きこいろでは「片耳難聴レクチャー」を、不定期開催で年1~2回実施しています。
今回は『コミュニケーションストラテジー』をテーマに開催し、講師は代表(言語聴覚士:聞こえの専門家で片耳難聴当事者)が務めました。
- 日時:2024/3/9(土)15:00~17:00
- 対象:東京都文京区シビックセンター
- 参加者:約30名(当事者、お子さんが片耳難聴のある親、医療/福祉/教育関係者など)
- 講師プロフィール
岡野 由実:群馬パース大学リハビリテーション学部言語聴覚学科講師。筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。耳鼻咽喉科での実践と、片耳難聴者の障害実態について研究・講演を多数行う。『半分、青い。』制作において片耳難聴のレクチャーを担当。13歳のときに突発性難聴で片耳失聴。

今回のテーマは、「コミュニケーションストラテジー」。
“ストラテジー:strategy”とは、[戦略][方略]を意味する英語。
今回は、片耳難聴にまつわる人とのやりとりや、
周りの人との間での困りごとを減らすための工夫を、ワークも交えながら学びました。
ここでは、一部を補足を交えて紹介します。
主な内容
- 知る
-片耳難聴が聞こえにくい理由
-特に困る場面での対応方法の例
-聞き返し方のコツ
-伝え方のコツ(アサーション) - やってみる
片耳難聴を伝える場面を想定してペアで伝え合うロールプレイ - 質疑応答

「聞こえ」は目には見えにくく、
さらに「片耳難聴」は一見して「聞こえにくい」ことが分かりにくいです。
片耳難聴の方は、いつも聞こえない・いつも困る…という訳ではないので、
周りの人が自動的に気がついてくれることは、ほぼありません。
そのため、伝えたとしても相手が覚えることも難しかったり、
単に「片耳が聞こえない」と聞いても、「どう困るのか」がイメージしにくいものです。
(たとえば、雑音下で聞こえにくいとすぐに想像できる人は少ない等)
そもそも、片耳難聴のある人自身が「どう困るのか・その理由」をこれまで知る機会もなかったため、
「どう伝えたらいいのか」も試行錯誤している…という人も多くいました。
また、伝えたとしても上手く相手に受け取ってもらえないと
伝えることのハードルが上がってしまった…という体験をする人もいます。

そんな「片耳難聴をうまく伝えられないために起こる困りごと」を少しでも減らせたらと、
講師より以下のようなお話がありました。
伝え方のコツ
片耳難聴は、単純に「半分聞こえない」ということではなく、
特に困る場面は主に3つの場面があります。
また、聞こえにくい理由は「両耳聴効果」という両耳で聞くことで得られる様々な作用が得られないからです。
そのため、自分で聞こえる側に移動したり、
あるいは必要なときは、相手にお願いをします。
そのときのコツは、「具体的に、困ること・お願いしたいことを伝える」です。

聞き返し方のコツ
聞こえる側で相手に話してもらったり、
静かな環境で話してもらったり、さまざまな工夫がありますが、
聞こえなかったときにも以下のようにすると
「ちゃんと聞こうとしていなかっただけでは」といった勘違いをされるのを防ぐことができます。

参加者からの質問
Q. 友人に伝えると真剣・深刻に受けとめられ過ぎて少し困る。
ラフに受けとめてくれる言い方は?
A. 改まって言うと、深刻に受けとめられてしまうのでは。
普段の生活の中で、自然と伝える。
困った時に「ちょっと片耳聴こえないんだ、だから聞き返すこともあるけどごめんね」等と。
Q. 職場で伝えているが、忘れられてしまう。
またカミングアウトするにはどうしたらいいのか?
忘れられないにはどういう工夫がいるか?
A. 一度だけで覚えてもらうのは難しい。
困る場面その時々でで配慮を求めると、少しずつ理解してくれる人もいる。
他人が忘れるのは仕方がないものと受け入れた上で、忘れられるなら何度伝えてもいいと思う。
Q. 片耳難聴を伝えるマークがあるといいのかなと考えているが、どう思うか?
A. 色んな考え方があると思うが、マークで片耳難聴を伝えるだけではあまり意味がないと思っている。
聞こえにくい場面で片耳難聴であることと一緒に、
どうして欲しいか具体的に伝えないと、なかなか伝わらないものだと思う。
参加者の感想
- 普段の生活環境では、片耳難聴がマジョリティになることはありませんが、
この会場ではマジョリティになっていて、色々な方と話すことができてよかったです。 - 親の立場で参加しました。
片耳難聴の方がどんな時に困るのか、対処方法・伝え方のヒントを教えていただけてとても勉強になりました。 - 書籍も読んで分かったつもりでしたが、改めてお話を聞いたり、実際にロールプレイを行ったことで、より理解が深まりました。
関連情報
交流会
「伝えたい、でもそうは言っても、相手にどう思われるかが不安で」など
自分の気持ちを話したり、当事者同士で聞き合うことで、楽になるかも…。
片耳難聴の当事者同士や、ご家族同士が話せる「片耳難聴Cafe」は
毎月1回オンラインor対面にて開催中。
- 直近の予定『テーマ:補聴器』
6/29(土)15:00-16:30テーマ
詳細はこちら
個別相談
「1対1でしっかり話を聞いてほしい」
「自分の状況に応じたアドバイスが欲しい」といった方は、
専門家で当事者のきこいろ運営メンバーが対応する個別相談を利用ください。
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啓発活動(講演など)
「広く多くの人に、片耳難聴について知ってもらう」ことで
皆さんが伝えやすくなったり、少しでも対応してもらいやすくなればと
PR活動も行っています。
企業・学校・団体・行政向けに、講演や研修・コンサルテーションなど、柔軟にお受けできますので気軽にお声掛けください!
詳細はこちら

企画:片耳難聴にまつわる勉強会とは
きこいろでは、片耳難聴について正しい理解を深めるための勉強会を
専門職等を講師に実施しています(不定期・オンラインor対面での開催)。
テーマのリクエストがありましたら、お送りください!
▼開催履歴
・「片耳難聴の基礎」
・「キャリアセミナー」
・「補聴器レクチャー」
- *片耳難聴とは
・片耳は正常聴力。もう一方の耳に、軽度~重度(聞こえにくい~聞こえない)の難聴がある。
・医学的診断名では、「一側性難聴」、難聴側の聴力が、重度や聾(聞こえない)場合には「一側聾/片側聾」が使われることもある。
・日本には、30万人以上の片耳難聴の人がいると推計されている(きこいろ調べ)
- *きこいろとは
・「聞こえ方は、いろいろ」略して「きこいろ」。2019年に発足した、日本で初めての片耳難聴の当事者団体。
・有志の片耳難聴当事者や専門家を中心とした、ボランティアで運営中。

