スポーツ好きの片耳難聴Cafe【初開催】イベントレポート

2021年5月28日 − Written by きこいろ編集部

しゃべり場、片耳難聴Cafe(交流会)は毎月開催中。

現在はオンラインにて、2つの柱で企画しています。
①様々なテーマを自由に話す会
②特定のテーマ/対象で話す会

今回のレポートでは、4/25に初開催した「スポーツ好きの片耳難聴Cafe」の様子と、
片耳難聴や、聴覚障害とスポーツにまつわる話題を紹介します。

皆さんからも「片耳難聴とスポーツあるある」など感想がありましたら、
Twitter@kikoiroなどまでコメントをお寄せください!

片耳難聴を持つプロスポーツ選手

スポーツでも、様々な競技で活躍している片耳難聴を持つ方がいます。

ボートレース 今村豊選手

30代半ばから、めまい難聴・耳鳴りを起こす「メニエール病」を発症。
左耳も難聴となるが、めまいは小康状態となり、2020年10月59歳で引退するまでトップクラスで活躍した。

体調不良でレースを1ヵ月半欠場。「ほんのちょっと、10cmでも動かされると吐くんですよ。目を開けたら風景がグワーン、グワーンと揺れるから目も開けられない。このままつづくんだったら殺してくれと思いました」
(出典:「今村豊 特設サイト」

野球選手 山田遥楓(はるか)選手

先天性の右耳難聴。埼玉西武ライオンズ内野手。周囲やボールを目でよく見てプレーしているという。

「入団直後から、山田のインタビューの際には記者用の椅子が彼の左側に用意されていた」「入団したとき、自分からは周りの選手に耳のことを言いませんでした。ハンデを持っていることを知られたくないという思いもありました。でも、いま思えば知っていてもらってよかったと思います」
(出典:「Yahoo!ニュース」4/22配信

サッカー選手 町田也真人選手

子どもの頃から、右耳難聴。きこいろでも2019年インタビューをさせて頂いた。

「試合中は歓声でフィールドは「ワアアア」ってなっているので、(難聴者に限らず)ほとんど何も聞こえないものなんですよ。だから、本当に伝えたいことがあったら、ボールがピッチから出たタイミングとかで自分で相手に近寄って、耳元で話したりします」
(出典:「ポジティブに生きていけば、周りも巻き込める」

聴覚障害×スポーツ

両耳が聞こえない聴覚障害を持つ方を対象とした「デフリンピック」という大会があるのをご存知でしょうか。

デフリンピックとは

ろう者(手話を主な言語とする人)が運営する、ろう者のための国際的なスポーツ大会。
「デフ:Deaf」とは、英語で「耳が聞こえない人」という意味。

1924年にフランスで初めて開催。

競技は、陸上、バトミントン、バスケットボール、ハンドボールなど24種目が行われている。

  • デフリンピック参加資格:
    裸耳状態(補聴器や人工内耳をつけない)で、
    両方の耳のうち、聞こえている方の耳の平均聴力55㏈(中等度難聴:日常会話の聞き取りが難しい)以上
  • 競技会場では、
    選手同士が耳の聞こえない立場でプレーするという公平性の観点から、補聴器等を装用することは禁止されている。

競技での工夫 (例)

  • スタートの音や、審判の声による合図を視覚化
    (文字カードやジェスチャー、シグナルサイン、点滅するライト)
  • 選手はフロアを足踏みして、その振動で他選手に合図
    (世界中のろう者が集まるため、主として国際手話でコミュニケーションを取る)

(出典: 一般財団法人全日本ろうあ連盟スポーツ委員会

片耳難聴Cafeで主に話されたこと

今回のスポーツ好きの片耳難聴Cafeの参加者は、大学生~50代の方、
経験競技は、柔道、ボート、野球、ラグビー、登山、テニス、卓球、バスケ、水泳などでした。

競技ごとに、話されたことの一部を紹介します。

ラグビー

  • 大学ではラグビー部に所属。
    片耳が聞こえない分、視覚でよく周りを見るようにして補ったり、
    他の人よりも早くルールをきちんと覚えて自分でも考えて指示が聞き取りにくくても動けるようにした。
    ラグビーの良いところは、ルール上、相手が常に自分より前にいるので目視してプレーできるところ。
    また、ポジションもサインを気にしなくて済むよう前衛で、相手にぶつかるポジションだったためやりやすかった。

野球

  • 野球はチームスポーツで片耳難聴だと難しいと思い、学生時代はテニスと卓球を選択した。
    ただ、社会人になってから「片耳でも野球できるかもしれない」と思い直し、
    今は社会人野球をやっている。
    片耳難聴がコンプレックスだったが、両耳が聞こえる人でも聞こえない場面はあるなと思うようになり、
    スポーツを通じてストレスも発散でき、自身の殻に籠ることもなくなった。

登山

  • 趣味で山登りをしている。
    低い山では、1列に並んで頂上を目指す道中に雑談をすることがあるが、
    人との距離が離れるため聞こえにくくなる。
    周りの人には片耳難聴のことを伝えているが、自分より年上の年配の方が多いためか
    気にされていないと感じている。
    話の輪に入れないと悲しい。
    単独登山はリスクもあるので、誰かと登りたいと思っている。
    もう片方の耳も聴力が下がったら、補聴器を検討したい。

ボート

  • 大学の体育会ボート部(競技)に所属。
    片耳難聴のことは考慮せずに入部。
    入ってから、片側が聞こえないことでの困ることもあったが、聴覚以外の部分で補って対応してきた。
    一部の部員には、片耳が聞こえないと伝えた時もあったが、今も覚えてくれているかは分からない。
    4~8人乗りの場合は、司令塔の声が個々がつけているスピーカーを通じて聞こえるので困ることは少ない。
    少人数のボートだと方向によっては、相手の声や他のボートが近づく音が聞こえず、ぶつかることもあった。
    はじめは、衝突回避・安全の為に、周りをキョロキョロすることも多々あったが、
    最近では、波が動く感じなどを目や身体で覚えて、片耳のハンデをカバーできていると思う。
    オール(漕ぐ道具)を海に入れるタイミングを全員で合わせるときは、
    両耳が聞こえる人は音で合わせているが、自分は右側が聞こえないが右側がポジションのため、
    音では合わせにくく、視覚でタイミングを合わせている。

スイミング・スキューバダイビング

  • 数年前に突発性難聴になって、聞こえない側の耳の違和感がある。
    水の中だと、その違和感から解放されるので、水の中の方が楽。
  • プールで聞こえる側の耳に水が入ると、
    水が取れるまで、指導者の声がまったく聞こえなくなる。
    それがネックに思え、泳ぐのをやめてしまった。
  • スキューバダイビングは、水の中なら誰しも聞こえずハンドサインを使う。片耳難聴もハンデにならない(関連記事:当事者インタビュー
    (注意:
    ・海中に潜ると水圧がかるため、耳抜きが出来ないと鼓膜を損傷する可能性がある。

     耳抜きが苦手な人は注意が必要。
    ・内耳が原因で難聴がある人の中には、めまいがあるもいる。
     海中などより注意を有する競技や、バランス感覚を要するスポーツのときは、体調を確認する必要がある。

    ・補聴器や人工内耳は精密機器。水・汗・衝突などで故障・破損するため注意が必要)

柔道

  • 柔道を小学生の頃からやっていた。
    子ども頃は、自分だけで十分に考えて動けないので試合中の指導者の指示が大事だったが、
    会場もうるさく、難聴側からコーチに指示を出されても聞こえない場面があった。
    コーチには、片耳難聴を伝えていなかった。
    試合後にビデオで振り返って「あの時、こんなこと言われていたのか…」と気づく場面があり、
    もしその場で聞こえていたら試合に勝てたかもしれないと感じることがあった。
  • 小耳症(しょうじしょう:耳が小さいかったりなかたりする先天性の状態)で外耳道閉鎖症(がいじどうへいさしょう)による片耳難聴。
    小学生のときに、耳をつくる形成手術を行うかどうかを考えたが、
    形成手術をした耳は、強い衝撃が加わり変形してしまうのを避ける必要がある。
    手術をしたら柔道を控えなければならないとなるよりは、やりたい気持ちが強かったので、耳の形成手術は行わなかった。

感想と、企画の裏側

今回の企画は、「音楽好き」の会があるなら、
「スポーツ好き」の会があっても良いのでは?という会員メンバーからのアイデアを受けて、企画しました。

参加者の感想の一部を紹介します。

  • あまりメジャーではないスポーツを行っているが、これからも自分なりに工夫しながら頑張りたい。
  • スポーツも、片耳難聴でも工夫すれば可能性は広がるなと思った。今後も色々なスポーツに挑戦していきたい。
  • 普段話さないテーマで話せて面白かった。
  • 片耳難聴のスポーツフェスをやっても面白そう。


今回で、開催26回目!参加者累計200名以上!

ここまでも沢山のコメントを貰いながら試行錯誤してきました。

「時間は、2時間だと長いから1時間くらいでもいいな」「オンラインだと、画面共有で書記をすると皆の顔が見えなくて話しにくい」「テーマ/対象ごともいいけど、幅広く色んな人と話しが出来る会も残してほしい」etc.

初めは、現在のプロジェクトメンバーの1人が主だってゼロから始めたイベントも、今では数名のボランティアメンバーが進行をお手伝いしてくれるようになり、またリピーターの参加者さんのフォローや、参加者同士の協力のおかげで、毎月欠かさずに続けることができました。ありがとうございます。

今後も皆さんで、ちょっとホッとして元気になれる場にしていきましょう。

安定して活動を継続させるために、プロボノなどとしてお力添え頂ける方も募集中です。

特に募集中のボランティア

  • 片耳難聴の当事者のみ
    ・交流会などでのグループファシリテーション経験がある方
    (対人支援職や医療福祉関係職の方など)
  • 難聴の有無を問わず
    ・イベント運営(現在はオンラインでの運営)ノウハウのある方
    ・プロジェクトマネジメントのスキルのある方
    ・コミュニティ運営のご経験のある方
    ・ライターや編集者としてのご実績のある方
    ・TwitterやInstagramなどSNS運用のお仕事経験のある方

ご協力をご検討下さる方は、「きこいろとは」プロボノ募集のページをご覧の上、ボランティア申込フォームよりお申込みください!

今後のスケジュール

きこいろ会員メンバー以外も参加できるオープンなイベントです。

参加費は、無料。
(会員メンバーからの会費から、オンラインツールの使用費を捻出させていただいています)

イベント情報は随時(おおよそ開催1~2か月前より告知・受付)お知らせしています。本ページやTwitter・Instagram・きこいろ会員メンバー限定のFacebook・季刊メルマガを関心のある方は、ご覧ください。

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