧ください!

※募集方法:Twitterきこいろアカウントへの掲載・新規きこいろ会員メンバーへの登録メールへの記載。Googleフォームを利用して募集。文体や表記の統一・内容に差し支えない範囲で説明文の追加等を行った (2020/03/01~03/09)

 「片耳が正常聴力で、もう片方の耳に軽度~重度の難聴がある状態」の片耳難聴。
常に聞こえない訳ではありませんが、聞こえにくい場面があります。
片耳難聴だけでなく、めまい・耳鳴りがある人、その他の個人・環境の状況によっても困り感と必要とする配慮は人それぞれです。

「片耳難聴が困ること」詳細はこちら 
「片耳難聴が聞こえにくい理由」詳細はこちら

この記事では、仕事上での困りごとを減らす皆さんの工夫を見ていきましょう。

1. 自分ができる工夫

きっと無意識レベル・習慣になっているポジション取りはもちろん、意識して工夫していることもあるはず。

自分の工夫

  • (20代 おたふく風邪による片耳難聴.鉄道業界・駅員・サービス介助士)
    それまで難聴による苦労をしたことがなく、何も考えずに就職した。駅員は、混雑した中での仕事で苦労する。聞こえなければ顔の角度や体の向きを変えて話を伺っている。
  • (20代 子どもの頃からの片耳難聴.販売店員)
    聞こえなかったときの聞き返し方に注意している。「え?」や「はい?」ではなく「もう一度お伺いしてもよろしいですか?」「恐れ入りますがもう一度お願い致します」
    「健聴者と難聴者」という前に「店員とお客様」、そして「1人の人間と1人の人間」という関係だから、申し訳なさを丁寧な言葉で伝えるとちゃんともう一度伝えてくれる。
  • (40代 おたふく風邪による片耳難聴.事務職)
    確認のため復唱や、同じ事を違う表現で繰り返したりする。くどくなりがちだが、仕事について聞き返さないことはない。聞こえたふりで流すこともしない。
    雑談では、聞き返さなかったり、相手の表情や語調にあわせて全く聞こえないのに相づち打つことは、ままある。
  • (20代 10年以上前からの片耳難聴.接客バイト)
    小学生の子どもと関わるアルバイトをしていた際、聴こえない耳側で子どもが泣いていたが気づけず、可哀想なことをしてしまった体験がある。
    あらゆる方向から呼ばれて気づかないと困るため、周りをよく見るようにしている。
  • (20代   おたふく風邪による片耳難聴.過去:高校勤務、現在:特別支援学校教員)
    にぎやかで聞き取りにくい普段の教室で、コミュニケーションを取るのを避けてしまうことがあり、関わりづらい先生だと思われてしまっているかもしれない。
    放課後や授業中など、一人一人と会話をしやすいタイミングを見つけて積極的に声をかけるようにしてる。
  • (30代 突発性難聴による片耳難聴.IT関係)
    メールやチャットなどテキストでのやりとりが多いのであまり困らないが、逆に周りの音が気になる聴覚過敏なのか補充現象なのか、疲れるためひとり作業のときは耳栓をしている。

「聞こえなかったときの聞き返し方」「確認のため復唱する」「周りをよく見る」といったビジネススキルは片耳難聴の場合にも生かせるのだなと感じました。

片耳難聴の人の電話の持ち方を再現
聴き手の聞き耳が同じだとクロス持ちになる

電話を取る機会がある仕事や、オンライン通話での打合せも最近は増えてきました。
そこでの困り感も、聴力・原因・発症からの年数・その他の個人的要因や、そのときの環境・状況によっても異なります。

電話などの対応

  • (20代 子どもの頃からの片耳難聴.接客業)
    電話自体のやりとりは問題がない。でも、聞こえる方の耳で電話しているから、周りに声をかけられたと気づかず切ってしまうときがある。
    顔をあげて周りの様子を意識したり、周りから話しかけられたら「少々お待ちください」と伝えてから聞く、ジェスチャーで「紙に書いて」と伝えて書いて貰う。
  • (40代 おたふく風邪による片耳難聴.事務職)
    卓上の電話機の位置は、左側に置かれていることが多い。左耳難聴のため、新しい部署に行く度に電話機の位置を聞こえる右側に置き換えている。
    長時間電話を受けてメモを取るのは、利き手でない側が聞こえないので、肩に受話器を挟んでメモを取るので肩が凝る..
    自分の電話機が鳴ったのも判断つかないときもあるので、ランプも見える位置に置くのは大事。周囲に片耳聞こえなくて分からないと話しておくと、周りが目線で鳴ってる電話を教えてくれるときもある。
    それから、無線イヤホンを耳に入れるのは周りの音が聞こえなくなるのではないかと抵抗感があったが、イヤホンをしても周囲の音は聞こえるし、イヤホンからの音を聴きつつ、目の前の人と会話も普通にできると気がついた。
  • (50代 突発性難聴による片耳難聴.過去:電話オペレーター、現在:病院事務)
    電話をしながらメモを取れなかったり、どの場面でもマスクをしている人が多い季節は唇が読めず話の内容が半分以上理解できない。
  • (20代 聴神経腫瘍による片耳難聴.製造業、営業職)
    少しでも雑音があるところでの電話対応が難しい。室外ではほぼ不可能。
  • (40代 子どもの頃からの片耳難聴.ドラッグストア、医薬品登録販売者)
    パソコン性能もあると思うが、会議のテレビ会議の音声が聞こえない。相談してワイヤレススピーカーを設置してもらった。
  • (40代   突発性難聴による片耳難聴.自動車関連会社、人事、研修担当)
    電話でのフォローもできるので問題なく、上司には知らせてあるため、トラブルはほぼない。
    でも、webでの電話会議が多く、参加人数が多い時や、部屋の音の反響具合で聞き取りづらい時がある。顔が見えない状況で、自分の難聴を言い出しづらく、集中MAXで聞き取りに集中している。集中し過ぎて言いたい事が言えず、且つ終わった後の疲労がすごい。

各自に合った対応を考えていきたいです。

ちなみに、通話やWEB会議で使えるものには、文字起こしのアプリや、周囲の雑音を減らすノイズキャンセリングのヘッドセッドなどがあります。
UDトークGoogleドキュメント音声入力AndroidアプリLive transcribeテレホンテキストみえる電話など。詳細は、後日別記事にて)

補聴器を付けた人

補聴器機器を使っている方の中には「あまり補聴器を見られたくない」と感じる人もいれば、オープンにすることで難聴の「目印」に使う人もいました。

  • (50代 耳小骨の奇形による片耳難聴.自動車関係の製造業、製品設計の部長)
    お客さんとの打ち合わせ・会話は気を使う。補聴器をわざと見えるようにしたり、会話の前に難聴を告げるケースもある。
  • (20代 子どもの頃からの片耳難聴.販売店員)
    難聴側に補聴器を装着しているが、品出しをする時の台車のガラガラという音が重なるとその音だけが聴こえてしまいカバー出来ない時も多々ある。
    あえて補聴器をお客様に見えるように髪を耳に掛ける。お客様に誤解されるとクレームや会社の評価にも関わるため、難聴をアピールするような形で、誤解を生まないようにしている。

周りの人の理解や協力があることで、助かることも沢山あります。
次に、周りの人に協力を依頼していることをまとめました。

2. 周りの人ができる工夫

多くの人が聞こえる側のポジションを変わって貰うなど依頼していますが、その他にも周りの人ができることがありそうです。

他の人に協力して貰っていること

  • (30代 おたふく風邪による片耳難聴.接客業)
    狭い店舗だとスタッフ同士が横に並んで話さなければならないため、聞き取りやすいように場所を代わってもらった。
    広い店舗だと呼ばれてもどの方向から呼ばれているかわからないため、近くのスタッフに教えてもらえるようお願いした。
  • (40代 聴神経腫瘍による片耳難聴.教員)
    在職中に片耳難聴になり、そのまま続けているが日々ざわざわした環境なので聞き取りずらいこともある。「(聞こえない)左側からでなく右から話して」と子どもにお願いしている。
  • (20代 おたふく風邪で片耳難聴.博物館の学芸員・解説員・催事担当)
    唐突に聞こえない側からお客様に話しかけられることが多くある。
    そのため、できるだけ自分が聞こえる側に移動しながら解説したり、聞こえない側に別のスタッフに立ってもらっている。
  • (60代以上 生まれつきの片耳難聴.過去:府庁勤務、現在:自然保護等のバイト)
    府議会等での議員との関わり・住民団体との交渉・苦情処理等が、人によっては聞こえにくい声の方がいたため、1人では対応せず、必ず複数で応接していた。 
  • (20代 子どもの頃からの片耳難聴.接客業)
    まわりがうるさくなる飲み会のとき、なるべく静かなお店がいいですと伝えて一緒に探して貰ったり、席の位置を変えて貰っている。

「障害手帳を持っていないから、配慮を求めてはいけないと思っていた」と思われる方も時折います。でも、困ったときには、誰もが困ったと言えたらいいですよね。

例えば、心身の機能障害と周辺環境などの間で起こる困りごとに、事業者と本人が相談して対応する「合理的配慮」というものもあります。こちらは、手帳の有無を問わず適用されるのでご安心ください。(詳しくは「合理的配慮」
資格試験や就職試験のときにも、必要な補聴機器の使用や座席位置等の配慮の依頼ができる場合があります。(詳しくは、各機関・事業所にお問い合わせください)

ここまで、片耳難聴による仕事上の困りごとと工夫を紹介してきました。いかがでしたか?

工夫をするためには、周りの人に説明が必要になることもあります。次の記事では、仕事上での皆さんがどのように片耳難聴の伝えているのか・伝えないのか・その理由を見ていきましょう。

「片耳難聴と仕事(伝え方)」、近日公開予定!

飲食店で働く人

聞こえいろいろ、人も、仕事もいろいろ。(ちなみに日本には、17,000もの職種があるそう「独立行政法人労働政策研究・研修機構調査研究成果」)

誰もが、いきいきと働くことができますように。

今回の記事用の募集は終わりましたが、今後もエピソードがありましたらお寄せください。皆のシェアが、ちょっと誰かのヒントになるかも知れません。
「確かに!」「自分の場合はこうだな」など、感想も@kikoiroまでどうぞ。

  • 本人の記入フォームはこちら
  • 職場・周りの方の記入フォームはこちら
    ※記入フォームは、Googleフォームを使用しています。回答をお一人一回に制限するためのログイン設定をいたしました。

ご協力くださった皆さん、貴重な体験の共有を本当にありがとうございました!
沢山のコメントを頂き、紙面の都合上すべてを掲載出来ませんでしたが、今後も多様でリアルな声を皆でシェアしていきたいと思いっています。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

関連記事

  • プロサッカー選手で片耳難聴を持つ方のインタビュー
  • 音楽アーティストで片耳難聴を持つ方の情報
  • 仕事を始めてから自己開示するようになった方のインタビュー

きこいろでは、当事者の方のインタビュー・記事掲載も行っています。

著者紹介