オンライン(Zoom)にて、片耳難聴のあるお子さんの保護者を主な対象に「家族のための片耳難聴Cafe」を行いました。
シーズン毎に行っている「家族の会」は、2021年12月の今回で7回目の開催。
乳幼児~小学生までのお子さんのいる、6家族が参加し、
画面越しに、お子さん同士が顔を合わせる機会もありました。
初参加の親御さんがほとんどで、緊張しながらも、
きこいろ副代表 高井(言語聴覚士/片耳難聴当事者)の進行のもと
それぞれのお子さんのご様子や、ご家族の心配を共有しました。
- 片耳難聴Cafeとは:
- 少人数で気軽に、片耳難聴について話せる交流会。参加費無料。1度のみの参加もリピートもOK。
- 当事者を対象とした会は、毎月1回実施(現在は、オンラインのみ)。周りの方も準対象者として参加可。
- 詳細・申し込み:https://kikoiro.com/about/cafe/
また、当日の様子を河北新報社に掲載いただきました。

主に話されたこと
片耳難聴のあるお子さんも、そのご家族も様々です。
補足を交えて一部紹介します。
言語発達・学業への影響について
- 新生児スクリーニングで片耳難聴が分かった。
言葉の発達に影響を与えるのでは?気を付けた方がいいのか?と心配。 - 幼稚園で先生に伝えており、先生からは「こちらが時々、片耳難聴のことを忘れるくらい問題なく過ごしている」と聞いている。
でも、小学校入学にあたって授業についていけるのか?など心配。 - 学年が上がるにつれ、勉強も難しくなるため、
片耳難聴による学力やコミュニケーションへの影響が心配。
利用できるサポート、支援はあるのか気になる。
→Hint!
・片耳難聴で言語発達が遅れるという明確なエビデンスはない。
聞き取りやすいように、顔を見て話すことや、視線を合わせて話すことが大切。
(詳細:「ことばの発達や学業への影響」)
・特に、母音よりも子音は聞き取りにくいため、間違えやすいことがある(ex:「いちじ」と「しちじ」)。
聞き返しがあったときに、違う言葉に換えて話してみると伝わりやすくなることがある(ex:「しちじ」を「ななじ」と言い換える)。
・片耳難聴の場合、通常学級に在籍する場合がほとんど。
利用できるサポートには地域差があるが、通常学級の中で、学校在籍の特別教育支援員のサポートや、通級指導教室(言葉と聞こえの教室)がある。
- ●新生児スクリーニングとは:
- 新生児スクリーニング聴覚検査。先天性の難聴を早期に発見し、適切な養育を行うことが目的。
2000年以降に導入され、希望する場合に病院で受ける。
検査方法は、①OAE(耳音響放射:反響音を検査) ②自動ABR(自動聴性脳幹反応:音を聞いた時の脳からの電気的反応を検出)が使用されている。 - ●聞こえの教室(難聴・言語通級指導教室の通称)
- 通常学級で授業を受けながら、個別の指導が必要な子どもたちが通う教室。普段は通常授業を受け、週に数時間だけクラスを抜けて通う。
- 難聴に限らず、通級指導教室に通いたい子どもたちも多く、片耳難聴児を受け入れているところは多くはない。
補聴器について

- きこいろで補聴機器を知り、学校で「デジタルワイヤレス補聴援助システム」を使っている。
受信機は自費で買う必要があったが、運良く「話し手が持つマイク(送信機)」は教育委員会から借りることができた。
コロナ禍になり、生徒も皆マスクを着用しており、声が余計に聞き取りづらい様子。
授業で同級生が話すときにも、マイクを使ってもらっている。
説明するために、”トリセツ” (片耳難聴があること・お願いの説明)を子どもと作成し、配布していた。 - 初めて知った。子どもが困ったときには、使ってみたいと思う。
→Hint!
・マイクの機能がなくとも「マイクを持つこと」自体が、話者が分かるようになり、
聞き取りの注意を向けやすく、有効なときがある。
・試してみて、使うか・また継続して使うかも本人の意思を尊重することが大切。
・最近は、自治体の「軽中等度難聴の補聴器助成」が適用されることもあるため確認してみるとよい。
(詳細:「片耳難聴に使える補聴機器」)
伝えることについて
- 子どもがまだ小さいので、親が先生に伝えて、座る席を配慮してもらっている。
- 子どもが小さいうちは、親が周囲に伝えてきた。
子どもが思春期に差し掛かり、「周囲にあまり伝えてほしくない」と言うようになった。
「本人の好きなようにしたらいいよ」と言っているが、他の人はどうしているのか。 - 子どもは、「周囲に伝えて気遣ってもらうことが申し訳ない」と言っている。
親としてどんな言葉をかけたらよいか悩む。
→Hint!
・子どもが聞こえなかったことに気づいて伝えてきたときには、受容的に接する。
「よく気づいて教えてくれたね」など。
・片耳難聴だけが特別ではなく、得手不得手は誰にでもあるもの。
自分から上手く相手に伝えられるようになると、生活しやすい。
相手にも、コミュニケーションがより快適になるならプラスのはず。

当事者への質問として
- 片耳難聴の当事者の視点から、親にはどのように関わってほしいか?
→Hint!
・片耳難聴を強調し過ぎたり、なにかを諦めなければいけないと止められることもなく、
自然に接してくれたことが良かった。
本人が困っている度合いに合わせて接して欲しい。
- 聞こえないことでストレスを感じたり、落ち込むことはあるか?どうしている?
→Hint!
・新しい環境に入った時期(知らないことが多い・周りと関係を築けていない・自信がない等)に聞き返すのを躊躇してしまったり、聞き返しが多いと凹むことがあるなと認識している。
でも、仮に「自分の友達が片耳難聴だったら?」と想像したりして、
聞こえないことは悪いことではなく、配慮を面倒に感じたりはしないはずだ!、と思い直す。
参加者の感想

- 知らないことが多く、参考になった。
- まだ未就学の片耳難聴の子どもで、これから集団行動やコミュニケーション、スポーツなど、できるのか心配だった。
年齢が上のお子さんの話を聞いて、明るく見通せるようになった。 - 「片耳難聴だけが特別なのではなく、困っている人がいたら助ける」
という意識を小さい頃から育てていけたら、生きやすい社会になると思った。 - 家族以外と娘の片耳難聴について話す機会はほとんど無かったため、新鮮だった。
(片耳難聴であることを隠している訳ではなく、
当事者や家族でないと、変に気を遣わせてしまってはと思い、深く話をすることはあまりなかったため。)
片耳難聴への理解を深め、娘が困った時や悩んだ時に色々な選択肢を与えられたり、
一緒に寄り添える家族でありたいと思った。
関連情報
- 対応策
「聞こえる耳を大切にするために」
「学校で周りの人ができる工夫」
「家族が日常生活でできる工夫」 - エピソードコラム
「親として。片耳難聴のある子どもとの関わり」
「親との関わり。片耳難聴ののある子どもの声」
「学校生活(授業・部活/サークル・友達・先生) - 当事者インタビュー
大学生「生まれつきの片耳ライフ」
中学生「人とは違う耳の形、愛着があって」
父親「親にできることは”子どもを大切にすることだけ”」 - 書籍紹介
中学生で片耳難聴の主人公を描いた「蝶の羽ばたき、その先へ」
*きこいろでは、エビデンスに基づく知識や役立つ情報、当事者のリアルな声をお届けしています。