片耳難聴のある人の子育て(困ること、伝え方)

2026年3月5日 − Written by 東樹 詩織

片耳難聴の当事者として子育てをされてきた、17名の方々のエピソードを前編・後編に分けて紹介します。

前編

  • 片耳難聴が原因で困ったこと・工夫したこと
  • 自分の片耳難聴を、子どもにどう伝えるか
  • 子育てをする上で関わりのある大人にどう伝えるか

後編

  • あると助かるサポート・ツール
  • 保護者が片耳難聴であることの、子どもへの影響
  • これから子育てをする片耳難聴の方へのメッセージ

「自分が片耳難聴でも、問題なく子どもを育てていけるだろうか」
そのような不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。

基本的に聞こえにくさがあるのは他の場面と同様ですが、「子育てにおいては大きな問題はない!」という力強いメッセージも多くいただきました。

片耳難聴の発症時期や、お子さんの年齢など、状況は人それぞれではありますが、この記事がヒントとなりましたら幸いです。

アンケートにご協力いただいた方について
・回答者:17名(母親14名、父親3名)
・年代 :20代〜60代以上
・発症時期:先天性・幼少期・成人後まで
・難聴の程度:中等度〜重度が中心

1. 片耳難聴が原因で困ったこと・工夫したこと

子育てをするにあたり、自身が片耳難聴であることが原因で困ったこととして、以下の事柄が挙げられました。

困ったこと

  • 聞こえない方の耳からの内緒話が聞き取れない
  • 子どもの位置によっては会話がしづらい
  • 子どもの泣き声や呼びかけに気づきにくい
  • 家族から同時に話しかけられると聞き取りにくい
  • 子どもがどこから呼んでいるのかわかりにくい
  • 子どもの声が響いて辛い
  • 耳鳴りが悪化する
  • 聞こえる方の耳に叫ばれてしまう

対策も含めて、具体的なエピソードをいくつか紹介します。

子どもの位置によっては会話がしづらい

親が車道側を歩く際に、聞こえない耳が子どもと接する側になり会話がし辛いまた、レストラン等で聞こえやすい席に座りたいが、どうしても子どもの意思が優先となり、会話がし辛い時がある。対策として、子どもに「こっちの耳が聞こえない」ということをきちんと伝えている。(30代・母親・片耳の重度難聴)

子どもが洗面所で身支度をしているとき、自分がキッチンで皿洗いをしていると話が聞こえない。まずは、子どもとの会話を優先させる。できるだけ自分の手を止めて、話に耳を傾けるようにしている。(40代・母親・片耳の中等度難聴) 

家族から同時に話しかけられると聞き取れない

子どもたちが同時に喋りだすと聞きわけられない。複数人が同時に喋りだしたら、制止して「順番にね」と言っている。(40代・母親・片耳の重度難聴)

子どもがどこから呼んでいるのかわからない

子どもに呼ばれても、姿が見えないとどこから呼ばれているのかわからない。そんな時は「どこ?」と聞く。「こっちー!」としか言われないこともあるので、「場所は?」まで聞いている。(40代・母親・片耳の重度難聴)

子どもの声が響いて辛い

疲れている時は、子どもの声が特に耳に響き、辛く感じることもある。「お母さんはこっち(左)が聞こえないからね。大きい音はしんどくなってしまう」と伝え続けている。(40代・母親・片耳の高度難聴)

突発性難聴の発症後しばらく、補充現象なのか子どもの泣き声が響いてうるさかった。他の家族がいる時間など、自分が子どもにつきっきりでなくても大丈夫なときは、ノイズキャンセリングの耳栓をするようにしている。(30代・母親・片耳の中等度難聴)

耳鳴りが悪化する

耳鳴りが、夜泣きで睡眠不足になると余計にうるさくなる気がした。医師の提案で、日中は耳鳴り治療機能(サウンドジェネレーター)付き補聴器をつけるようにした。(30代・母親・片耳の中等度難聴)


聞こえる方の耳に叫ばれてしまう

子供が2歳の頃、聞こえる耳の方に叫ばれて、一時的に少し聞こえにくくなって焦ったまだ、叫ぶとパパが辛い思いをするということは理解できない歳なので、大声はスルーして、叫んでも面白いことは起きないとわかってもらうことで、叫ぶ回数を減らそうとしている。(20代・父親・片耳の高度難聴)

2. 自分の片耳難聴を、子どもにどう伝えるか

「子どもに、ご自身が片耳難聴であることを伝えましたか?」という質問には、
子どもが2歳になった頃から小学校に上がるまでの間に伝えているケースが多く、
自然に受け入れてもらったという方がほとんどでした。

  • 「伝えた」 14名
  • 「伝えていないが、今後伝える予定」 3名

上の子が2〜3歳で、内緒話を聞こえない耳にするなど困った状況が起きた時に「聞こえないからこっちね」と伝えた。何度も何度も繰り返し伝えているので子どもたちは自然に受けとめていると思う。どちらの耳が聞こえないかは覚えられないが、5歳頃からは「どっちの耳だっけ?」と聞いてくれる。(40代・母親・片耳の重度難聴)

当時2歳の子どもに「片耳が聞こえない」と言うと困った顔になったので、「こっちは聞こえるから大丈夫」と言ったら安心していた。(50代・母親・片耳の重度難聴)

幼稚園生くらいの時に伝えた。普段から片耳難聴のことを話していたので、意を決して伝えたという感覚はない。子供の反応は、「ふ〜ん」だった。(40代・父親・片耳の重度難聴)

幼稚園に入る頃に伝えた。「ママの右耳は聞こえにくいから、左耳に話しかけてね。呼んでも、ママが返事をしなかったらごめんね。話を聞いてないわけじゃないからね」と伝えると、「どうして?」と質問したり、「これは聞こえる?」と耳元で内緒話をしたり、純粋に不思議がっていた。まだ小さいので変に気を遣われることもなく、あまり深刻にならなかったのはよかった。(30代・母親・片耳の中等度難聴)

3. 子育てをする上で関わりのある大人にどう伝えるか

子育てをしていると、さまざまな形で他の大人と関わる機会があります。自身が片耳難聴であることを、関わりのある大人に伝えたかどうかをお聞きしました。

「誰にも伝えていない」という方も6名いらっしゃいました。

伝えた相手

  • 「ママ・パパ友」 10名
  • 「習い事の先生」 2名
  • 「保育士・幼稚園教諭」 1名
  • 「医師(子どもの受診時)」 1名
  • 「助産師(出産時)」 1名
  • 「自分の両親・兄弟・義両親」 1名

伝えた結果

「ママ・パパ友」に伝えた

接する人全てに伝える必要はないとは思うが、1人でも知ってくれているママ友がいると少し安心感がある。(30代・母親・片耳の重度難聴)

一緒に遊びに行く家族には「最近、聞こえなくなっちゃって」と伝えている。差別されるなどもなく心配してくれ、話のネタにもなっている。聞き返しても変に思われないし、聞きやすい位置に代わってほしいときにお願いしやすい。(20代・父親・片耳の中等度難聴)

体調を気にかけてくれることは良かったが、大人数での会話が疲れてしまうことは伝えても、理解されてないと思うことがある。(40代・母親・片耳の中等度難聴)

「習い事の先生」「ママ・パパ友」に伝えた

 懇親会等で席を決める際に配慮してもらえたのはよかった。
ただ、なるべく明るく伝えるようにはしているが、「片耳が聞こえないので」と言うと必要以上に気を遣われたり、「言わせてごめんなさい…」と謝られたりして微妙な空気になるのが居た堪れなかった。自分は自分のために「事実」を伝えているだけなのに、と思ってしまう。(50代・母親・片耳の重度難聴)

誰にも伝えていない

保育園の先生と親御さんには最初の自己紹介の時にさらっと伝えればよかったと、少し後悔している。すれ違いざまに挨拶を交わすことがよくあるが、子どもに集中しているときや、周りが騒がしいときに、スルーしてしまっていることがある気がする。(30代・母親・片耳の重度難聴)

自分が子育てをしていたのは20年以上前で、その頃は片耳難聴の情報もない状況だったため、相手に伝えるということをまったく考えなかった。今だったら伝えていたかもしれない。同じ幼稚園のママ友に声をかけられても、なかなか気づかないことが何度かあったので。(50代・母親・片耳の重度難聴)


続きは後編へ

「あると助かるサポート・ツール」「保護者が片耳難聴であることの、子どもへの影響」などを後編でご紹介します!

こちらへ

不便な場面はあっても、工夫や周囲のサポートを得ながら、安心して育児を続けていけますように。
この記事が、今まさに子育て中の方、そして今後子育てを予定している方のヒントとなりましたら幸いです。

感想や質問などありましたら、お便りフォームへお寄せください。

また、他の人と実際にお話してみたいときは「片耳難聴Cafe(交流会)」へ、専門家からのアドバイスが欲しいときは「個別相談」を、ご活用ください!

最後に、アンケートおよびインタビューにご協力くださった皆さん、ありがとうございました。

片耳難聴とは?

  • 片耳は正常聴力。もう一方の耳に、軽度~重度(聞こえにくい~聞こえない)の難聴がある状態。
  • 医学的診断名では「一側性難聴」「一側聾/片側聾」
  • きこいろでは、当事者以外にも馴染みやすい総称として「片耳難聴」を使用。
  • 36万人以上の片耳難聴の方が日本にはいると推定(きこいろ調べ)。

きこいろとは?

  • 2019年発足、日本で初めての片耳難聴の当事者コミュニティ。
  • 「聞こえ方は、いろいろ」略して「きこいろ」。
  • 専門家や当事者で運営する、全国組織の任意団体(ボランティアで運営) 。
  • 片耳難聴に関する情報発信、交流会や勉強会、個別相談、啓発活動などを行っている。

各情報はSNSでも発信中

著者紹介