テーマ「伝える?」片耳難聴Cafeイベントレポート

2021年1月5日 − Written by きこいろ編集部

今回のテーマ 「伝える?」

毎月さまざまなテーマや対象で開催している、しゃべり場「片耳難聴Cafe」

今回は「片耳難聴を伝える?」というテーマを設けました。

片耳難聴は、
片耳が正常聴力のため、いつも聞こえない…という訳でもなく

一見して、聞こえにくいとは分かりません。

たとえば、自然と聞こえる側の席や立ち位置を取る当事者は多くいますが
自分でポジションを確保できなかったとき
移動させてもらえるよう、周りの人にお願いするために
相手に自分の難聴を開示(カミングアウト)する必要が出てきます。

でも、伝えるのに緊張したり、不安を覚える人も少なくないのではないでしょうか。


主に話されたこと

参加者は、10代~50代の6人。
進行は、聞こえの専門職で『セルフアドボカシー』にも詳しい高井(副代表)が行いました。

お話した中から「伝える」にまつわるエピソードを一部記します。


  • セルフアドボカシーとは
  • 「Self-advocacy(自己権利擁護)」の意味。
  • 自分に必要なサポートを、自分でまわりの人に説明して、理解を得ようとすること。
  • 詳しくは、別記事にて近日公開予定。

最近、片耳難聴になった方のお話

  • 自分でも受けとめ切れていないこともあり、あまり周りの人に言えていない。
    聞こえないと周りの人にも申し訳ないし、もっと伝えられたらいいと思っているけれど、時間がかかるもの…と思っている。
    いつかさらっと話せる日が来るとも思う。
  • 何年か前に事故に遭い、後遺症で他の障害や片耳難聴になった。
    そのため周りの人は知っているが、理解までは得られていないと感じている。
    自分からわざわざ言うのもな…という気持ちがある。
    聞き返すときは、
    深刻に捉えられたくはないので「こっちの耳、聞こえなくてさー」と軽い感じで言うようにはしている。
    周りの反応は、人によって分かれるが、深刻そうに何とも言えない感じになる人もいれば、
    「片耳聞こえれば、大したことないじゃん」くらいに思われている人も多い気がする。

補聴器を使っている人

  • 最近は、ワイヤレスイヤホンを使っている人も多いので、
    あまり好奇の目で見られることもないかと人目も気にしないでいる。
  • 先天性の小耳症(外耳が小さい)だが、小学校の頃は誰にも話していなかった。
    中学校は仲の良い友達にだけ話した。
    高校生になってからクラスメイト皆に伝えるようになった。
    学校が変わって新しい環境になって、話しても大丈夫そうだなと思ったから。
    LINEで伝えた。聞こえる側から話してくれるクラスメイトもいる。
    最近は、軟骨伝導補聴器も使い始めている。

  • 片耳難聴に使える補聴機器については、こちら

職場でどうしているか

  • 職場で、上司に「片耳難聴のため、席を聞こえやすい位置に変えていただけないか」と伝えた。
    でも、はたらからは問題にないように見えるらしく「大丈夫でしょう」と言われてしまった。
    仕事が出来ていると評価と思えば良いが、それは聞こえにくさをカバーするように努力の結果なのに、と思う。
    ただ、職場の人間関係を壊したくないため、対応して貰えるよう上手く協力を求めていきたい。
  • 親しい友達や同僚にだけ伝えている。
    職場はフリーアドレス(自由に席を選べる)で自分で聞こえる席を選べるし、最近はリモートで聞こえで困ることもあまりない。
    だから、わざわざ言わなくてもいいかなという感じ。
    片耳難聴を伝えていない人からは、聞こえていなかったときに
    「マイペースだね」と言われるが、普段関わらない人にそう認識されるのは構わない。

周りの人の対応

  • 子どもの頃からの親友が
    「こいつ、こっちの耳聞こえないから席ここね」って周りの人に言ってくれる。
    何がきっかけか分からないが、大人になってからそうしてくれてるようになった。
    自分から言うと周りの人の空気が重くなる気がするので、他の人から言って貰えるのは良いと思っている。
    自分が聞こえてなさそうなときは、伝えてくれたり、すごく助かっている。

Tips!

4つの片耳難聴リーフレット
きこいろから配布している各種リーフレット

聞こえなかったとき、聞き返すのが気まずいな…と感じることもありますよね。

単純に「え?」「え?」と繰り返すより
TPOに応じて少しテクニックを使うと、相手にも伝わりやすく、自分も楽になるかも知れません。

聞き返しのバリエーションもいろいろ

例)
職場で、約束の時間が聞き取れなかった。

・「すみません、もう一度お願いできますか」と、丁寧に。 
「時間が、何時でしたか?」と、聞きたい部分を具体的に。
「(ご飯を食べた後のはずだから)13時?14時ですか?」と、推測して
状況によっては
 「他の人にもお知らせするので、メールで詳細を送ってもらえますか」と、
 テキスト化を活用など。

特に、コロナ渦でのソーシャルディスタンス・マスク越しの声は聞き取りにくく、
何度も聞き返さなければならないとき、
相手に「もっとハッキリ言ってくれたらいいな」と思うこともあります。

同時に、相手の立場にも立ってみると、
特に片耳難聴のことを開示していない相手であれば
「自分の話しをちゃんと聞いてくれていないのかな」
「自分の説明の仕方が悪かったのか」等と
相手も、誤解したり・結果的に上手く伝え返すことができない場合もあるかもしれません。

そのような誤解をされないように、聞き返すときは
「あなたの話を聞いています」という姿勢を示せるようなやり方
を意識できると良いのかもしれません。

あるいは、私たちの難聴が目に見えないように、
相手にも事情があることもあるでしょう。
疲れていたり風邪で声を張れないかもしれないし、
たとえば、吃音失語症などがあり、話しにくいという人もいます。

「もっとハッキリ話してください」
ということが、片耳難聴にとって良いとき、ある人にとっては大変さが生じうるのです。

大切なのは、「聞く・話す」「コミュニケーション」は
一方だけのものではなく、双方向のものであること、
そして、「その方法は1つ・正解や絶対があるのではなく、人それぞれ」
という視点なのかもしれません。


聞こえにくさを伝えることも、
誰しもあるさまざまな事情も、
互いの背景を想像し、確かめ合いながら
お互いにとってよりよいコミュニケーションを調整できるとよいなと、
今回の片耳難聴Cafeを通して考えさせられました。

参加者の皆さん、記事執筆をお手伝い頂いたボランティアメンバー、
ありがとうございました!

片耳難聴Cafeは、
会員メンバー以外でも参加できるオープンなイベントです。
詳細・申込みは、こちらから。

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