プロサッカー選手として活躍する小波さん(仮名)。
生まれつき右耳難聴の当事者でもあります。
今回は、小波さんが片耳が聞こえにくいことをどう思っているのか、
特にサッカーをする上で困ることはないのか、などお話を伺いました。
お話を伺った方のプロフィール
- 名前:仮名)小波さん
- 年齢:20代
- 聴力の程度:右耳がほぼ聞こえない
- 原因/時期:生まれつきの感音性難聴。原因不明
- 治療経験:なし
- 補聴器機の使用:なし
- 自己開示の有無:サッカーのメンバーはみんな知っている
- 片耳難聴の受けとめ:興味を持ってもらうきっかけになる
目次
1.プロとして、片耳難聴の影響
「ハンデを背負ってるけど頑張っている選手」というラベルは貼られたくない
2.子どもの頃からサッカー選手になるまで
片耳難聴だから…と迷うことは無かった
3.普段の生活
仲良い人は、自分から聞こえやすい耳側に立ってくれる人もいる

1.プロとして、片耳難聴の影響
A. 大きくはないかな…と自分としては思っています。
全く問題がないかというと、そうではないのですが。
困る場面は、グラウンドって静かな環境ではないので、
両耳が聞こえる人でも聞こえにくい訳ですが、片耳難聴だとより聞こえにくいんだと思います。
監督やコーチの指示が聞こえにくいなってことはあります。
あとは「プレー中に敵の足音で近づいて来るのが分かる」ってのも咄嗟の判断に大事なんですけど。
聞こえない側から来られると、音では察知ができないですよね。
Q. プレーするときに工夫していることはありますか?
A. 片耳難聴だと音の方向が分かりにくいですけど、
それは、先に誰がどこにいるかを目で確認してたり、
あとは “声の違い” で誰が言っているかが分かって、声がした方向に見当がついてるかなとは思います。
Q.監督やチームメイトには難聴のことを伝えているんですよね。どのように伝えていますか?
A.僕の場合は、伝えること自体にも大きな抵抗はなくて。
よく関わる相手には、知っておいて貰った方がいいなと思ってます。
相手の話を聴き逃してしまった場面や、聞こえずに無視をしてしまったときに、
「右耳聞こえないからさ」って伝えています。
あと、片耳難聴は気づかれにくいことが多いみたいですが、
僕の場合は周りが気づくこともあって。
聞こえやすいように身体を傾けたりしてると、あれ?ってなるみたいで。
Q.伝えると、周りの方はどんな風に反応されるんでしょうか。
A. いじられたりしてます(笑)
聞こえない側で口パクされたり、いや、それほんとに音出てないじゃん、みたいな(笑)
子どもみたいに遊んでる感じですね。
仲が良いので、それに対して何とも思わないし、
むしろ深刻に受けとめられすぎたくもないので有難いですね。
Q.いじられるのが嫌だと思う方もいると思うのですが、小波さんは大丈夫なんですね。関係性にもよるんでしょうか。
A.そうですね。関係性があるからこそだと思います。
伝えることもですが、相手との距離感によりますね。
関係性が遠い人や普段話さない人には、自身が片耳難聴を伝えてないです。あまり必要性も感じないですし。
公式にもオープンにはしてなくて、
っていうのも、メディアの取材とかで「ハンデを背負ってるけど頑張ってる」みたいな取り上げられ方をしたくなくて。
2.子どもの頃からサッカー選手になるまで

Q.ここまでは、大人になってからや今の状況をお聞きしてきました。
時間軸を戻して、子どもの頃について教えてください。
A.片耳難聴が分かったのは、小学校の聴力検査でした。
当時のことはよく覚えてないのですが、生まれつき聞こえてなかったけど、判明したのが入学のタイミングで、その後に大きな病院で検査して確定した感じでした。
気持ちとしてはショックもたぶんなくて、「学校休めてラッキー」くらいだったなと。
Q.親御さんやご家族は、どうだったんでしょうか。
きこいろには、お子さんの片耳難聴を不安に思って訪れる方もいます。
A.少なくとも、自分に分かるような大きな感情は見せてなかったと思います。
片耳難聴だからどうこうした方がいいとか、サッカーを始めるときも、特別言われることはなかったです。
家庭の中でも、特別に配慮されてるなという感じはなくて。
親戚だと日常的に会わないので忘れているか、そもそも知らないかもですね。
Q. 学校やサッカーを習うときには、先生に伝えていましたか?
学校では、席の配慮はお願いしてなかったし、
それですごく困るってことも僕はなかったかなと思います。
友達には仲良くなったら伝えてました。
そう言えば、1人友達に片耳難聴の人もいましたね。その話題で話したりはなかったですけど。
サッカーは、小学校の頃からやってたんですが、その時は親が先生に言ってたかもです。
高校の監督には、世間話の中で「僕、右耳が聞こえないですよね~」という感じで、フランクに話してました。
ポジションによって聞こえやすい位置とかもあると思うんですけど、「聞こえないからポジションはここだと助かる」といった相談はしなかったです。総合的に見て監督が決めることなので。
Q. 進路選択では、片耳難聴ゆえに考えることはありましたか?
A.片耳難聴だからと迷うことは無かったですね。自分にとってはコンプレックスではないので。
もっとプレーやスキルのことで、悩むことはありますけど…。
ただ、プロになる前に再度詳しく検査をしました。
それで「いまの技術では治らない」と言われて、ドラマみたいと思って(笑)。
あと、難聴についても詳しくそれまで知らなかったので「感音性難聴」といった種類があるのもそこで初めて知りました。
「補聴器」についても、考えたことがなくて。詳しく知らないだけからかもしれませんが、それをつけて聞こえやすくしようと思ったことはないですね。
普段の生活

Q. 良ければ、サッカー以外のことも教えてください。
日々の中で、片耳難聴で困ること・工夫していることはありますか?
A. 「相手の右側」に無意識に行ってますね。自分が聞こえやすい耳側に相手が来るように。
仲良い人は、覚えてくれてて、自分から聞こえやすい耳側に立ってくれる人もいるし、
聞こえない右耳側になってしまったときは、
「俺、右聞こえないから!」と軽く言って相手に立ち位置を譲ってもらいます。
それから、困るというほどのことではないのですが、
「左ハンドルの車」が格好いいなと憧れた時期もありましたが、右耳難聴の僕だと、それだと誰とも会話ができなくなっちゃうので諦めました(笑)
日本車で助手席で左側に座ってる分には、ちょっと頭を傾けて聞くようにすれば大丈夫なんですけど。
Q.友達などとの間では、片耳難聴で嫌な思いをしたことはありますか。
A. 相手に対してはあまりないかもです。
僕が聞こえてないことで困らせてたら申し訳ないなとは思いますけど…。
具体的には、大浴場とか。
よく友人と行くんですけど、風呂場って音の反響が大きいですよね。
そのときに、会話が聞こえなくて、何度も相手に聞き返してしまたったり、
聞き取れていない状況で適当な相槌を打ち、あやふやな回答をしたときは、仕方ないことではありますけど、少し後悔します。
Q. たとえば、そういったプライベートもトータルして「人生で片耳難聴の影響度」を言うとしたら、どの程度ですか?
10%程度、、、影響はほとんど無いです。
やっぱり僕の周りの人の方が、直接言われることはないですけど、気を使ったりさせてて影響があるかもしれませんが。
ただ、過去にサッカーのプレー中に左耳(聞こえる側)にボールが当たった時は、「もう一方の耳も聞えなくなったら、人生お終りだ・・」と恐怖を感じたことはありました(補足:衝突によって治らない難聴になることは稀)。
片耳難聴以外でも、すごくコンプレックスだと感じるのは特にないので、もともとの性格もあるかもしれません。
人それぞれ、周りの人や環境にもよりますよね。

読者へのメッセージ
片耳難聴の子どもたちへ
片耳難聴を跳ね除けるくらいの練習をして、上手くなって欲しいです。
耳だけでなく、目でも周りを観察出来るようになったら、自分のなりたい姿になれると思う。
その為には、人一倍努力が必要だけど、それさえも前向きに楽しんで貰いたいです。
保護者の方へ
自分の子どもが片耳難聴であることに、親が責任を感じる必要はないし、過保護になる必要もないと僕は思います。
子どもが本当に助けて欲しい時に、そっと手を差し伸べてくれたら、それで良いと思います。
大人が子どもの世界に入りすぎるのもよくないし、
子どもが自分で問題を解決することも必要だと思っています。
監督や先生に対して
その子が悩んでいるのであれば、話を聴いてあげたり、
必要なことはコミュニケーション取ってほしいなと思います。
変に気を使いすぎず、自然に接するのが1番だと思っています。

スポーツの分野でも、様々な競技で活躍している片耳難聴のある人達がいます。
「聞こえ方は、いろいろ」。一例として参考になれば幸いです。
また、きこいろでは「スポーツ」をテーマにお話ができる交流会(片耳難聴Cafe)なども定期的に開催しています。
どなたでも参加できるので、興味のある方はお気軽にどうぞ!
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片耳難聴とは?
片耳は正常聴力。
もう一方の耳に、軽度~重度(聞こえにくい~聞こえない)の難聴がある状態。
医学的診断名では「一側性難聴」「一側聾/片側聾」。
きこいろとは?
2019年に発足した日本で初めての片耳難聴の当事者を中心とした任意団体。
「聞こえ方は、いろいろ」略して「きこいろ」。
専門職などをはじめとした有志のボランティアで運営し、
片耳難聴に関する情報発信、交流会や勉強会、啓発活動などを行っている。
