「0~10才位までの片耳難聴のあるお子さん」についての情報を、この記事では紹介します。
これまでもお子さんに関する情報を発信してきましたが、
特に「低年齢の情報が知りたい」という保護者の声や質問への回答として、まとめ直しました。
専門家・片耳難聴の本人・保護者のそれぞれのコメントを掲載しています。
子どもを対象とした情報例
- 乳幼児と保護者向けのグループ活動レポ
https://kikoiro.com/children_parents/ - 小中学生同士で話せる交流会レポ
https://kikoiro.com/cafe_kids1/ - 片耳難聴をアニメで学べる動画
https://www.youtube.com/
2000年以降、「新生児聴覚スクリーニング検査」により、生まれて数ヶ月で難聴であることがわかるようになり、心配するご家族の声が寄せられています。
ご本人もそれぞれであるように、家族の思いや状況も人それぞれ。
この記事は一事例として、家族や、また幼稚園・保育園など周りで接する機会のある先生にも参考になれば幸いです。
(これまで掲載した内容と重複している内容があります)
- *新生児聴覚スクリーニング検査
先天性の難聴の早期発見と適切な療育・教育につなぐことが目的。
2025時点で法制化はされていないが、全国的には約9割が検査を受けている。
出産する病院で、赤ちゃんが生後3~5日に自然睡眠中に受ける。
検査では、受話器から音を聞かせ、脳波などの反応をみます。 - 左右別に「pass(今のところ異常なし)」「refer(要再検)」のどちらかの結果になり、
- 「refer」の場合は、3ヶ月以内に耳鼻科で精密検査を受けることが推奨される。

目次
- 「原因の特定」した方がいい?
- 子ども本人に、どう伝えた?
- 家族(兄弟姉妹)、親戚、先生など 周りの人にはどう伝えた?
- 幼い頃に困ること、気を付けることは?
- 言葉や発達に影響は?
- 誰かに相談した?
- 大きな音は避けた方がいい?
「原因の特定」した方がいい?
「遺伝子検査」というのも最近は聞きますが…
-専門家コメント
先天性で片耳が高度難聴(70dB以上)のお子さんは、1000人に1~2人。
その保護者の方は「両耳が聞こえる方が9割以上」です。
医療側からの突然の情報で、よりご不安なお気持ちになることとお察しします。
先天性の難聴のお子さんに対しては、「自分の妊娠中アレコレが悪かったのではないか」
後から難聴がわかったお子さんであれば、「あの時の○○が足りなかった自分のせいだ」等と、自分自身を責めてしまうお母さんもいらっしゃるかもしれません。
まずはお辛いお気持ちに、寄り添いたいと思います。
原因の特定や「遺伝子検査」は
その目的が、治療や今後の対応に必要で、有益な場合に行われるもので、
必ずしも難聴の診断を受けたすべてのお子さんに必要なものではないと考えています。
先天性の片耳難聴の50~60%は原因不明です。
セカンドオピニオンなどで幾つも病院を回っても「わからない」としか伝えられないこともあります。
「新生児スクリーニング検査」をきっかけにした精密検査で片耳難聴の診断を行った際に、原因がわかるものもあります。
例えば、画像診断(CT、MRI)などで、内耳の奇形や聴神経低形成などがわかることもあります。
ただ、原因が分かっても治療が出来ないことや
今後の予後が変わらない(悪化する可能性もない)ことも多いです。
- 伝音難聴(外耳や中耳に障害):治療ができるものもある
- 感音難聴(内耳、蝸牛または聴神経などに障害):大半は、現在の医療では治療法は確立されていない
- *遺伝子検査
従来の診察や検査では難聴の原因が特定されない場合に、さらに遺伝子を調べることで難聴遺伝子の有無やそのタイプを調べるもの。 - 遺伝性=家族からの遺伝ではなく、遺伝子の変異なども含む。
- 全ての遺伝子が解明されるわけではない。2012年から難聴の当事者であれば、健康保険の適応となった。
- 詳細「難聴と遺伝子検査」

–保護者コメント
(子:未就学児、先天性の片耳の重度難聴)
遺伝子検査は、迷ったが家族とも相談し、現時点では受けようと思っていません。
原因がわかったところで治らないし、
医師からも、受けても絶対に正確にわかる訳ではないと勧められなかったため。
子ども自身が今後大きくなって、受けたいという話になれば、その時にまた考えたいと思います。
まだ小さいし、まずは今の目の前の成長のために出来ることをしたいです。
–当事者コメント
(大学生、子どもの頃から片耳の重度難聴)
受けようとは思っていません。
現在は、難聴以外にも遺伝子の検査が色々出てきていて興味深いけれど、
今の自分がそれを上手く使いこなせる気もしないので。
例えば「今後、両耳難聴になる可能性が高い」「子どもに遺伝する可能性がある」と言われたら、
わかっていても防げるわけでもないなら、不安だけ付きまとって大変では。
検査しなくても「今から手話を習って備えておく」など、出来ることをやればいいかなと思います。
子ども本人に、どう伝えた?

-保護者コメント
(子:高校生、就学前からの片耳の重度難聴)
親から「聞こえにくいから気をつけようね」程度で伝えていました。
本人はあまり片耳難聴について話したいと思っていない様子だったので、無理に話していません。
元々、子ども自身が聞こえていないことに先に気がついていたのかもしれませんが
どのように自分でそれを説明していいのかわかっていなかったようです。
5歳の頃、聞こえないほうの耳で電話の受話器を取り「聞こえない」と言っていましたが、親はそちら側の耳に難聴があると気が付くことができず、その後の小学校に入って学校のの検診でわかりました。
-当事者コメント
(大学生、2歳でおたふく風邪による片耳難聴)
明確に親から伝えられた記憶はなく、自然と自覚していきました。
親は早くに気づけなくて申し訳ないという思いを持っていたようで、
親から話をふられることはあまりなかったです。
ただ、幼い頃は親が周りに伝えていたようですが「誰に伝えていて誰に伝えていないのか」自分にも教えてほしかったです。
そうでないと、無駄に自分が誰に片耳が聞こえないことを伝えるべきか考えたりしていたので。
まだ小さくても、ある程度わかる年齢になったら、一緒に耳のことやきこえについて話せる雰囲気を作ってくれたらうれしいです。
-専門家コメント
「家族が難聴をどのように受けとめていたかが、
将来大きくなった時の片耳難聴に対する価値観や認識に影響を及ぼす」
という調査結果があります。
- 家庭の中できこえにくい場面や困ったときのこと、
聞こえに対する気づきなどを率直に話題にできる
→自身の難聴に対してオープンな認識を抱く - 難聴の話題を触れてはいけないもののように扱っている
→自身の難聴に対してネガティブな認識を抱く
自分の身体の一部である片耳難聴を受けとめられることは、その子ども自身の自己肯定感を育むことにもつながります。
詳細:家族ができること
家族(きょうだい)、親戚
先生など周りの人にはどう伝えた?

–保護者コメント
(子:高校生、就学前から片耳が重度難聴)
父親は、病院に一緒に行って説明を聞いていました。
義理の両親には、父親が伝えたが「聞こえているんでしょ、大丈夫だよ」と気にかけてくれている様子でした。
きょうだいも当時は幼かったため、ふーんという感じで、
「ハッキリ・聞こえる側から言おうね」と親から伝えていましたが、
家庭内ではあまり問題にならず、特別意識されていませんでした。
食事のときなどはテレビを消して雑音がないように配慮しましたが、
それが “我が家の当たり前” のようになり、子ども同士で文句が出ることはありませんでした。
–当事者コメント
(10代、生まれつきの片耳難聴)
きょうだいには、定期健診の病院に行くときに理由を説明するため伝わってました。
親しい親戚には、病院受診の時にきょうだいを預けていたので、それで伝わっていたようです。
普通に心配はされましたが、そんなに特別に優しくされることなどはなかったです。
親戚も、親も、特別意識することなく、忘れるほどだったと思います。
普段会わない親戚が大勢集まった時は、伝えるほどのことでもなく そのままにしていて、
聞こえない側から話しかけられて、なんとなく流してしまうこともありました。
自分の家族だけなら、遠慮なく聞き返したり、
自然と聞きやすい位置に自分で動いたり・相手を動かしたりしてました。
–専門家コメント
学校就学前までは、担当の先生に「子どもの行動を理解してもらう」目的で伝える程度でいいのではないでしょうか。
内容的に複雑なことは少なく、難聴に限らず個々へのサポートも比較的手厚い時期だからです。
たとえば、もし子ども同士で「(この方向からの小さな声は聞こえないので)無視した」等とトラブルになったときには、その子の保護者に個人的に伝えるということでもよいと思います。
なお、きょうだいについては、SODA(ソーダ:Siblings Of Deaf Adults/Children)という言葉もあります。
参考:「兄弟姉妹とのエピソード」
幼い時期に困ることは?気をつけることは?

-当事者コメント
(10代、生まれつきの片耳難聴)
小さな頃は深く意識しませんでした。少なくとも、自分の記憶に残るほどのエピソードはありません。
幼稚園の頃に「片耳がきこえないこと・人との違い」を自覚しましたが、
それまでは『ほかのみんなも片耳しか聞こえない』と思っていました。
親は、車の助手席に座らせると、難聴側(私の場合は右)から話しかけることになり
聞こえにくそうにしていたから、自然と大きな声で話しかけたり、後ろに座らせるのが習慣になったと言っていました。
-保護者コメント
(子:10才以下、乳幼児期からの片耳難聴)
幼稚園のお遊戯会などで「先生の声が聞き取りにくい」と子どもが言うことがありました。
周囲がにぎやかな環境であり、また本人が動き回るため難聴耳から話しかけられることがあったからでしょう。
先生からは「日常で関わっていて、大きな問題はない、片耳難聴と忘れるくらい」と言われていましたが
きこいろが制作したリーフレットも渡して、広い会場など聞こえにくそうな場面では、マイクを使ってもらうなど理解を求めるようにしてしています。
-専門家コメント
小学校に上がった位から、必要に応じて「席を聞き取りやすい位置」に変えてもらうのがよいと思います。
一番前ではなく、顔を傾けると他の子どもや教室全体が見える2・3列目、
聞こえる側に、他の児童生徒や教卓がくるようにすることが推奨されています。
お子さんと相談した上で、この時期くらいまでに親から先生に伝える人が多いかと思います。
また、クリアな音響の使用や雑音を減らすなどの環境調整は、片耳難聴の子だけの特別なものではなく、聞こえる生徒など全体にとっても意義があるというユニバーサルな視点が大切です
詳細:学校生活の工夫
言葉の発達に影響を与える?

-専門家コメント
片耳難聴で言語発達が遅れるという明確なエビデンスはありません。
聴覚は、耳から脳にかけての経路の中で、左右が融合され分析されるため「脳の片側(右脳、左脳どちらか)」にしか音が入らない、ということはありません。
しかし、発達には個人差があるため、
全体的に発達がゆっくりな場合やコミュニケーションの苦手さが見られた場合は、
お近くの児童発達支援センターなどにも相談してみてください。
難聴の場合に限りませんが、特に幼い時期は「ご家族と視線を合わせて話す」「五感を使った豊かなコミュニケーション」などが大切です。
詳細:ことばの発達や学業への影響
-当事者コメント
(10代、生まれつきの片耳難聴)
自分では自覚がないし、テストの点数もそれなりでした。親も特に気にしていなかったよう。
低学年ぐらいまでは、勉強もそんなに難しくないし、グループで話し合う授業も少なかったので大丈夫でした。
高学年以降、年が上がるほど難しくなったり、グループで話す時間が増えたので、席は聞こえやすいように変えてもらっていました。
-保護者コメント
(子:20代、就学前からの片耳難聴)
心配になり、「ことばの教室」(通級指導教室)に通わせたことがありましたが
本人は必要性を感じていなかったため、良く思っていなかった様子。
いつもと違う場所に行き、慣れない先生に会うことへのネガティブさがあったよう。
何度か通ったものの、本人の通う意識が低く、先生からも必要と言われなかったため通わなくなりました。
親としては、言葉の発達について全く知らない状態だったので、基礎的な知識を得られたのは良かったです。
- *きこえの教室(難聴・言語通級指導教室の通称)
通常学級に籍を置く児童で、「個別の指導」が必要とされる子どもたちが通う制度。
学校生活のほとんどは、籍のある通常授業で過ごし、週1~2時間、校内(または近隣の学校)の教室で、個別の指導支援を受ける。
地域によっての実情は様々で、また必ずしも聴覚障害教育に知識のある教員が担当者ではない。
通級指導教室の対象は、きこえやことばだけではなく、発達障害全般にも広がっているため、この制度を利用している児童は増加している。 - 片耳難聴の児童で通級をしている割合は高くはない。
誰かに相談した?

-当事者コメント
(10代、生まれつきの片耳難聴)
幼い頃から、先生には親経由で、友達には自分から伝えていたけど
相談という形で改まって話すことはなかったと思います。
たぶん他のことでも何かを相談する…上手く言葉にするというのは、まだ難しかったはず。
なので、親が学校の面談前に「なにか伝えておいてほしいことある?」と耳のことだけでなく、学校生活全般について確認してくれたのは良かったと思います。
–保護者コメント
(子:小学生、生まれつきの片耳難聴)
判明した当初に知識を身につけようと調べ、「ろう学校」で行っている地域相談「聞こえの相談」に行きました。
片耳難聴の専門ではないとのことでしたが、
難聴全般について教えてくれたり、不安に寄り添ってもらえて良かったです。
その後、大きな困りごとも起こっていないため、当初より親自身の気持ちや心も安定しています。
今後もし困ることがあっても、相談できる場があると思えるのも大切だと思います。
-専門家コメント
病院でも詳しい話がされなかった、という方も多いかと思います。
昔よりは、片耳難聴についての認知度・理解度は上がっていますが
両耳が難聴のお子さんに比べると軽度であること、
不安にさせないために「大丈夫」と伝える医師もいるかと思います。
片耳難聴に特化した公的サポート機関はありませんが、
ろう学校(聴覚障害のある子どもの特別支援学校)の地域支援を担当する部署が相談を受ける事例も多くあります。
「聴覚障害全般」の相談や情報機関も、各地域にあります。
- *ろう学校
聴覚障害のあるお子さんを対象とした「特別支援学校」と呼ばれる学校の通称。
両耳難聴(60dB以上:ふつうの声量での会話が難しい)のお子さんなどが主な対象。
地域に住む聴覚障害のお子さんの相談にも応じており、その一環として「片耳難聴のあるお子さんとご家族の会」などをしている学校もある。
大きな音は避けた方がいい?
大きな音を嫌がるのはなぜ?

-当事者コメント
(20代、就学前からの片耳難聴)
親が心配して、音楽関係の習い事をさせてくれなかったり
イヤホンの使用を禁止されていたのが、今でも悔しいような気持ちがあります。
(プールも耳が水に入って中耳炎になる…と誤解して習わせてもらえなかった)
自分としてはやりたかったし、いま調べると
「過度に音を浴びなければ大丈夫」という研究があるので、正しい知識に基づいて行動してほしかったです。
詳細:音楽を楽しむときのヒント
–専門家コメント
感音難聴の中で、内耳に障害がある場合「補充現象」がみられます。
音の大きさの変化に対して、音の感じ方がとても敏感になるため
難聴があって聞こえにくいはずなのに、大きい音も苦手…という方も多くいます。
治療法はないため、保護者は、お子さんの様子を見て訴えを聞いてあげること、
苦手な音を避けられる時は避ける対応をいただければと思います。
あるいは、発達の特性として「感覚過敏」のうち「聴覚過敏」といった状態もあるため
必要に応じて「聴覚保護のイヤーマフ」の使用もありますが、常時使うと逆効果となる可能性もあるため、注意必要です。
詳細:難聴に伴う症状
–保護者コメント
(子:高校生、就学前からの片耳の重度難聴)
音楽の授業・入学式(体育館の中でのピアノ)など、反響する大きな音が苦手な様子でした。
聞こえにくいのを「うるさい」と表現していたのかも知れません。
片耳難聴だからなのか、本人の特性なのか、その時々のコンディションや緊張かなどはわからないが、落ち着きがなくなったり、頭痛を訴えることがあったため、
先生やクラスメイトでよく関わるママ友には、事情を親から伝えて、子どもが悪く思われないようにしていました。

特に10歳以下のエピソードまとめでした。
感想や質問などありましたら、こちらのフォームよりお送りください。
また、きこいろでは専門家で当事者による「個別相談@オンライン」なども行っています。
交流会も「家族同士の会」「子ども同士の会」などがあります。
必要な方はご活用ください。
最後に、アンケートやインタビューなどに協力くださった皆さん、ありがとうございました!
きこいろとは
- 2019年発足、日本で初めての片耳難聴の当事者や専門家を中心とした任意団体(PJメンバープロフィール)。
- 「聞こえ方は、いろいろ」略して「きこいろ」。
- 片耳難聴に関する情報発信、交流会や勉強会、啓発活動などをボランティアで行っている。
片耳難聴とは
- 片耳は正常聴力。
もう一方の耳に、軽度~重度(聞こえにくい~聞こえない)の難聴がある状態。 - 医学的診断名では「一側性難聴」「一側聾/片側聾」。
- きこいろでは、当事者以外にも馴染みやすい総称として「片耳難聴」を使用。
- 少なくとも全国に36万人以上がいると推定(きこいろ調べ)。
