【連載】片耳難聴と学校生活(Pt.3 授業について)

2021年9月1日 − Written by きこいろ編集部

今回は「授業で困ることと工夫の仕方」について当事者の皆さんからのアンケート結果をまとめました。

10代の現役学生~当時の学生時代を思い出して回答して下さった50代までと、幅広い年代の方々に実体験をお寄せいただきました(59名)。

part1「先生に伝える?」part2「友達に伝える?」に続いて、今回の体験やご意見も様々です。一例としてご参考までにお読みください!

あまり困ったことはない

一般的には、片方の耳が正常に聞こえていれば「ことばの発達や学業に大きな影響はない」と報告されています。今回のアンケートでも、授業中についてはあまり困っていないと感じている人もいました。

  • あまり授業で聞こえづらいと思ったことはなかった。
    (大学・専門学生. 先天性の片耳難聴)
  • 近視のため、中学と高校では前側の座席を割り当てられたので、聞き取りも悪くなかった。大学は自由着席だったので、自分で右側の座席を選んで座っていた。
    (20~30代)
  • 小学~中学は、特に20人未満と少人数の学校であまりうるさくなかったので大丈夫だった。
    (大学・専門学生. 先天性の片耳難聴)

片耳難聴で授業中に困る場面

しかし、やはり困る場面があると答えた人が多くいました。
主に挙げられたのが以下の内容でした。

  • グループワーク
  • 英語の授業
  • 体育の授業
  • マスクをしての会話

具体的に困ることや工夫を回答いただきました。

グループワーク

アンケートの回答で、約2割を占めたグループワークの場面。

片耳難聴であると両耳聴効果が得られないため、雑音下での聞き取りが難しくなります。
そのため、複数人のにぎやかになる会話を苦手に思う方も多く、
加えて、複数人がいる場面では自分の聞こえやすい端の位置が取りにくくなることもあり、
話しの内容が理解しにくいという経験をする方がいました。

  • 数人のグループ活動で輪になって話し合う時、位置によっては聞こえない。
    目で情報を得やすいように、皆が視界に入るよう椅子を後ろにずらしたり、聞こえない側にいる人に対して、気付かない時は肩を叩いて呼んでもらうようお願いした。
    (40~50代.先天性の片耳難聴)
  • 授業で「人と相談してみよう」みたいな場面があると周りが騒がしく、対面の向きに座っても聞き取りが難しいことがあったため、大きい声で話してもらうようにしていた。
    (20~30代.5歳の頃からおたふく風邪による右耳難聴)
  • 聞こえないことを伝えている友人を大学のクラス教員に伝えていたので、ディスカッションの時は難聴を把握している友人となるべく同じグループにしてもらっていた。
    (20~30代.先天性の左耳難聴)
  • 3人以上でのグループトークの場では、何を言っているかわからないことが多いため、話し合いが終わったところで親しい人に細かいことを聞いてやりすごす。
    (20~30代.先天性の蝸牛の発達不足による片耳難聴)
  • グループ学習は、ガヤガヤうるさい上に、円になって話すとなるともう何がなんだかわからなかった。適当に相槌を打って笑顔で乗り切った。名指して聞かれない限り、話さなかった。何について話しているのかもわからなかった。   
    (20~30代.先天性の片耳難聴)

理解しにくいがためにそのまま諦める…という回答もあれば、
周りの友達に聞き直したり、席を譲ってもらうといった回答がありました。

他にも、先生や周りの人に協力を得て、グループから少し離れた場所や別室など静かな環境に移動したり、窓やドアを閉めて外からの雑音を減らすといった工夫が考えられます。

リスニングや英語の授業

英語や語学の授業ではリスニングが求められるため、聞き取りにくく困ったと感じた人もいます。

聞き取りやすいように席の位置を変えることはもちろん、
もしスピーカーの音質・音量が調整可能な場合に改善してもらうことは、他の両耳が聞こえる人にとっても助かるかもしれません。

  • 英語のリスニングのテストは、英語が苦手なのもあるけど放送のこもった音は聞き取りにくかった。
    (40~50代.幼稚園の頃に右耳難聴)
  • 先生の英語などの発音が聞き取りにくい。当時は自分で洋楽のCDを聞きまくり、正しい発音を真似するようにしていた。
    (40~50代.混合性難聴の片耳難聴)

難聴があっても海外に積極的に出ていかれる方もいますが、慣れない言語を聞き取るのは言葉尻や文脈からの推測もしにくく難しいですよね。

なお、学校以外の英語試験や進学の受験時も「合理的配慮」として、対応の例が示されています。公的な試験のため、事前申請が必要のものが多いです。必要に応じて利用してくださいね(詳細「片耳難聴を持つ人が利用できる福祉制度」)。

体育の授業

広い空間での会話や、聞こえる位置を確保しにくい体育の授業も、困った経験があげられました。

  • 体育館や運動場は広く、先生の声がぼやけて聞こえやすい。聞き取れないときは友人に聞いた。
    (20~30代.7歳時に左耳が突発性難聴)
  • 体育の授業など移動がある場面、ふとした時に聞こえる右側のポジションを維持することができなくなったとき、右側から話しかけられ聞こえてないことがある。
    (高校生.11歳でムンプス難聴による片耳難聴)

また、片耳難聴では音の方向がわからないため、広い場所で呼ばれたり、音がした時にどこかわからずキョロキョロしたり、反応が遅れるといったこともあります。
周囲の人に手を振るなどジェスチャーで示してもらったり、声で「右・左」など位置を伝えてもらう、音だけでなくランプなどの視覚情報を活用するといった方法が考えられます。

マスクをしての会話

昨今のコロナ禍ならではの回答もありました。

  • コロナ禍で、マスクをしている先生がほとんど。授業の声がもやもやとこもって聞こえて聞き取りづらい。
    (高校生.先天性の片耳難聴)

マスクに音が遮られることで音圧が下がる(聞こえにくくなる)だけでなく、話しているときの口の形や表情が見えなくなることで、言葉の理解が難しくなります。

片耳難聴の場合は、読話(どくわ)を使える人は多くありませんが、
人が音声の言葉を理解する際には「耳からの情報」だけでなく「目からの情報」が相互に影響するからです(例:マガーク効果)。

両耳が聞こえる人にとっても同様でありますが、片耳難聴ではさらに聞こえにくさが増したと感じる人もいるかもしれません。

一方、コロナ禍で「オンライン授業」が取り入れられた利点を感じている人もいました。

  • オンライン授業に切り替わったことで、聞こえる席の位置を気にしなくて良くて楽。
    (大学生.子どもの頃からの片耳難聴)
  • オンラインだと、ノイズや相手の滑舌により、はっきりと聞こえないこともあるが、ヘッドフォンの音量をあげられるのは良い。
    (大学生.子どもの頃からの片耳難聴)

授業中の工夫まとめ

今回のアンケートの片耳難聴のある人の学校の授業でしている工夫をまとめると、過去の研究「片耳難聴者の工夫」にあるように

  1. 自分で聞こえやすい席や位置を確保する
  2. 周りの人や友達の協力を求める

の2パターンが主であると分かります。
特に、聞こえやすい席の確保はほとんどの人がしていました。

  • 聞こえない右側に立って話をされることが多いので、どこかのタイミングで場所を変えている。
    (中学生.7歳からおたふく風邪による片耳難聴)
  • 対話型の授業では、相手の声が聞こえやすい席に移動していた。
    (20~30代.ムンプス難聴による片耳難聴)
  • 大きな教室での講義は早めに教室に行って、聞こえる席を確保していた。 
    (大学生.先天性の片耳難聴)

 しかし、このような声もあります。

  • 常に聞こえるようなポジション取りをしなければいけないと気を遣うのが疲れる。
    (大学・専門学生 子どもの頃からの片耳難聴)

また、今回のアンケートでは、大学生になると座席の自由度が上がる一方で、
教室が広くなったり、ディスカッションの時間や生徒数が増えることで、聞き取りにくさを感じるなど質の変化がある印象も見受けられました。

友達や周りの協力を仰ぐ際にも、片耳難聴を伝える必要があり、
「申し訳ない」と伝えることに遠慮があったり「どう思われるんだろう」と心配される方もいるかもしれません。
周りへの協力の求め方について、詳しくは連載Pt1「先生に伝える?」Pt2「友達に伝える?」も参考にしてみてください。

中には「声の小さい先生の授業は聞き取れないことがあったため、熱心に授業を受けないようになった」という回答もありました。

片耳難聴に限らず、様々な生徒がいる学校。
学びやすい環境や個々にあった対応を、皆でつくっていけたらいいなと思います。
詳しくは、「周りの人が学校生活で工夫できること」をご覧ください。

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