成人してからなった片耳難聴(一側性難聴)の約半数は、突発性難聴が原因で、人口10万人あたりでいうと27.5人発症と報告されています。
近年では、堂本剛さんなど芸能人にも公表している方が多く、耳にしたことがある人も増えています(参考:「片耳難聴と音楽」)。
「耳鳴りは多少残ったものの、聴力は回復した突発性難聴のケース」をこの記事では紹介します。
回復したケースを、きこいろでインタビューしたのは初めてです。
症状には個人差があるため、あくまで一例として参考にしてください。
目次
- 薬をもらえば治るかと思っていたが…
- 難聴よりストレスだった、耳鳴り
- 友達に伝えて、席を変わってもらったことも
お話を伺った方のプロフィール
- 仮名:武田さん
- 年代:20代
- 所属:大学3年生
- 聴力:一時期、左耳の高度難聴(70㏈)が回復
- 付随症状:耳鳴りは残った
- 原因/時期:2024/11月末に突発性難聴に
- 治療経験:ステロイド服薬→点滴→高気圧酸素療法
- 補聴器機の使用:なし
- 自己開示の有無:聞こえなくなった期間は周りの人には伝えていた

薬をもらえば治るかと思っていたが…
ーー半年程前に発症されたとのこと、その時の状況を教えてください。
武田)一番最初は、耳鳴りを少し感じました。
2日後、朝起きたら耳も聞こえにくくなっていて…両耳の聞こえとは全く違う感じで、どこから音が鳴っているかも分からなかったり。。
ネットで調べたら「早く病院に行った方がいい」と書いてあったので、近くの耳鼻科を受診しました。
そこで1つの音域だけが70㏈(普通の大きさの会話が聞き取りにくい)になっていて、突発性難聴と言われました。素直に驚きましたね。言葉として芸能人にもいるし、なんとなく知ってはいたけど、軽い気持ちで、薬をもらえば治るかと思っていたので、自分が言われると思ってなかったです。
先生には「大丈夫でしょ」と言われましたが、治療法も確実な方法がないと分かり、不安になりました。
ーー治療はどのようなものでしたか
武田)3-4日ステロイドとビタミン剤を飲みました。でも、それにもかかわらず他の音域も100㏈と、全く聞こえなくなってしまって…
少し大きな病院を紹介してもらい、再度受診しました。
今度は点滴でのステロイド投与を1週間程度行いました。入院する方もいるようですが、自分はめまいなどはなかったですし、通院もできる状況だったので、数回ほど大学を休みつつ通いました。
「高圧酸素療法」をそこで紹介してもらい、点滴でも効果がなかったため行いました。所有している病院は限られるそうで、僕も他の病院に紹介状を書いてもらいました。
- *高圧酸素療法
高い圧力をかけた特殊なカプセル内で過ごし、
100%濃度の酸素を吸入することで体内に大量の酸素を送り込む治療方法
内耳の血流を改善し、聴力改善をはかる。
突発性難聴の場合、診断3ヶ月以内に行うことがある。

ーーそれで徐々に効果が得られたんですね。
武田)1回目の実施で音の聞こえが変わって、音が入ってくるようになりました。なかば諦めていたので、少し希望が見えたのを覚えています。週5位のペースで通い、最大30回実施ということでしたが、僕は10回でゆるやかに改善しました。
治療自体は、耳抜き(あくび、つばを飲み込むなど)をして寝てるだけです。気圧変化で耳が痛くなる(飛行機に乗った 時や山に登った時の症状)こともあるもので、僕も最初の方は耳抜きがうまくいかず、少し止めてもらうこともありました。あとは、費用が保険診療でも1万円位したのは、親には申し訳なかったですね…
ーーお金は、制度の活用をされる方もいますね*。難聴の治療中、なにか気をつけていたことはありますか?
武田)大学も行ってたし、基本的にはふつうの生活を送ってました。
気を付けてたのは2つ。
1つはステロイドの使用中は、医者より心拍数を上げないよう言われていたため、ジムやランニングなどの運動は控えていました。
もう1つは、大きな音を避け、治療中も最近までも、耳に負担かけないようにしていました。当時ちょうどライブに行く予定もあったけど、キャンセルしたり。イヤホンも、それまではよくしていましたが、我慢していたのは辛かったですね。本を読むのも好きなので、静かにできることをして過ごしてました。
最近、久しぶりに映画に行って、音の大きさに驚きました。突発性難聴になる前までより、大きく響く気がして。今後も無理ない程度に、映画やライブにも行きたいなとは思っています。
- *「高額療養費制度」
限度額費用以上は支払わなくてよいもの。
例:年収370万未満の場合:1ヶ月 57,600円
*「特定疾患医療費助成」
自治体によっては、突発性難聴(70㏈以上)が該当する場合もある。
例:33,330円を超える月が3ヶ月以上ある場合に自己負担が1割軽減。
参考:片耳難聴が使える制度
難聴よりストレスだった、耳鳴り
ーー片耳が聞こえにくかった期間、困ったことはありますか?
武田)静かな場所や1対1だと基本は大丈夫でした。うるさい場所だと聞こえにくかったり、隣並びで聞こえない側から話されても聞き取れなかったりもしました。
そして、耳鳴りは今も残っています。
生活に大きく支障はない程度になりましたが、僕の場合は聞こえなかった期間、耳鳴りの方がストレスでした。
「ボー」低めの船の音のようなのや「キーン」と電子音みたいな音が、うるさくて。寝る前が一番気になって、静かになりすぎないようにBGMをつけましたが、耳鳴りがなくなる訳ではなかったので…。1週間程度で慣れたというか、治療法もないということだったので、ずっとこのままかもという不安、でも 受け入れるしかないとは思うようにはなりました。
友達には、難聴のことは伝えたのですが、耳鳴りのことまでは話さなかったです。
片耳難聴のことも理解してもらうのは難しいと思うので、耳鳴りは尚更だし、サポートしてもらえることがあるわけでもないので、言わなくてもいいかなと…。
- *耳鳴り
難聴でなくても経験することがある。
難聴の場合は、聞こえなくなった音を脳が補おうとして過剰に興奮した結果、
頭の中で作り出された音と考えられているが、確実な原因や治療法は分かっていない。
参考:「片耳難聴に伴う付随症状」

友達に伝えて、席を変わってもらったことも
ーー聞こえなくなったのは、友人や家族には伝えられていたんですね。
武田)日常的によく関わって伝える必要があるなと思った人には、発症して割とすぐ簡単に伝えました。
友人には「こっちの耳が聞こえにくくなった」と伝えてて、まだ治るか治らないかも分からなかったので、あまり重くならないようにとは思ってました。友人は「そうなんだ」と、そこまで重く捉えられなかった気がします。席を変わってもらったりしてました。
親は、母親の方がびっくりしてましたね。ただ、言葉でこの聞こえ方や感覚を説明しても、なかなかピンと来ないようでした。やっぱりなってみないと分からないことはあるのかなと思います。
意外だったのは、思った以上に自分の周りにも、耳が聞こえにくい人がいたり、同じように一時期聞こえにくかったと言う人がいたことです。
聞こえは目には見えないから、実はそういう人がいるのかもしれないなと思うようになりました。
ーーそうですね、少なくとも36万人以上が片耳難聴と推定されています(きこいろ調べ)
武田)まだ若いこともあり、大きな病気はしたことがなかったですし、
身近で障害のある人と関わることもなかったので、今回のことは、自分の中ではそれなりに大きな出来事だったなと思います。
今まで生活していて耳を意識することはほぼなかったけれど、片耳が聞こえなくなってからは、何をしていても意識するようにもなりました。聞こえるということの貴重さを感じるというか…耳を大事にするようになりました。
ただ、まだ半年しか経ってないですが、左耳聞こえなかった1か月半位の感覚はもう薄れてきています。
ーー「また聞こえなくなるのでは…」と不安になる方も多い印象がありますが、武田さんはいかがですか(注:突発性難聴であれば、同耳に繰り返すことはない)
武田)そこまで不安が大きくはないかもしれません。
今回いろいろ調べて、どう対処したらいいかが分かったので、もし聞こえなくなったとしても、なんとかやれるかなと。
あとは、いま就活中なので、聞こえにくくても大丈夫な職ってどうだろう…と考えたりはします。大学で授業を受けてる分には、困る場面はそこまで多くはなかったし、多少聞き取りにくくてもやり過ごせると思うのですが、仕事となると責任も伴ってくるので。
そういった場面でどうしたらいいかなどは、もしずっと片耳難聴のままだったら、誰かに相談することもあるかもしれません。今回は事実として伝えただけで、相談という感じではなかったので。
自分の周りは差別されるような雰囲気もないので、困る時には協力をお願いすることもあると思います。

ーー貴重なお話を伺いました、ありがとうございます。最後に読者の皆さんへのメッセージなどあれば教えてください。
武田)聞こえないとなったときに、友達は深刻すぎずに受けとめてくれて、気持ちが楽になりました。聞こえやすい位置から話してくれたのも、感謝しています。
また、医療従事者の方には、自分で調べても情報があまり出てこなかったので、詳しく丁寧に治療法を教えていただいたことに感謝しています。
今もし聞こえにくいとなっている人がいたら、僕のように治る可能性も0ではないです。すぐに治療していただければと思います。
これから僕自身、片耳難聴やそれ以外の病気や障害などのことも、もっと知ったり出来ることをしていきたいです。
直近のイベント情報(2025)
- in京都 9/21(日)14:30~16:30
片耳難聴レクチャー「補聴器について知ろう」
専門家による解説+試聴体験!
&希望者はアフター企画の懇親会🍻
詳細:https://kikoiro.com/about/lecture/ - in埼玉 10/4(土)10:00~11:30
親子の学習&交流会
0~小学6年生の片耳難聴のお子さんがいる家族
詳細:https://drive.google.com/drive - in北千住 10/11(土)15:30-17:30
片耳難聴Cafe
子ども~大人まで、世代別で片耳難聴についてお話!
詳細:https://kikoiro.com/cafe202510/

きこいろとは
2019年発足、日本で初めての片耳難聴の当事者や専門家を中心とした任意団体(ボランタリー組織) 。
「聞こえ方は、いろいろ」略して「きこいろ」。
片耳難聴に関する情報発信、交流会や勉強会、啓発活動などを行っている。
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