両耳難聴の基礎知識

2023年7月9日 − Written by 高井 小織

基本的には、両耳難聴も片耳難聴も「聞こえの仕組み」は同じです。
詳しく紹介していきます。

目次
1.難聴の分類
 ①聴力の程度 ②年代別
 ③原因になる部位 ④聴力型
2.難聴の疾患
3.聴覚の検査

1.難聴(聴覚障害)の分類

①聴力の程度

●軽度難聴
小さな声や、騒音下での会話の聞き間違いや聞き取り困難を自覚する。
会議などでの聞き取りを改善する目的では、補聴器等を使うこともある。
(平均聴力レベル:25dB以上40dB未満)

●中等度難聴
普通の大きさの声の会話で、聞き間違いや聞き取り困難を自覚する。
補聴器のよい適応となる。
(平均聴力レベル:40dB以上70dB未満)

高度難聴
非常に大きい声か、補聴器を用いないと会話が聞こえない。
音があることや会話の声があることは聞こえても、言葉の聞き分けには限界がある。
(平均聴力レベル:70dB以上90dB未満)

重度難聴
耳元で話されても聞き取れない。
補聴器を用いても、聞き取れないことが多く、人工内耳の装用も選択肢にあげられる。
(平均聴力レベル:90dB以上)

「身体障害者福祉法」により、聴覚障害には「身体障害者手帳」が交付されます。 
対象者には、補聴器購入時の「自立支援給付」(多くは1割を自己負担とする.5年ごと)がありますが、
補聴機器が最も有効な「軽中等度難聴」は、対象外となっています。

両耳難聴で、左右の聴力差がある人もいます。 

左右差が20dB以上あれば、聴力が重いほうの耳からのきこえにあまり頼れないため、聴力が軽い方の耳にだけ補聴器をつけている人も多いです(こどもの場合は、学校で言葉の学習が重要な時期なので、聴力差があっても両耳に付けることを推奨されることがあります)


  • 平均聴力レベルは、一般的に4分法という。左右それぞれの聴力閾値を(500Hz+1000Hz×2+2000Hz)÷4 で出した数値。
  • ・近年は全都道府県・全指定市で、18歳未満の子どもを対象に、「軽中等度難聴児補聴器購入費助成制度」が実施されているが、金額や対象の範囲は自治体で異なる。

②年代別

(日本産婦人科医会・アメリカの聴覚障害に関する統計資料2016から)

両耳難聴の発症率
・新生児期に発見できる永続的な両側高度以上の難聴の発症程度は、1000人に1~2人の割合で、これは片耳難聴の発症率とほぼ同じ。軽中等度難聴まで含めると、この倍以上の割合であるという報告もある。

・高齢になると、60代後半では3人に1人、75歳以上の7割は難聴であるという報告もある(上記①の基準による)。加齢による聴力低下は個人差が大きいが、40代から始まることもある。

③原因の部位 

(1)伝音難聴(でんおんなんちょう)

外耳(がいじ)~中耳(ちゅうじ)に原因がある場合。

  • ほとんどは軽度~中等度難聴で、小さな音が聞こえない(70dB以上は少ない)。
  • 小さい音が聞こえない場合、補聴器(音を大きくすること)の効果が高い。
  • 手術や治療で聴力が回復することが多い。

(2)感音難聴(かんおんなんちょう)

内耳(ないじ)と内耳より奥の部分に原因がある場合。

  • 軽度~全聾(ろう:まったく聞こえない)までと、幅広い。
  • 蝸牛(かぎゅう)神経から中枢側が正常であれば、人工内耳の適応となることもある。

さらに、障害部位による特徴があります。

内耳性
蝸牛に原因がある場合。

  • 補充現象(小さいおとは聞こえない、大きい音はうるさい)特徴がある。
  • 補聴器で音を大きくしてもひずんで聞こえるため、言葉の聞き分けがしにくい。

後迷路性
蝸牛神経~中枢までの聴覚伝導路に原因がある場合。

  • 音の聞こえに比べて、言葉(語音)の聞き分けがとても困難になる。
  • 聞きたい音が聞きにくい、雑音下で聴き取りにくい(選択力の低下)。
  • 治療で回復できないことが多い。

(3)混合難聴

「伝音難聴」と「感音難聴」が合わさったもの。

(その他)機能性難聴

原因部位は見つけられないが、難聴の状態であるもの。

参考:「耳と聞こえの仕組み「補充現象」 「人工内耳」

④聴力型(オージオグラムのタイプ)

聞こえ方の特徴
片耳難聴者も両耳難聴者も、自分の「オージオグラム」(きこえかたをグラフにしたもの)を読み取り、聴力の特徴をとらえておくと役に立ちます。


  • ・読み方
    縦軸:音の大きさ。下に行くほど聞こえない
    横軸:音の高さ。右に行くほど高くなる

●水平型
どの音の高さも、だいたい同じぐらいの聴力レベル。
「外耳道閉鎖症」の気導聴力、また「機能性難聴」などに見られる。

●高音漸傾(ぜんけい)型
段々と高い音が聞こえにくくなっている。
加齢性難聴、子どもの感音難聴に多くみられる。

●高音急墜型
「音」にはよく反応するが、言葉の聞き間違いをしやすい
(特に、子音s・k などの聞き分けが難しい)。

●低音障害型
「メニエール病」の初期、「慢性・滲出性中耳炎」の気導聴力などに多くみられる。

2.原因となる主な疾患

難聴をきたす主な疾患についてまとめました。
また、両耳難聴・片耳難聴についての傾向も付記しています。

伝音難聴

●先天性
内耳(蝸牛)は正常なことが多く、補聴器機器や手術で補聴が可能。

  • 外耳道狭窄・外耳道閉鎖
    生まれつき耳の穴が小さい、または閉じている状態
  • 小耳症・耳小骨奇形
    耳介(耳の外側に見える部分)が極端に小さい、また無い状態。
    中耳(ツチ・キヌタ・アブミ骨)に奇形が生じて音の振動が伝わりにくい。

●後天性

  • 中耳炎
    ‐急性中耳炎
    耳の痛み、発熱、鼓膜が赤く腫れる
    ほとんどの場合、自覚的に難聴を訴えることはない
    ‐滲出性中耳炎
    鼓膜の内側に液体や膿がたまり、鼓膜が動きにくくなる
    ‐慢性中耳炎
    繰り返し中耳炎となり、鼓膜に孔があいた状態
    耳漏(耳から液体が出てくること)があることも多い
    ‐真珠腫性中耳炎
    先天性・後天性の両方あり。
    放置すると骨を溶かすので、手術を要することが多い
  • 鼓膜穿孔
    ※片耳難聴が多い
    耳かきなどで直接的に、 平手打ちやボールが耳に当たることなどで間接的に
    鼓膜の一部が傷つき、破れる
  • 耳小骨離断や骨折
    ※片耳難聴が多い
    事故によって、鼓膜と内耳をつなぐ骨の間節が外れる、折れるなど
  • 耳硬化症
    アブミ骨底の動きが障害される。進行すると混合難聴になる

  • *中耳炎
  • 子どものうちは、喉と中耳腔をつなぐ耳管(じかん)が太く短いためなりやすい。
    小学校入学までに60〜70%の子供が一度はかかるという報告もある。
  • 参考:「予防できる病気は予防しよう」

感音難聴

●先天性(周産期を含む)

  • 難聴遺伝子変異
    100種類以上の種類が見つかっている
    先天性で高度以上の聴覚障害のうちの6割以上
    内耳奇形・染色体異常・蝸牛神経形成不全など
  • 胎児期の母体ウイルス感染
    風疹、サイトメガロウイルスなど
  • 聴器の奇形(内耳)の奇形
  • 低出生体重児や核黄疸、仮死分娩 など  

●後天性

  • 内耳炎
    ー細菌性髄膜炎などに伴うもの
    ーウイルスに伴うもの
     ムンプス(おたふく風邪)、麻疹など
    ※片耳難聴が多いが、両耳難聴の場合もある
  • 耳毒性薬物
    ー「~~マイシン系」という薬の種類による難聴
    ー抗がん剤の中で、副作用に高音が聞こえにくくなるものもある
  • 突発性難聴
    突然に発症する感音難聴のうち、原因が明確でないものの総称
    ※片耳難聴が多いが両耳難聴の場合もある
  • 若年発症型両側性難聴
    原因不明だが40歳未満で発症し、両耳とも段々と進行する
  • メニエール病
    めまいと難聴が消失・反復し、進行することが多い
  • 聴神経腫瘍
    ほとんどは下前庭神経にできる良性腫瘍
    ※片耳難聴が多いが両耳難聴の場合もある
  • 騒音性難聴、音響外傷 
    爆発など一時的なもの/騒音環境に継続的に晒されることによるものなど
  • 外傷・外リンパ瘻
    いきみ・潜水などで、中耳と内耳の間の膜が破れ、
    蝸牛内の外リンパ液が中耳腔に漏れ出る
    ※片耳難聴が多いが両耳難聴の場合もある
  • 加齢性難聴
    加齢に伴う難聴。発症年齢は個人差が大きい

参考:ムンプス難聴、中耳炎、騒音性難聴、音響外傷

3.聴覚検査

難聴原因が分からない場合も、聞こえの程度を知ることができます。

(1)自覚的検査

音に対して自分でボタンを押す・手を上げる・紙に書く、などの反応を見るもの。

①純音聴力検査
最も基本的な検査。

  • 検査音
    「ピーピー・チーチー・ブーブー・ゴーゴー」のような、高さの異なる7種類の「純音」。
  • 使用機器
    「オージオメータ」という機器を用い、気導聴力・骨導聴力の2種類の聴力を測る。

語音聴力検査
人間にとって、聴力は単に音を知覚するだけではなく、音声による言語を聞き取るということに用います。そこで、純音ではなく、日本語の音声言語の一部としての「語音」を検査音に用います。

  • 語音了解閾値検査
    語音がわかった(了解した)かを調べる。
    「2(ni)/ 3(san)/4(yon)…」など6種類の数字を
    はっきり了解できる音量~聞こえなくなるまでの音量までの間を聞き取り、
    記録紙に記入する。
    50%分かった閾値を語音了解閾値(SRT)と表す。
  • 語音弁別検査
    語音が聞き分けができるか調べる。
    「あ(a)・き(ki)・し(shi)」など、ひらがな一文字を声に出した、1単音節を
    1表につき、ランダムに20個聞き取り、記録紙に記入。
    弁別できた割合(%)を求め、最も高い値を語音明瞭度(語音弁別度)と表す。

・補聴器や人工内耳を装用していない裸耳と装用している場合の、聞き取りの比較もできる。
・補聴器や人工内耳の適応や評価、難聴の鑑別、障害者手帳の等級評価にも使用される。

聴覚検査

(2)他覚的検査

音刺激による生体反応を測定する検査です。

①インピーダンス・オージオメトリー

  • 鼓膜や耳小骨筋が、うまく働いているかの検査。
  • 中耳炎や耳小骨離断・耳硬化症などの中耳疾患の鑑別に使う。

②耳音響放射(OAE)

  • 蝸牛の中で、音の振動から神経の興奮(電気信号)に変換する重要な機能をもつ「外有毛細胞」の検査。
  • 音が蝸牛に伝わる際に伸縮する外有毛細胞から出る、かすかな「音」をもう一度外耳道内で加算して記録する。
  • 新生児スクリーニングにも用いられるが、偽陽性率が高い。

③電気生理学的検査(聴性脳幹反応ABR、聴性定常反応ASSRなど)

  • 音刺激によって生じた脳波を記録する検査。
  • 新生児スクリーニング(自動ABR)に用いる。
  • 障害者手帳2級(100dB以上)の交付の手続きでも必要となる。

(3)乳幼児の場合

5歳くらいまでは、ボタンを押したり字を書いたりする一般的な自覚的検査はまだできない場合が多いため、発達段階に応じて工夫をした検査をします。

  • 検査者が赤ちゃんの音に対する反射や反応を観察
  • 簡単な条件反射を利用して視線を確かめる

新生児聴力スクリーニング

生まれて間もない赤ちゃんが、生後数日の間に受ける検査です。

検査時点での「pass(異常なし)」か「refer(再検査をする必要がある)」を判定をするもので、すぐに難聴であると診断されるものではありません。

また異常なしだった場合も、その後の遅発性難聴や中耳炎が見つかるなど様々なケースがあるため、日常生活や定期健診ごとに「聞こえのチェック」は必要です。

  • 受ける場所
    ほとんどの場合、出産した病院(医院・助産院など)
  • 方法
    赤ちゃんが自然睡眠をしているときに、音を聞かせて測定する。
    数分で済み、赤ちゃんへの負担はほとんどない。
  • 使用機器
    2種のうちいずれかを使用。
    ‐ OAE(蝸牛の中の動きをみる)
    ‐ 自動ABR(蝸牛からの聴神経に伝わる脳波を見る。高価格で精度が高い)

  • ​​2000年頃~導入され、地域差もありますが最近では全国平均9割で実施。
    諸外国では法制化され、全ての赤ちゃんに無償でされる国も多くなっている。
    日本では、保護者の任意希望で、ここ数年で地方自治体独自による検査費用の助成が増えてきた。
  • 母子手帳に、結果を記入する項目がある。

参考書籍・情報

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