埼玉県にある坂戸ろう学園の「おひさまの会(一側性難聴の子どもと親の会)」の交流・勉強会で、プロジェクトメンバーの日置(当事者/公認会計士)がゲストスピーカーを務めました。
この記事では、当日の様子を一部ご紹介します!
保護者から寄せられた質問への日置からの回答と、きこいろの代表(聞こえの専門家)による補足コメントです。
- *「おひさまの会」とは
ろう学校では、“地域のセンター的機能” も担っており、ろう学校に通っている子どもたちだけでなく、地域に住む聴覚障害のお子さんの教育相談にも応じています。相談支援の一環として、坂戸ろう学園の乳幼児教育相談では、片耳難聴を持つお子さんとご家族を対象としたグループ支援を行っています(詳細・過去のレポートはこちら)

全体の様子
主なトピック
- 聴力検査は年に一度を推奨
- 先天性の片耳難聴の50~60%は原因不明
- 通級指導「ことばの教室」は、個々の課題がある場合に
- 言葉の聞き間違いは、難聴以外にも「音韻意識」が影響
- 騒がしい場所が苦手なのを、無理に克服する必要ない
- イヤホンの使い方、難聴かどうかに関わらず注意
- 片耳難聴で音の方向が分からないために、気を付けること
幼稚園~小学校の片耳難聴のお子さんが参加し、
子ども達はろう学校の先生方と一緒に、おもちゃで遊んだり楽しく過ごしていました。
概 要
- 日時 :2023/12/16(土)10:00~11:30
- 参加者:片耳難聴のお子さんのいる6家族
- 内容 :第一部 日置の当事者としての経験談の紹介
第二部 フリーディスカッション
- *日置勇樹 プロフィール
公認会計士、きこいろプロジェクトメンバー。1995年生まれ。小学校の健診時に、先天性の右耳難聴が分かる。原因は、先天性のアブミ骨の形成不全と三半規管の石灰化で、アブミ骨手術の経験がある。普段、補聴機器の使用はしておらず、周りの人への開示は必要に応じてしている。

Q. 今でも定期的に耳鼻科に行っている?
A.
-日置コメント
僕は特に治療することもないし、定期検査にも行ってない。
-専門家コメント
耳鼻科診療としては、年に一度の聴力検査が推奨されています。
目的は良聴耳の聞こえが悪くなっていないか確認することです(参考記事「聞こえる耳を大切にするために」)。
Q. まだ1歳で原因を特定していない。
特定のために病院にたくさん行った方がいいか?
特定のために病院にたくさん行った方がいいか?
-日置コメント
僕としてはセカンドオピニオンは重要だと思うけど、たくさん行く必要はないと思う…。
お子さんの負担にならないよう、慎重に検討する必要がある。
-専門家コメント
いくつもの病院を巡っても原因が分からないと言われることも少なくありません。先天性の片耳難聴の50~60%は原因不明であると言われています。
先天性の片耳難聴の原因で多いと言われている、中耳や内耳の形成不全(奇形)を鑑別するために画像診断(CT)は有用な情報が得られることがあるかもしれません。

Q. 学校に「ことばの教室(通級指導)」があり、
言葉の練習や片耳難聴の相談などするか迷っている。
言葉の練習や片耳難聴の相談などするか迷っている。
-日置コメント
僕自身はそういうことができる環境が全くなかったので、せっかくできるのであれば経験してみてもいいかなと思う。
-専門家コメント
現時点でことばの発達に課題が見られるようであれば相談した方が良いかもしれませんが、片耳難聴だからといって全員が相談すべきとは思っていません。
授業を抜けるデメリットもあるからです。
また「片耳難聴=国語力が低下する」と言うのは個人差があり、必ずしも言い切れることではありません。
ことばの発達にどのような課題があり、どのような支援が必要なのかアセスメント(客観的な評価や分析)を受け、授業を抜けるデメリットに勝る教育的効果が見込める場合に、通級することをお勧めします。
- *「ことばの教室」とは?
通常学級で授業を受けながら、個別の指導が必要な子どもたちが通う教室(通級指導教室:通級)。
さまざまな障害に対して実施されている。難聴の場合は、「聞こえの教室」「ことばの教室」などと言う。言葉の指導や教科学習の補助指導などが行われる。
地域に何校か通級指導教室を設置している学校があり、普段は通常授業を受け、週に数時間だけクラスを抜けて通う。
地域によって対応は様々で、難聴に限らず通級指導教室に通いたい子どもたちは増加しており、片耳難聴児を受け入れているところは多くはない。
文部科学省では「補聴器等の使用によっても通常の話声の聞き取りが困難で、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする」を対象としている(詳細)。
Q. 子供が「り」を「び」として聞いていたことが最近わかった。
間違って聞いているから?
間違って聞いているから?
-日置コメント
片耳難聴が原因かどうかわからないが、違う音で覚えてしまっていた言葉はある。
-専門家コメント
難聴以外の要因によるものと考えられます。
単語の中の1つ1つの音を聞き分ける力(=音韻意識)が影響しており、とくに4歳以下のお子さんでは個人差が大きいです。
文字学習が進んでくると解消されてきますが、聞き間違えが目立つようであれば言語聴覚士に相談することをお勧めします。
Q. 第二言語を学ぶ時に
片耳難聴で苦労したこと、周りと違うと感じたことはある?
片耳難聴で苦労したこと、周りと違うと感じたことはある?
-日置コメント
僕は、小学校2年の終わりからアメリカで生活していたが、特に片耳難聴で苦労したことはない。
そもそも、英語が分からない状態で行ったので、相手からすると「英語が全く話せないやつがきた」と、簡単な言葉ではっきりジェスチャー交えて伝えてくれたのでデメリットは感じなかった。大人になってから学習すると、また違うかも。
(参考「リスニングテスト時などの合理的配慮」)
-専門家コメント
私自身(片耳難聴当事者)は第二言語の習得には苦労していますが(笑)、それは片耳難聴によるものではないと思っています。
(参考「ことばの発達や学業への影響」)

Q.「片耳で集中して聞かないといけない」
と本人が思い、疲れることがある?
子どもは、家に帰ってきたらすぐ寝てしまうことがある。
あえて、騒がしい場所などを経験して克服させる方がいい?
と本人が思い、疲れることがある?
子どもは、家に帰ってきたらすぐ寝てしまうことがある。
あえて、騒がしい場所などを経験して克服させる方がいい?
A.
-日置コメント
僕も気疲れしてしまうこともあったし、今もある。聞き逃しちゃいけない…と思って疲れてしまう。
親が少し疲れてるかな?と、気づいてあげるのはとても良いことだと思う。
結果として、聞こえないことがあることを受け入れるようになって、
全部が聞こえなかったとしても諦めることが身についたので、気疲れが少なくなった。
-専門家コメント
騒がしいところなど聞きにくい場面で、一生懸命聞き取ろうと無意識に神経を集中させる場面も少なくはないと思います。
「Listening Effort(傾聴の努力)」といい、片耳難聴のある人や子どもたちではこのListening Effortが高いことが報告されています。
片耳難聴だからと言って、敢えて苦手なことを克服させる必要もなければ、避ける必要もないと思います。
Q. 世間話・噂話を周りがしている時に
キーワードだけ聞こえてしまって気になってしまうようだが…
キーワードだけ聞こえてしまって気になってしまうようだが…
A.
-日置コメント
僕も気になることもあるけど、「聞こえなかったらしょうがない」って思ってしまうようにしてる。
-専門家コメント
片耳難聴の有無に関わらず、多かれ少なかれ誰しもが気になるのではないかと思います。
性格による部分も大きく、人それぞれなのではないかと思います。
Q. イヤホンの音量に気をつけるなどしている?
A.
-日置コメント
危険等の察知のため、イヤホンで完全に周りの音が聞こえない状態にしているのは、
難聴かどうかに関わらず、危ないこともあると思う。
自分は「外部の音を取り込む設定」をしている(参考記事「片耳難聴にも役立つ音響機器」)。
-専門家コメント
いわゆる「ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)」と言って、長時間ヘッドホンやイヤホンを装用して大音量を聞き続けることで難聴のリスクが高まることが世界的に注目を集めています。
どれくらいのボリュームをどれくらいの時間聞き続けるかということが関係しています(参考記事「音楽を楽しむときのヒント」)。
ボリュームの目安は、周りの人と会話が出来ないほどのボリュームに上げないことです。
- ボリュームを上げすぎない
例:・リミッター機能やノイズキャンセリング機能のついているヘッドホン/イヤホンを使用する
・スマホの聴覚保護機能を使い85dB以上のボリュームが出ないように設定する - 長時間使用しない(1時間聴いたら15分休むなど

Q. 暮らしの中で、片耳難聴のために
危険などを感じることはある?
危険などを感じることはある?
A.
-日置コメント
僕の感覚としては、車に気を付ける必要があると思う。
音で気がつくのが難しく、轢かれそうになったり。
特に、誰かと話をしながら歩いてると「聞こえる側には人がいる・つまり、聞こえない側に車道」という状態になる場合があるので、より音に気がつけなくなる。
-専門家コメント
片耳に難聴があると、音の方向が分かりにくくなります(参考「両耳聴効果」)。
視界に入らない車や自転車などが、どこから来るのか分かりにくいこともあるかもしれません。
一般的な交通ルールを守ること、また「何か音がしたら、振り返って視覚的に音源を確認する」等の対応が必要となります。
背後から近づいてくる車や自転車については歩行者側が無理に避ける必要はありません。下手に避けずに真っすぐ歩き続けた方が安全な場合もあります。
参加者の声
- 当事者の話、特に子どもの頃の話を聞けて良かったです。
親としてできること/できないことをイメージできました。 - 年齢が上がるにつれ、これからの成長で困ることはないのかなど
不安になっていたため、様々な工夫をして過ごしていると知り、参考になりました。 - 周りに同じ境遇の方もいないため、
日置さんのお話や、ほかのご家族のお話が聞けて良かったです。
本人の気持ちを大事に、よく話しながら成長を見守っていきたいと思います。

片耳難聴とは?
片耳は正常聴力。
もう一方の耳に、軽度~重度(聞こえにくい~聞こえない)の難聴がある状態。
医学的診断名では「一側性難聴」「一側聾/片側聾」。
きこいろとは?
2019年に発足した日本で初めての片耳難聴の当事者を中心とした任意団体(ボランタリー組織) 。
「聞こえ方は、いろいろ」略して「きこいろ」。
片耳難聴に関する情報発信、交流会や勉強会、啓発活動などを行っている。
・きこいろについて知りたい方は「きこいろとは」へ
・会員メンバーになりたい方は「入会のご案内」へ
