小耳症・外耳道閉鎖症 〜耳のかたちと「きこえ」〜

2026年6月1日 − Written by 高井 小織

私たちは自分や相手の顔かたちには高い関心を示しますが、耳についてはどうでしょう。

最近は「立ち耳がかわいいから美容整形する」という話題を聞いたことがありますが、多くの方はあまり関心がないのではないでしょうか。

一人ひとりの耳を外側からよく見ると、顔かたち以上に個性的です。
丸い、細長い、ひだの形や厚み、耳たぶが大きいからお金がたまる、ピアスの穴が…など。

なぜ、これほど個性的かというと、胎内の発生から関係があります。
大昔、生命は海で生まれたことは知られていますが、聴覚器は魚の側線や鰓、両生類の顎などが起源です。

これらが長い年月を経て複雑な人間の耳を作ります。外から見えている外耳(耳介と外耳道)、中耳(鼓膜とその奥の耳小骨と鼓室)、そして、内耳(2回転半のかたつむりのような蝸牛で、振動を電気信号に変えて脳に届ける)です。
参考:「耳・聞こえの仕組み

この中で、胎児がまだ1㎝にもならないぐらいの小さいときから、耳介は複数の(さい)(きゅう)(魚のエラが進化した箇所)が組み合わさってだんだんと形作られます。

実は 内耳の蝸牛や中耳の耳小骨は、この外耳とは全く別の発生起源なのです。胎内の別々な箇所で複雑につくられた この3つの部品は、胎生24週ごろに境目になる鼓膜と合わさって完成します。

この複雑な発生の時期に、微細なものから重大なものまで、形が通常と異なるものがあります。

原因のほとんどは、偶然のなせるわざですが、トリーチャーコリンズ症候群(主に両耳難聴や頬骨の形成不全など)だけは、特定の遺伝子変異がかかわっています。

微細なものの代表である「耳瘻孔(じろうこう)」とは、生まれたときに 耳介の周りにその隙間(ほんの小さな穴)がある状態のことです。膿があれば切開することもありますが、これだけであれば、きこえに影響はない場合がほとんどです。

耳瘻孔

この記事では特に、「小耳症(しょうじしょう)」、片耳難聴の要因の1つでもある「外耳道閉鎖症(がいじぞうへいさしょう)について紹介します。

  1. 小耳症 とは
  2. きこえへの影響
  3. 検査と診断
  4. 治療と支援(耳介形成、補聴)
  5. 生活の工夫、相談先

小耳症とは

生まれつき、耳介(外から見えている部分「みみたぶ」)が小さい・形が十分にできていない状態です。

片方だけにみられることも、両方にみられることもあります(多くは片側で、1割程度が両側)。

耳の穴(外耳道)が狭い/閉じている状態を伴っていると「外耳道閉鎖症」になります。

中耳(ちゅうじ:鼓膜の奥の空間)、耳小骨(じしょうこつ:音を伝える小さな骨)も定型と異なる場合があり、その組み合わせによって「きこえ」への影響が変わります。

  • 耳介の形の違い:小さい、しわが少ない、耳たぶが小さい/位置が違うなど
  • 外耳道の狭窄・閉鎖:耳の穴が細い、または閉じている(先天性外耳道閉鎖)状態。軟骨で閉鎖されているか、骨による閉鎖かによっても区別する
  • 中耳の発育の違い:耳小骨のつながりや形の違いなど
  • 合併:顔面(頬やあご)の発育の左右差など、別の特徴と一緒にみられることがある

発生頻度

小耳症は、日本で出生5,000〜10,000人に1人程度で、性別では男児で右耳にやや多いとされます。

先天性外耳道閉鎖症は、国内では出生10,000人に1人程度です。

「きこえ」への影響(伝音難聴の有無)

耳介の形が少し異なる程度であれば、聴覚への影響はほとんどありません。

また、片耳だけ外耳道が多少細いが閉鎖はしていない場合、聴力の左右差が気にならない程度の例もあります。

外耳道や中耳に影響すると、音が内耳まで届きにくくなる「伝音難聴(でんおんなんちょう)」がみられます。
空気中を伝わる振動である音が、内耳(ないじ)に伝わりにくくなる難聴です。

40〜70dB(デシベル)前後の、軽度難聴(ささやき声や小声が聞き取りにくい)~中等度難聴(普通の会話が聞きづらい)程度が多く、全く聞こえないわけではありません。

後に聴力が同じ原因によって、聴力が悪化することはありません。

なお、内耳は比較的正常に近い状態が維持されているため、バランス感覚に影響することはほとんどありません。

検査と診断

  • 耳の診察:外耳・外耳道、鼓膜や中耳の状態・皮膚の状態など。
  • 画像検査:CT・MRIなどで、中耳の骨の形や空間を確認(軟骨性・骨性閉鎖の区別、手術の検討時など)。
  • 聴力検査:乳幼児では年齢に応じた方法、学童以降は純音聴力検査など。

聴力検査は、5歳くらいまでは、ボタンを押したり字を書いたりする一般的な自覚的検査はまだできない場合が多いため、発達段階に応じて工夫をした検査をします(検査者が赤ちゃんの音に対する反射や反応を観察、簡単な条件反射を利用して視線を確かめる)。

また、睡眠時に音を入れて 脳派の変化を調べる「自動ABR(蝸牛からの聴神経に伝わる脳波を見る。高価格で精度が高い:Auditory Brainstem Response)」などがあります。

学童以降の純音聴力検査については、こちら

治療と支援
『耳の形』と『きこえ』は別々に考える

小耳症の治療には大きく分けて、以下の2つです。

  1. 耳の形を整える治療(耳介形成:形成外科領域)
  2. きこえを補償する治療(聴覚支援:耳鼻科領域)

両者は関係しますが、目的や時期が必ずしも同じではありません。本人・家族の希望、耳の状態、生活への影響を踏まえて、段階的に検討します。

耳介形成術

成長や本人の希望、生活上の必要性(眼鏡・マスクの装着など)を踏まえて検討します

手術の方法や回数、入院の有無、術後の注意点は施設や個人の状態によって異なります。まずは形成外科で、期待できること・難しいことを含めて説明を受けることが大切です。

日本での耳介再建の代表的な選択肢としては、自分の(じょ)軟骨(なんこつ)を用いる方法です。

通常、小学校高学年(助軟骨が十分な大きさとなる)~20歳前後までに2回にわけて行われます。

第1期手術(助軟骨移植術) 
・助軟骨を採取し、形を整えたり組み合わせて耳介の形態(軟骨フレーム)を作る
・軟骨フレームを皮下に埋め込む
・元の耳は耳垂(みみたぶ)などとして後方に移動することもある

第2期手術
・耳介周囲を切開して、耳を立たせる耳介挙上術を行う
・必要に応じて外耳孔や溝を作る手術を行う

補聴について

感音難聴(かんおんなんちょう:音を感じ取る「内耳」以降に原因)ではなく、「伝音難聴」であることがほとんどのため、適切な補聴手段による効果が高いです。

片側が小耳症・外耳道閉鎖の場合
乳児期でのことばの発達への影響は大きくないこともあり、使用率は低いです。支援者は、保護者に対して心理的に安定できるように心がける必要があります。

・ 両側が小耳症・外耳道閉鎖の場合
両側中等度の伝音難聴の状態であることが多いため、補聴(きこえを補償する)を第一に考えて、乳児早期から骨導補聴器などを検討します。

代表的な補聴手段

参考:片耳難聴に使える補聴器

手術は不要

  • 補聴器(空気伝導):外耳道が開いている/使用できる場合に検討。形状は耳かけ型など
  • 骨導補聴器・軟骨導補聴器:骨や軟骨の振動を利用して内耳へ音を届ける。ヘッドバンド(ソフトバンド)型・医療用両面テープで固定する方法など

詳細:軟骨伝導補聴器

手術が必要

  • 骨固定型補聴器・人工中耳:骨導の仕組みを、手術で装置を固定・埋め込みして安定して使う方法。適応・年齢・耳介再建との順番は施設方針や個々の状態で異なるため、専門医と相談する。
  • 外耳道形成・中耳手術:すべての方が対象になるわけではない。

骨固定型補聴器には、音を集音するプロセッサーを、頭部のインプラントに接続する「半植込み型」と、振動子も含めてすべて皮下に埋め込む「全植込み型(能動型)」の2種類があります。

日常生活・学校での工夫

片耳伝音難聴の場合は、主に「きこいろ」内の片耳難聴一般の記事と同様の対応となりますのでご覧ください。

主な対応の工夫

  • 聞こえる側、または正面から話しかける
  • 話すときは、なるべく静かな環境で
  • 遠くから呼ぶときは、身振りもつける

また、耳にマスクの紐が掛けられない場合は「頭の後ろで結ぶタイプ」等を使用したり(参考「ユニバーサルなマスク」)、イヤホンを耳穴に入れられない場合は「ヘッドホン」等の使用(公的な試験時も申請可能:参考「合理的配慮」)といった小耳症・外耳道閉鎖症の工夫もあります。


相談先

小耳症は、外見のことが話題になりやすく、本人が年齢とともに気にする点も変化します。

片耳難聴の共通の課題として、周囲から見えにくく、誤解や遠慮が積み重なって疲れてしまうこともあります。

「本人が困っているかどうか」を丁寧に確認し、必要であれば早めに相談することが安心につながります。
相談内容に応じて、以下のような機関があります。

  • 耳鼻咽喉科:聴力評価、補聴・骨導機器、外耳道や中耳の評価
  • 形成外科:耳介再建(耳の形)についての相談

例)札幌医科大学形成外科 (国内で小耳症の形成外科手術件数が最も多い):https://web.sapmed.ac.jp/prs/shojisho/

  • 言語聴覚士・聴覚支援の専門職:聞こえの評価や機器の活用、聞き取りの工夫
  • 学校(担任・特別支援教育コーディネーター等):座席や情報保障、日常の配慮の調整
  • セルフヘルプグループ:当事者や保護者同士の交流など

例)こみこみ(LINEを中心とした情報交換など) https://comicomi-line.jimdofree.com/
  みみとも東京(都内でのオフ会など)https://www.microtiacircle-mimitomotokyo.com/

きこいろでも、小耳症・外耳道閉鎖症のある運営メンバーがおり、定期的な「小耳症・外耳道閉鎖症の片耳難聴の交流会」の開催や、専門家による「個別相談」も行っています。(告知は随時:片耳難聴Cafeページ等にて)

小耳症は「耳の形」の違いとして見えることと、「きこえ」への影響する部分の両方があります。

大切なのは、見た目や聴力だけで判断せず、生まれて成長するそれぞれの段階で、その子どもさんを中心に生活や環境について一緒に確かめることです。

医療(形成外科・耳鼻咽喉科)と日常の配慮を組み合わせることで、学びや生活のしやすさは大きく変わります。気になることがあれば、早めに専門機関へ相談してください。


  • イラスト:京都光華大学 学生 和田萌

関連情報:お子さん/家族向け

・家族も参加できる「親子交流会」
・お子さん向けの交流会「小中学生の会」
・エピソードコラム「片耳難聴と学校生活」
「幼い頃、片耳難聴でどうたった?」
・知識「ことばの発達や学業への影響」 

きこいろ とは

  • 専門家や当事者の有志で運営する全国規模の任意団体(ボランタリー組織)。
  • 2019年に発足し、日本で初めての片耳難聴に特化した活動を行う。
  • 「聞こえ方は、いろいろ」略して「きこいろ」。
  • 片耳難聴に関する情報発信、交流会や勉強会、啓発活動などを行っている。

片耳難聴とは

  • 片耳は正常聴力。
  • もう一方の耳に、軽度~重度(聞こえにくい~聞こえない)の難聴がある状態。
  • 医学的診断名では「一側性難聴」「一側聾/片側聾」。
  • きこいろでは、当事者以外にも馴染みやすい総称として「片耳難聴」を総称として使用。

※本資料は一般的な説明です。検査や治療の適応・時期・方法は個人差が大きいため、必ず主治医・専門職と相談してください。

著者紹介