ワールデンブルグ症候群による難聴「誰もが過ごしやすいように」

2023年1月11日 − Written by きこいろ編集部

ワールデンブルグ症候群の影響で先天性難聴のあるさちさんに、お話を伺いました。

推定5万人に1人とされる、希少疾患で、先天性の感音難聴、目・髪・皮膚の色素異常などの症状が現れる「ワールデンブルグ症候群」。

さちさんは学生時代、耳が聞こえにくいことを周囲に開示せずに過ごしてきたそうです。しかし、働くようになった現在、難聴を伝えるようになったとのこと。その背景にはどのような経験があったのか。また、聞こえだけでなく “見た目” などの人との違いをどのように感じているのでしょうか。


  • *ワールデンブルグ症候群とは
  • 症状はさまざまだが、聴覚が先天性の感音難聴、目が虹彩の色の淡さや両目の色が異なる、毛髪の白髪化、皮膚の色素がまだらになることがある。詳細はこちら
(写真はイメージです)

お話を伺った方のプロフィール

  • 名前あるいは、仮名を希望の場合は仮名:さち(仮)
  • 年代/性別:30代/女
  • お仕事/所属など:営業事務
  • 聴力の程度:右耳が高度難聴、左耳は低音が苦手
  • 原因/時期:ワールデンブルグ症候群/先天性
  • 治療経験:無し
  • 補聴器機の使用:無し
  • 自己開示の有無:必要な時にしている
  • 難聴の受けとめ:耳だけでなく、見た目の違いもあるが、楽観的。

目次

  1. 周囲とのコミュニケーション
    「親しい人にのみ伝えてきた」
  2. 聞こえ方や見た目が人と違うこと
    「割り切っているというより、開き直っている」
  3. 働き始めてから
    「困ったときは周囲に伝えるようにしています」

1.周囲とのコミュニケーション「親しい人にのみ伝えてきた」

(聞き手:麻野):さちさんは、先天性の病気ということですが、これまで難聴の方やワールデンブルグ症候群の方とお会いする機会は、ありましたか?

さちさん:全くなくて、自分と同じ境遇の人に会ったことはないです。

今まで、そういったコミュニティが身近にないのと、なんとなく自分より先の人生を生きていらっしゃる方がいたとしたら、“答えが見えちゃう” 感じで嫌だったんですよね。

今だったら36年間生きて、自分なりにこの病気も含めて、まぁいいかなって思う割り切って過ごしてる部分はあるので、出会ってみたいなっていうのはあります。

そうなんですね。難聴やワールデンブルグ症候群によって、人に理解されなくて困ったなと思うことはありましたか?

さちさん:目の色が違うので、最初に勤めた会社のときは接客業で、「会社の顔」になるっていう意味では、なかなか働きづらかったのかもしれません。目の違いに気が付いたお客さんからは「すごいね~」なんて言われたりしました。

興味本位な感じでの「すごいね」でしょうか。

さちさん:そうです。「青い目の人を見たことがなかったから、信じられな~い」とか、中には「大事にしなさいよ」と言われたこともありました。

病気だとは、わざわざ空気を重くしたくないので聞かれなければ、必要以上には言いませんが。

親しい間柄でもなければ、踏み込んで聞いてくる方ってあまりいないですよね。

さちさん:耳のことも、子どもの頃から基本的には限られた人にしか話してこなかったです。いつも連絡を取っている子だと話しますけど、たまに会って「最近どう?」みたいな話をする子には別に伝えなくてもいいかなと思って。

もっと気軽に打ち明けられたら楽だったと思いますけど、子どもながらに「伝えたら相手を困らせるのではないか…」と、何も言えずにいた自分はいましたね。

さちさんのご家族は、どう受けとめておられますか?

さちさん:覚えてるエピソードがあって。難聴については、医者から直接耳に音を入れない方がいいと言われたので、イヤホンなどは駄目と言われていたんです。だけどちょうど、小中学生ぐらいの頃にウォークマンとかが流行りだして、私には姉兄がいるんですけど、母が言うには欲しい年頃だと思うけど  “さちが欲しがるから” って買わせないようしてた、と聞いたことがあります。

でも、それ以降は特別扱いもなく過ごしてきましたね。突発的な病気であれば話は別ですけど、生まれつきなので当然のようなものになっていて。言われるとしても「耳は大事にしなさいよ」くらいです。

とすると、ご家族とは難聴や病気のことなどを話す機会はあまり多くはないんでしょうか。

さちさん:そうですね、親・姉兄とも話さないですね。話す機会がないし、機会があったとしてもやっぱり心配かけたくないので話さないですね。

親しい間柄だからこそ、心配させてしまうのでは…と話すのを躊躇することもありますよね。

2.聞こえ方や見た目が人と違うこと「割り切っているというより、開き直っている」

あまり周りに話さずにきたということですが、周囲の人やサポートがあったら良かったなと思われますか?

さちさん:今はもう今さらな感じなので、現状はサポートを受けられたらとかは特にないですが。

子どもの頃は、同じような境遇の人と話せる機会や、一人で抱え込まなくていいように第三者に話せる場があったら良いんだろうなと思います。

今は特に大丈夫となるまでのプロセス、子どもから大人になる間での心境の変化は、ありましたか?

さちさん:私は、高校生くらいの時ですね。大体みんな、私の目を見て「きれいだね」って近づいてくるんですよ。それで、「じゃあ、身なりをちゃんとしよう」って思うようになって。どうせ見られるんだったら、恥ずかしくないように過ごそうと、徐々に思うようになりました。

私も、思春期の頃は悩みつつも、徐々に折り合いがついていった気がします。

さちさん:そうですね。大人になってからも、改めて割り切るというか、開き直るようなことがありました。

ワールデンブルグ症候群とは別のことで、パニック症になり精神科にかかっていたのですが、そこで興味本意で医師に「私みたいに、見た目が周りとは違う人って来たりするんですか?」って聞いてみたんです。そうしたら「もう大人の人は、みんな結構割り切ってるよ」と言われて。

子どもだったらケアはするけど、大人は結構割り切ってるし、「自分が一緒にいて居心地がいいなって思う人といなさい」みたいなふうに言われたことがありました。

それで、見た目は変えられないものだからと、改めて開き直るようになりました。

気持ちの上で開き直れると、少し楽になりますよね。

3.働き始めてから「困ったときは周囲に伝えるように」

就職をするときに、苦労された経験などはありますか?中には、「耳が聞こえないから接客業は諦めるべきか」と迷う方もいらっしゃいます。それも自分が過ごしやすい環境を選ぶという、選択の1つだとは思うんですが。

さちさん:私は、新卒のときも転職したときも、特に気にせずに選んでます。採用のときも、耳に関しては開示してなくて。

目に関しては、履歴書に書くようにしています。見た目はすぐに相手から分かるので、書いておいた方がいいかなと思って。

たしかに、書いておいて相手も納得してくれると楽ですよね。

さちさん:難聴の開示は、今はするようになったのですが、そのきっかけとなったのが、職場の先輩が私の難聴を気が付いてくれたことからでした。

多分、私の声掛けへの反応が鈍い、聞こえない方から声をかけられたりして、気付けないことがあったんでしょうね。それで、先輩は耳が聞こえない方が友達にいたみたいで、「もしかして聞こえにくいのかも」と思ってくれたみたいです。

麻野:普通はなかなか気付けないですよね。

さちさん:言わないのに気が付いた人は、初めてでした。その先輩は、自然に「じゃあ、こういう時はこうするね」って言ってくれて、今までそういう対応をしてもらった経験がなかったから、嬉しかったです。

周りの人がそういう反応なんだなと思って、それからは「困ったときは言うようにしよう」って思うようになりました。

麻野:そういう人がいてくれると、言い出しやすくなりますよね。

さちさん:そうですね。

例えば私の場合、今はずっとデスクワークで、何かに集中していると音が入ってこないです。あと、聞こえる側の方からラジオが流れたりしていて…そっちに音が入ってくるから、他の音を感じ取れなくて。

席も、自分から全員が見える方が動きで状況が分かるからいいなとは思うんですけど、オペレーションの問題で、なかなか希望通りには行かないこともあるので。

そういうときは周りの人に「耳が聞こえにくいから、聞こえてなさそうだったら声かけて」って伝えています。

麻野:初めから、100%聞こえやすい職場・理解ある人って稀だと思っていて。伝えることで、自分が働きやすい環境になっていけるといいですよね。

それでは最後に、“見た目が人と違うことで困ること”、聞こえ方のように “見た目では分かりにくくて困ること”、その両方の経験をされてきたさちさんにとって、「こういう社会になったらいいな」と思うことなどはありますか?

さちさん:難聴だけじゃなく、障害のある方が、いろんな面で過ごしやすい世の中になればいいなと思います。今は「多様性」って言葉が出てきているので、病気が治る治らない関係なく、そういう考えが広く浸透すればいいのかなって。病気や障害を理由に、なにかを諦めたりすることが無くなればいいなと思います。

麻野:誰もが自分らしく生きていけたら、と思います。本日は貴重なお話をありがとうございました!

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