キャリアコンサルタントで企業等での豊富な経験があり、難聴当事者の親の立場でもある講師をお招きし、キャリアセミナーを行いました。
- 日時:2021年11月28日(日)
- 方法:Zoom リアルタイム配信
- 参加費:無料
- 参加者:約30名(当事者、お子さんが片耳難聴のある親、医療/福祉/教育関係者など)

主に話されたこと
- ビジネスシーンで片耳難聴の困ること・工夫の例示
- 進路選択の進め方
- 就職活動や仕事上の開示について
(アサーションをもとにしたコーチングセッション) - 質疑応答
一部を要約して紹介します。
職業選択について
「片耳難聴に向いている仕事ってなんだろう?」と悩まれる方もいるかもしれません。
実際には、「片耳難聴だからなれない」という条件のある職業は多くありません(詳細「仕事における聴覚の条件」)
仕事を選ぶ際に「片耳難聴でも出来ること/片耳難聴だと出来ないこと」という視点で初めから入ると、選択肢が狭まってしまいます。
「片耳難聴だからできること」を探す前に、まずは「自分が何をやりたいか」を探し、
それを踏まえて、片耳難聴が障害となるか、業務に影響があるかを考えると良いでしょう。

また、片耳難聴のある・なしに限らず「進路選択」「キャリア形成」を考える上で、
社会の状況や産業・経済動向を日々意識し、自分自身で考えていくことが大切です。
今ある仕事が将来的にあるとは限らないし、学校で学んだことが仕事に役立つとは限りません。
不確実な未来でも、環境変化に合わせて、適応していける能力、キャリアを切り拓いていく力を養っていくことが重要です。
アサーション
就職活動や仕事をする中で、片耳難聴の開示は義務ではありません。
しかし、周囲の人に必要な協力を求めたい場合に片耳難聴について伝えている人も多くいます。
制度上としても、片耳難聴の場合は障害者手帳がありませんが、障害者手帳の有無を問わず、必要とする「合理的配慮」を申し出ることができます(詳細「片耳難聴が使える制度」)
伝えることで、よりスムーズに業務ができるようになります。
それでも、「どのように伝えたらいいのか」と悩まれる方も少なくないようです。
そんなときに使えるコミュニケーションのテクニックが「アサーション」です。

以下のような、4つの段階に分けて伝えるという手法があります。
この手法をもとに、よくあるケースで実際の伝え方のワークを行いました。
例:「業務中、聞こえない耳の側から声を掛けられ反応できなかった」というシーン
1.描写する(Describe)
状況や相手の行動を客観的に描写して伝える。
何が問題になっているのか、どのような状況なのかを主観を交えずに伝える。
●例:「すぐに気づけなくて、すみません。話しかけられた方の左耳が難聴なんです」
2.説明する(Express)
状況や相手の行動に対する、自分の気持ちを説明する。
「 I メッセージ:私は~~思う」。
●例:「今後も左側から話しかけれると、気づかず困ることがあるかもしれません」
3.提案する(Specify)
相手にどのように行動してほしいのか、具体的な解決案を提案する。
自分にとっても、相手にとっても良い「win-win」を提示する。
●例:「聞こえる側の右側から話かけてもらえませんか。その方が、スムーズにお話できるかと思います」
4.選択する(Choose)
提案が「受け入れられた場合」「受け入れられかった場合」の両方を考えたり、想像し、
結果に対して自分にはどのような行動の選択肢があるかを示す。
●例:「(場所によっては、位置を変えられないこともあると思うので)もし右側から話すのが難しかったり、呼ばれても自分が気づいていなかったら、遠慮なく肩を叩くなどしてください(同性同士の場合)」

特に、就職活動や転職などの選考面接で片耳難聴を伝える際にも、
その時だけの特別なものということではなく、日ごろから自己開示への具体的な準備や経験をしておけると良いでしょう。
- 講師プロフィール:
- 鈴木友之.キャリアコンサルタント、産業カウンセラー。
- 総合商社の社内及び国内外の子会社・関係会社の情報化、IT子会社等の経営に参画して事業再編や人事制度改革にも取り組んだ。企業向け人材開発プログラム、ハローワークや求職者支援訓練での講師を務める。私立大学のキャリアセンターでは10年間に亘り就職活動のみならず学生支援を行う。息子が中学生の頃に突発性難聴を発症した親の立場でもある。
感想
参加者からの感想を一部紹介します。
- 片耳難聴の親の立場で、子どもの進路を考える参考にしたく参加しました。
工夫する具体例として、「音の方向が分からないから、呼んで貰う時は手をあげてもらう」というのを聞いて、簡単なことですがハッとしました。
そういった「工夫することで楽になる、他にもそういった工夫があるのでないかを意識して生活してみるとよいのでは」と息子に伝えようと思いました。 - 「なんで、あなたのために席替えしなきゃいけないの?」と周りの人に言われる冷遇体験をされている方がいるという話を聞き、ショックと自身はそういったことがなかったのでギャップを感じました。
”障害” に対する捉え方はそれぞれですが、本人に困りごとがあるのであれば、”障害”だと私は思います。
障害というだけで避けられるようなことがなく、受けとめてくれる世の中になればよいのにと強く感じました。
私自身も片耳難聴に限らず、障害そのものに対して広い視野も持ち続けたいと改めて感じました。 - これまで片耳難聴に由来する悩みを相談できる人がいない、相談してもなかなか本質を理解してもらえないことが多かったので、「どこまで職場に配慮をお願いしていいものかなど」自分が悩んでいた観点でレクチャーをいただけ嬉しかった。
関連情報
きこいろでは、仕事にまつわる様々な情報も提供しています。
▼当事者インタビュー:職種
「看護師」、「地方公務員」
「ウェディングプランナー(インカム使用業務)」
「サッカー選手」、「商社」
「公認会計士」、「海外で働く」
企画:片耳難聴にまつわる勉強会とは
きこいろでは、片耳難聴について正しい理解を深めるための勉強会を専門職等を講師に、実施しています(不定期開催)。
今回は「仕事」に特化したテーマのリクエストを受け、関係者でもある外部講師をお招きし、開催しました。
今後もニーズに応じた勉強会を開催していきたいと思います!
また、企業や学校・団体・行政などからの研修や講演等の依頼も幅広い関連テーマでお受けすることができます(「ダイバーシティ研修」、「コミュニケーション研修」など)。お気軽にお声掛けください!
▼詳細:
・片耳難聴レクチャーとは
・研修や講演のご依頼はこちら
・片耳難聴Cafe(交流会)も、毎月実施中
